不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

第２章 勇者の選択

６ 交差する過去と今２

　その日は一日中、モヤモヤした気分で学校生活を送った。
　で、放課後。
　俺はいつものように雫と待ち合わせをして、オカルト研究部に行った。

　彼女の顔を見ても、やっぱりモヤモヤが消えない。
　くそ、俺はいつまで異世界のことを引きずってるんだ。
　自分で自分に腹が立つ。

「──どうかしましたか、彼方くん」

　部室に入ったとたん、雫が心配そうに俺を見る。

「えっ」
「今日は難しい顔をしています。何か悩みでもあるんじゃないですか？」
「そ、そうか……？」

　やっぱり、ベルク関連で気持ちが乱れてるんだな。
　それが知らず知らずのうちに、顔に出ていたらしい。

「私は、あなたのおかげで楽しく過ごせる毎日を取り戻すことができました。本当に感謝しています。だから──もし彼方くんが悩んでいるなら、力になりたいです」

　雫は潤んだような瞳で、俺を見つめていた。

「もちろん、話せないことなら、無理に聞くつもりはありません。でも、私に話すことで少しでも彼方くんの気持ちが楽になるなら……言ってほしいです」
「雫……」
「友だち、ですから」

　微笑む雫。

　……そっか。
　そうだよな。

「ちょっと……な」

　俺は口ごもりつつ、雫に言った。

「昔の友だちに会って。でも、嫌な別れ方をした奴だったから」

　異世界のことを説明すると話がややこしくなるので、その辺は省いてしまった。
　それに、問題の要点はそこじゃないし。

「そう……ですか」
「良い奴だと思ってたんだ。何年も一緒に過ごして。楽しいことを分かち合って。苦しいことも力を合わせて乗り越えてきて。生まれて初めて、友だちだって思えた奴だった」

　だけど、裏切られた。
　あいつはただ、俺を利用していただけだった。

「ごめんなさい。辛いことを話させてしまいました」
「いや、雫に言って気持ちが楽になったよ」

　俺は微笑み混じりに言った。

「ありがとう、雫」
「私で良ければ、いつでも話してください」

　雫も笑顔だ。
　心が癒される。
　と、

「シリアスな空気。話しかけづらい」
「うおっ!?」

　背後に立っていたのは、銀髪碧眼の美少女だった。
　凪沙さん、いつからいたんですか？