包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見

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「結婚してから僕が浮気をしていないから?」
 ベッドの中で尋ねたらようやく白状した。

「違います。これです」
 よのぎさんがタブレットを開く。

「なんだい?」
「うちのパソコンと連動してるでしょ? だから、七さんの検索したことがわかるの」
 よのぎさんが、愛しそうに文字をなぞる。

『妻 潰さない 寝方』

 その上には『おじさん イビキ』と検索した形跡が残っている。
 よのぎさんが恥ずかしそうに笑う。

「こんなの…」
「嬉しいです」
 とよのぎさんもベッドに入ってきて手をぎゅっと握る。

 そうだ。ずっと引っかかっていた感情はそれだ。君の嬉しいが僕の嬉しいなのだ。その答えに自分で納得する。恥ずかしいほどに愛されている。だから少しくらい距離が離れても大丈夫。

「よのぎさん、新しい家ができたらベッドはふたつにしてもいいよ」
 僕は言った。

「加齢臭気になりません、イビキも。あなたと一緒じゃないほうが寂しい」

 よのぎさんが検索していることがわかるということはこちらの情報も筒抜けだ。気づかなかった。

「夏は暑いからもっと広いベッドに買い替えようか?」
「このベッドで充分です」
 今はキングのみならずクイーンサイズまである。

 よのぎさんがお腹に手を回してくる。その手に手を重ねる。
「よのぎさんはベッド派?」
「ずっと布団だったの。あの家だもん」
「へえ、意外。足の長い人はベッドで寝てるもんだって思い込んでた」
「木登りはしてましたよ。あとおじいちゃんが作る椅子が大人用で譲と二人で座りにくいねって」
「それで二人とも足が長いのかもね」
「おじいちゃんに感謝しなくちゃ。そうそう、家を建てる話をしたらおばあちゃんの箪笥をもらってくれないかって。迷惑ですか?」
「ううん、全然。古い箪笥ってお洒落だよね。細工もきれいで」

 きっとおじいさんはよのぎさんに、できればよのぎさんの子どもにも使ってほしいのだろう。服はいつからか使い捨てのようになった。補修どころかメンテも疎か。
「あんまり覚えてないけど、箪笥の取っ手のところが金具だった気がします」
「うちにもあったよ。母親の着物が入っていた。すぐに壊れそうな鍵つきのところに母は僕たちの通信簿を入れていたな」

 忘れていたことをよのぎさんとの会話が思い出させてくれる。
「七さんに似た兄弟が七人もいたら楽しい家族だったんでしょうね」
「どうかな? 上の兄たちとは歳が離れていたしみんな空手とか柔道をしていたからサッカーに夢中になっていると蹴球なんてってバカにされていた気がするし、父親は頑固で最期まで服作りは女の仕事だって言ってたらしいし」
「七さんが末っ子でかわいいから心配なのよ、お父さんもお兄さんたちも」
「大人になるとそういうしこりが自然と消えるよね。相続で揉めれば禍根がまた残るのかもしれないけど、それもなく。三番目の兄が印刷会社をしていてまだ何人かは手伝って働いてるらしいよ。うちの会社も名刺はそこで作る羽目になってるし」
「いいじゃないですか。大事な縁ですよ」

 幸福なピロートークではない。それなのによのぎさんが楽しそうに耳を傾けてくれる。目は眠そうに閉じたまま。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
 不眠で悩む人が増えているらしいが、よのぎさんは二息くらいですぴー。かわいい寝息を聞いていたいのに、呼吸を合わせると僕まで睡眠に誘導される。小さいときはいつもこうして誰かと寝ていた。
 大人になってからも誰かと一緒のほうが眠れる。そうでない人もいるし、どうやっても眠れずに悩んでいる人もいる。
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