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第1章 勇者の帰還
26 凪沙と壁画2
しおりを挟む「不審者じゃないですよ、凪沙さん」
雫がふるふると首を振る。
「なんと、我がオカルト研究部の新しい部員さんなのですっ!」
「部員……?」
彼女はじーっと俺を見た。
「それはそうと──久しぶり、雫」
「えへへ、ご無沙汰しています」
「来ないから心配してた」
「ごめんなさい」
「また会えて嬉しい」
彼女は無表情のまま言った。
「で、こっちの不審者は?」
いや、まず不審者扱いをやめよう。
さっき雫が俺のことを紹介してくれただろ。
「夏瀬彼方、二年生です」
ぺこり、と一礼する。
「凪凪沙。学年は三年。呼ぶときは凪沙でいい」
彼女が名乗り返した。
「どうも、よろしくお願いします」
この人、先輩だったのか。
見た目はむしろ下級生っぽいんだけどな。
「わたしは大人」
「ん?」
「大人。強調」
なぜか胸を張る凪沙さん。
平坦な胸はまったく揺れなかった。
「今すごく失礼なことを考えた。抗議」
「い、いや、俺は何も……」
「じー」
俺の思考を見透かすような視線だった。
「……すみませんでした」
これは全面的に謝るしかない。
「私、この五日間くらいは彼方くんと一緒に部活に来てたんですけど、凪沙さんも月子ちゃんも来てませんでしたね」
月子っていうのは、もう一人の部員だろうか?
「月子はいつもの気まぐれで来てないだけだと推測。わたしは……遺跡を見に行ってた」
「遺跡?」
「N市で発掘された遺跡」
と、凪沙さん。
「おみやげ代わりに、許可をもらって壁画の画像を撮ってきた。オカルト研究部で解析を推奨」
言って、凪沙さんはスマホを開いて、画像を見せてくれた。
「わー、壁画ですか。すごいです。古代の神秘です」
雫が目を輝かせる。
俺も彼女の隣で、スマホをのぞきこんだ。
岩に刻まれた、文字とも図形ともつかない紋様の数々。
こんなの見ても、さっぱり分からない──。
「……ん?」
俺は紋様の一部に目を止めた。
視線が、釘づけになった。
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