不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ

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第2章 勇者の選択

12 力関係2

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 練習を終えると、俺は剣道部の顧問や山路たち部員に礼を言い、武道館を後にした。

「いやー、いい汗かいた」

 満足だ。
 練習のために来たんだけど、気持ちよかった。
 山路や他の部員たちも感じの良い奴らだったし。

 俺は武道館から校舎に戻った。

 すでに六時近くだ。
 オカルト研究部の部室を見てみたら、誰もいなかった。

 あらかじめ雫には『今日は剣道部に寄ってくるから、オカルト研究部には顔を出せないかも』と伝えてある。
 全員帰っちゃったのかな。
 凪沙さんやもう一人の部員は、来ていてたのかどうか分からないけど。

 俺も家に帰るか──。



 一階に行く途中、クラスメイトたちにすれ違った。

「お前ら──」

 サッカー部の野上とバスケ部の坂田。
 どちらも部活帰りのようだ。

「な、夏瀬……」

 二人は俺を見て、顔をこわばらせた。

 かつて俺をいじめていたグループの中核たちである。
 こっちに帰還してからは、すっかりそういう行動は鳴りをひそめていた。

 帰還初日に同じグループの杉山を叩きのめしたことが、彼らにも伝わったのか。
 あるいは雫のいじめを解消するために三組で一騒動を起こしたことで警戒されたのか。

 まあ、もし何かやってきたら倍返しどころじゃない報復を食らわせるけどな。
 こいつらには数えきれないほど嫌な思いをさせられた。

「……調子に乗ってんじゃねーぞ。たかが夏瀬が」

 すれ違いざまに野上がぼそりとつぶやいた。
 俺に対しては、何か鬱屈したものでもたまってるんだろうか。

 俺はとりあえず【威圧・レベル3】を発動しておいた。

 軽く分からせておこう。
 お前と俺の立場は、もうあのころとは違うってことを。

「あ……ぐっ……!?」

 がくん、と膝から崩れ落ちる野上。
 俺が放つプレッシャーにあてられたんだろう。

 ちらり、と野上に視線をやる。

「い、いや、なんでもないんだ。悪い……か、勘弁してくれ」

 たちまち野上が震えだした。
 顔面蒼白だ。

「さっき、何か言ったか?」

 俺は静かにたずねた。

「は……ううぅ……」

 野上はその場に崩れ落ちた。
 まるで俺に屈服するように、跪いたまま立ち上がれない。

「な、なんでも……ないです」

 すっかりおびえた様子だ。
 隣の坂田に視線を移すと、

「ひ、ひいっ……」

 こちらはビシッと直立不動の姿勢になった。

 ──少し脅しすぎたか?

 いや、これくらいは罰として受け入れさせよう。

 あいつらがいじめをしていた事実は決して消えない。
 あいつらの罪は、決して消えない。
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