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第5章 勇者の試練
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一夜が明け、体力がかなり戻った。
「ではスキル【聖封印】を発動するぞ」
と、夜天。
「どうやればいいんだ?」
「さっきの戦いのときと同じ要領だ。私が『力』を高める。それに合わせて、お前は【空間封印】を発動させろ」
言うなり、夜天の刀身から虹色の輝きが立ち上る。
力が、俺の中に満ちていくような感覚。
壊れた扉に剣先を向け、俺はスキルを発動した。
【空間封印】──さらに聖剣との連携複合スキル【聖封印】を。
まばゆい輝きが、周囲を照らし出す。
壊れた扉を覆うように、虹色のクリスタルが出現した。
「これでしばらくは持つだろう。魔族が、こちらの世界を訪れるための空間通路を閉鎖した。効果は一月から二月といったところだが……」
夜天が言った。
「向こうからモンスターとか、異世界人がやって来ることはなくなるのか?」
「【聖封印】はあくまでも闇属性を封じるスキルに過ぎない。その他の属性──つまり魔族以外のモンスターや、異世界の人間の往来までは止められない」
「……そっか」
俺は小さく息をついた。
さすがに、そこまで万能じゃないわけか。
「ただ、世界間を行き来するのは簡単なことではない、そう頻繁に現れることはない」
「それまでに、完全にこの世界との通路を塞がないとな」
結局は、今までと同じ方針──俺がEXジョブ【楽園の大神官】を習得するしかない。
ただ、夜天のおかげで魔族の脅威は当分去ったはずだ。
「ありがとう、夜天」
「礼は不要だ」
剣から響く夜天の声は、朗らかだった。
「我々は──相棒なのだからな」
※
「扉が、封じられたようですね。魔族や魔獣の気配も去りました」
僧侶アリアンが静かに告げた。
「そうか、よかった」
聖騎士ベルクはホッと安堵する。
「カナタが何かをしたのかもしれません」
「やはり、彼は本物の勇者の魂を持っているんだ。説得できる可能性だってある」
アリアンの言葉にベルクは調子づいた。
「ですが、ベルク──」
「僕はもう一度カナタに会ってくるよ」
にっこりと笑う。
一度は拒否されたとはいえ、カナタは勇者候補に選ばれた少年なのだ。
その心根は、誰よりも善性に満ちているはず。
きっと分かり合えるはずだ──。
※
扉を封印し直した後、俺はアパートに戻って登校の準備を終えた。
慌ただしいけど、今日からまた一週間、学校生活だ。
ちなみに、夜天はアパートに置いてある。
学校に持っていくわけにはいかないからな。
ただ、聖剣は主の意志に従って、空間を超えて駆けつける能力を持つ。
仮にベルクたちや、あるいはモンスターの襲来があったとしても、基本的には即時召喚が可能というわけだ。
と、
「おはようございます、彼方くん」
通学路を歩いていると、雫が声をかけてきた。
「……おはよう、雫」
「? どうかしましたか、彼方くん?」
キョトンと首をかしげる雫。
「ん?」
「なんだか、ちょっと元気がないみたいで……」
雫は心配そうな顔だ。
そっと俺の袖をつかみ、見つめてくる。
「──大丈夫だ」
いつも俺を気遣ってくれる、雫。
俺も、そんな彼女を守りたい。
「学校に行こう」
「はい」
雫がはにかんだように微笑む。
大切な──守りたい、笑顔。
今の俺には、今まで以上に『大切なものを守るための力』がある。
聖剣『夜天』という力が。
だけど、まだまだ足りない。
もっと強くなるんだ。
扉を完全に封印し、ベルクやアリアン、そして異世界人とのゴタゴタも解決して。
雫たちと平和に、穏やかに、暮らしていきたい──。
※
次回から第6章になります。
掲載まで少し間が空きますが、気長にお待ちいただけましたら幸いです。
「ではスキル【聖封印】を発動するぞ」
と、夜天。
「どうやればいいんだ?」
「さっきの戦いのときと同じ要領だ。私が『力』を高める。それに合わせて、お前は【空間封印】を発動させろ」
言うなり、夜天の刀身から虹色の輝きが立ち上る。
力が、俺の中に満ちていくような感覚。
壊れた扉に剣先を向け、俺はスキルを発動した。
【空間封印】──さらに聖剣との連携複合スキル【聖封印】を。
まばゆい輝きが、周囲を照らし出す。
壊れた扉を覆うように、虹色のクリスタルが出現した。
「これでしばらくは持つだろう。魔族が、こちらの世界を訪れるための空間通路を閉鎖した。効果は一月から二月といったところだが……」
夜天が言った。
「向こうからモンスターとか、異世界人がやって来ることはなくなるのか?」
「【聖封印】はあくまでも闇属性を封じるスキルに過ぎない。その他の属性──つまり魔族以外のモンスターや、異世界の人間の往来までは止められない」
「……そっか」
俺は小さく息をついた。
さすがに、そこまで万能じゃないわけか。
「ただ、世界間を行き来するのは簡単なことではない、そう頻繁に現れることはない」
「それまでに、完全にこの世界との通路を塞がないとな」
結局は、今までと同じ方針──俺がEXジョブ【楽園の大神官】を習得するしかない。
ただ、夜天のおかげで魔族の脅威は当分去ったはずだ。
「ありがとう、夜天」
「礼は不要だ」
剣から響く夜天の声は、朗らかだった。
「我々は──相棒なのだからな」
※
「扉が、封じられたようですね。魔族や魔獣の気配も去りました」
僧侶アリアンが静かに告げた。
「そうか、よかった」
聖騎士ベルクはホッと安堵する。
「カナタが何かをしたのかもしれません」
「やはり、彼は本物の勇者の魂を持っているんだ。説得できる可能性だってある」
アリアンの言葉にベルクは調子づいた。
「ですが、ベルク──」
「僕はもう一度カナタに会ってくるよ」
にっこりと笑う。
一度は拒否されたとはいえ、カナタは勇者候補に選ばれた少年なのだ。
その心根は、誰よりも善性に満ちているはず。
きっと分かり合えるはずだ──。
※
扉を封印し直した後、俺はアパートに戻って登校の準備を終えた。
慌ただしいけど、今日からまた一週間、学校生活だ。
ちなみに、夜天はアパートに置いてある。
学校に持っていくわけにはいかないからな。
ただ、聖剣は主の意志に従って、空間を超えて駆けつける能力を持つ。
仮にベルクたちや、あるいはモンスターの襲来があったとしても、基本的には即時召喚が可能というわけだ。
と、
「おはようございます、彼方くん」
通学路を歩いていると、雫が声をかけてきた。
「……おはよう、雫」
「? どうかしましたか、彼方くん?」
キョトンと首をかしげる雫。
「ん?」
「なんだか、ちょっと元気がないみたいで……」
雫は心配そうな顔だ。
そっと俺の袖をつかみ、見つめてくる。
「──大丈夫だ」
いつも俺を気遣ってくれる、雫。
俺も、そんな彼女を守りたい。
「学校に行こう」
「はい」
雫がはにかんだように微笑む。
大切な──守りたい、笑顔。
今の俺には、今まで以上に『大切なものを守るための力』がある。
聖剣『夜天』という力が。
だけど、まだまだ足りない。
もっと強くなるんだ。
扉を完全に封印し、ベルクやアリアン、そして異世界人とのゴタゴタも解決して。
雫たちと平和に、穏やかに、暮らしていきたい──。
※
次回から第6章になります。
掲載まで少し間が空きますが、気長にお待ちいただけましたら幸いです。
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