不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ

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第1章 勇者の帰還

25 凪沙と壁画1

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「おはよう、夏瀬くん」

 五組の教室に入ると、女子生徒数人が声をかけてきた。

「……ああ、おはよう」

 挨拶を返し、さっさと自分の席に行く。

 以前に比べると、クラスメイトが俺に話しかけてくることが大幅に増えた。
 それはコンビニ強盗事件であったり、普段の授業で俺が勉強でもスポーツでもスキルで楽々こなしているからだったり、色んな理由があるんだろう。

 彼らから見て、俺は昔の俺とは違う。
 俺をいじめていた連中は、すっかりおとなしくなっているし。
 文武両道で、正義の味方のような活躍をしたクラスメイト──って感じか。

 けど、それで態度がコロッと変わるような奴と、親しくする気が起きないんだよな。
 もともと彼らの大部分は俺のいじめを黙認してきたし、直接か間接的に馬鹿にしてきたような連中だ。

 このクラスの中に、友だちになりたい奴はいない──。

「ねえ、聞いた? 県内の暴走族がほとんど全滅したんだって」
「全滅?」
「謎の覆面男が、暴走族グループを次々と血祭りにあげたらしいよ」
「いや、血祭りにはあげてねーよ!?」

 あ、しまった、思わずツッコんでしまった。

「えっ?」
「……なんでもない」
「案外、夏瀬くんだったりして」
「あ、謎の正義の味方って感じ」
「ち、違うから! そいつは、俺じゃないからな!」

 クラスメイトたちの冗談に、俺はつい真顔になってしまった。



 放課後、俺はいつものように雫と待ち合わせた。

「さあ、今日も楽しい部活タイムですっ」

 嬉しそうにやって来る雫。
 なんか日に日に明るくなってる感じで、俺も嬉しい。

「行きましょう、彼方くん」
「今日こそ新しい部員に会えるかな」
「いるといいですねー」

 雫と一緒にオカルト研究部に行くようになってから、今日で五日目。
 未だに、彼女以外の部員には会えていない。

 二人とも気まぐれで、毎日のように来るときもあれば、一週間や二週間くらい全然顔を出さないときもあるんだとか。

 俺たちは部室に入った。

 先客がいた。

「雫……と、もう一人は誰? 不審者?」

 一人の女子生徒が俺をじろりと見る。

 もしかして、この子は部員かな。

 ツインテールにした綺麗な銀色の髪に、神秘的な輝きを宿す青い瞳。
 どこか人形を置思わせる硬質の美貌。
 背はかなり低く、俺の胸くらいまでしかなさそうだ。
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