不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

第３章 勇者の仲間

１１ そうだ道場、行こう３

　俺はオカ研でしばらく雑談した後、月子と一緒に道場へ向かった。

「しかし、緋ヶ崎ってすごいんだな。習い事の数からして常人と違うって感じだ」
「すごいよねー。美人だし、スタイルいいし、頭いいし、家もお金持ちだし」

　俺たちの話題は緋ヶ崎のことだった。

「完璧だな」
「どっかひとつくらい欠点がほしいよね」
「いや、ないならないでいいんじゃないか、欠点」
「うーん、完璧なだけじゃキャラが弱いっていうか」
「別にキャラ付けのためにわざわざ欠点を抱えなくてもいいだろ」
「それもそっか……と、着いたよー」

　と、月子が前方を指さす。

　住宅街の外れに、木造の古い建物があった。
　看板には『流派・月光流星拳げっこうりゅうせいけん』とある。

　俺は月子と一緒に道場に入った。

　中に、黒い道着姿の人物がいる。
　あの人が道場主だろうか。

「おかえり、月子。そちらが前に話していた──」
「うん、オカ研の先輩」

　うなずく月子。

「……道場主、ってあの人か？」
「そだよ」
「初めまして。流派・月光流星拳の道場主を務める真星まなぼし星香せいかよ」

　彼女がにやりと笑った。

　年齢は二十代後半くらいだろうか。
　ショートヘアにした黒髪に、快活そうな笑顔。
　髪形や年齢の違いはあるけど、月子とよく似た顔立ちだった。

「初めまして。夏瀬彼方です」

　一礼する俺。

「ボクのお母さんなの。師匠でもあるけどね」
「月子の師匠……」

　っていうか、お母さんなのか……お姉さんかと思った。
　年齢の割に若く見えるタイプらしい。

「最近の入門志望者は誰も彼も軟弱でねー。でも、あんたはちょっとやりそうな雰囲気じゃない。楽しみ～」

　星香さんが嬉しそうに言った。
　がつん、と胸の前で両拳を合わせる。

「今日は、よろしくお願いします」

　俺はもう一度礼をした。

　──雰囲気だけで分かる。

　この人、強い。
　たぶん、月子よりさらに。

「じゃあ、準備をしてもらえるかな？　着替えはあっちでできるから。月子、場所を案内して」
「はーい」

　月子に案内され、俺は着替えを終えた。
　道着とかは持ってないので、学校のジャージ姿である。

「お待たせしました」

　星香さんの元へ戻る俺。

「まず、あんたの実力を見させてもらおうかな。あたしと軽く手合せしよ？」

　と、構える星香さん。

「流派・月光流星拳の神髄、見せてあげる」


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