包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見

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 その日に帰るつもりだったのに言い包められて泊まる羽目になってしまった。お酒を飲んだ僕が悪いのだけれど。

 よのぎさんは僕の子どものときのアルバムをずっと見ている。
「うちにもあったけど、庭石置こうかな。こうやって集まって写真撮るでしょ?」
 よのぎさんがアルバムの中の写真を指さす。

 兄弟全員が同じ方向を向いて映っている写真は少ない。さすがに白黒ではないのだが、少し色がはっきりしない写真ばかりだ。
「そうだね」

「庭石って値段が高そうね。おじいちゃんちのは、結構おっきくなるまで登れなくて。譲のほうが先に跳び箱みたいにしてたわ」
 よのぎさんは兄嫁が貸してくれた浴衣を着ている。
 それで布団にうつ伏せになるとお尻の位置が高すぎる。ぷっくりとした小尻に手を伸ばそうとして、仏前であることに気づいて布団に入る。

「仏壇の前なんかでごめんね。よのぎさん眠れる?」
「あら、どうして? 七さんのお母さんが生きてたら私たくさんありがとうって言ったと思うわ。あなたを産んでくれた人だし、才能があるのもそれに耐えられる体なのも全部お母さんのおかげよ」
「そうかな」
 よのぎさんのお母さんは生きているのに会えない。風来坊という言葉では片づけられない。
 きっとおじいさんは居場所を知っているけれど、よのぎさんが心配するから話していないだけなのだろう。

 微かに触れる小指の先すら愛しい。
「七さんのお母さん、おしゃれさんなのね。このワンピースなんてモノクロ写真なのに大ぶりの花が大胆」
 兄弟が多いから、アルバムはみんな一緒だ。長男だけは別にあった。その写真は白黒が多い。そして記憶にある母よりずっと若い。

「昔はこういう服が多かったよね」
 僕のおばあさん世代は着物の人も少なくなかった。和装と洋装が入り混じって、文化もどんどん新しくなった。

 父の法事だったのに、母親の話ばかりしてしまう。男っていくつになってもマザコン。

「七さんの名前は誰がつけたの?」
 よのぎさんが聞く。
「父親。他の兄弟はみんな考えあぐねた形跡があるのに、どうしてか僕だけ雑すぎない? 三郎と五郎もあんまり考えなかったって言ってたな。7って虹を思い浮かべる人もいるし、宗教によっては大罪の数だったりするのに」
「七さんの上の上の上のお兄さんが七さんに一番似てるって思った。顔の形とか」
「そう? 清兄さんだけ数字すら入ってない」
「4を避けたのね」
「気にしないけどな」
「私は、これからずっと7を見たら七さんのことを思いますね」
 お父さん、お母さん、言ったこともなかったけれど産んでくれてありがとう。今、はっきりとそう断言できます。この人が僕の大事な奥さんです。さっきからどうしてうつ伏せになった僕のお尻に手を置いているのだろう。無意識なのだろうか。じんわりと温かい。

「よのぎさん、こっちおいで」
「はい」
 本当は闊達な兄たちと比べられここにいるのが辛くて家を出た。そんなこと、もうどうでもいいや。君と一緒に眠っている現在がとても幸せです。
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