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陰謀編 プレイステッド領
人質、ダメ護衛騎士の昔話を聞く
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ハリソンはプレイステッド辺境伯領の出身だった。
正しくは、育ったのはプレイステッド辺境伯領にある個人が運営していた貧しい孤児院の出身だ。プレイステッド辺境伯領は海に面している領地のため、親のいないグレたガキがどこから辿り着いたのか、本人も覚えていなければ、知っている人もいない。
こじんまりとした一軒家に、慈愛溢れる微笑みを絶やさない白髪の婆さんに手を引かれて訪れたとき、世を恨んだ険しい顔のハリソンに笑顔全開で挨拶した人が、やがて奥さんになる少女だった。
……おっさんの初恋話をずっと聞かなきゃダメかな? 興味がないわけじゃにないけど、虜囚の身でじっくりと聞きたい話ではないなぁ。酒でも飲みながらベンジャミンやレナードたちと聞きたいです……。
しょっぱい顔をしている俺に気づくこともなく、床に胡坐座をかいたハリソンは俯いたままボソボソと話を続ける。まいったなぁ~。
教会に併設されている孤児院に入れないワケありの子どもたちを、私財で育てる婆さんの元、ハリソンはスクスクと育った。何が切欠だったのか、悪党まっしぐらの人生がガクンと急角度で更生され、少しでも孤児院の足しになればと働きだす。奥さん……え? 名前なんていうの? ああ、アンさんね。そのアンさんも針子の仕事をしながら家事育児とバリバリ働いていたそうだ。んで、ハリソンはそんな働き者の彼女にメロメロだったのね。はいはい、そうですか、よかったね。
「……ですが、面倒を見てくれていた婆さんが死んで……俺とアンで孤児院は続けることにしたんですが……」
婆さんが自分の死期を感じて、家や土地、預貯金の相続をしっかりとハリソンたちに済ませていた。そのおかげでハリソンたちは孤児院を追い出されることはなかったし、そのまま孤児院を運営することができた。よかったじゃん。なのに、なんでハリソンはオールポート伯爵家の騎士団長になってたのさ?
しばらくは四苦八苦しながらも奥さんと二人孤児院を運営していたが、大きな問題が発生する。
「娘……メイができたことと……孤児の一人が難病に罹りました」
つまり、資金的な問題が発生したんだね? このときハリソンは既に傭兵として働いていてかなりの高給取りだったが、仕事依頼が続くときもあればヒマになるときもあり、その収入は安定していなかった。子どもも生まれるし、薬を定期的に買わないといけない。ハリソンはどこかに仕官するため、王都の剣術大会に出場して名を売ることにした。そして、嘘みたいな話だが、勝ってしまった。すごいな、こいつ。我流の剣術で勝つか? 俺がちょっと引き攣った顔をしているとも知らず、ハリソンの話はまだまだ続く。リヒトがベッドの下で退屈していなければいいが……。
「現実は厳しかったですよ。どこの誰かもわからない傭兵上がりの俺に、声をかけてくれる貴族様はいなかったんです」
弱小王国騎士団も見栄とプライトは人一倍持っているので、ハリソンの仕官は叶わず。しかも傭兵だったことがマイナスで、衛兵や商会の護衛隊も門前払いだったらしい。……ハリソンの容貌も問題があったんじゃねぇの? お前、俺との初対面のときみたいな熊のごとき姿だったのでは? と俺は疑っている。そんな絶望顔をした熊……ハリソンを拾ったのがオールポート伯爵だ。シャーロットちゃんの曽祖父ね。
「これで金の心配はなくなったんですが……アンがプレイステッドでの孤児院に固執して、俺たちは別々に暮らすことにしました……」
しょんぼり中年なんて見たくないんだわーっ。
ハリソンたち夫妻は、子どもの教育を考えて、生まれた子どもをハリソンがオールポート伯爵家で育てることにした。読み書き計算、作法などもそうだが、いつ海賊山賊魔獣が襲ってくるかわからないプレイステッド辺境伯領より、オールポート伯爵領のほうが安全だと思ったんだって。そりゃね、オールポート領は王都にも近いですし。だったら孤児院の土地家屋を売って金にして、オールポート領で孤児院を営もうとしたけど……アンさんが反対した。
育ててくれた婆さんの思いを繋ぎたい……立派だけど、この世界では、なかなか難しい。女と子どもしかいない僻地の一軒家なんて、襲ってくださいと言っているものだ。ハリソンはそう反対したが、「今までだってアンタはいなかったでしょ」と反論され、ハリソンり出稼ぎが始まった。
「まあ、オールポートの屋敷もいろいろあって、俺は追い出されちまうんですが……」
ガシガシと照れ隠しに後ろ頭を掻いているが、そのことはセシル君を罠に嵌めたオールポート伯爵たちが悪いので、気にすんな。
「セシル様の元、ようやく安定した生活が送れると安心したのも束の間、こんなことに巻き込まれちまいました」
「そのことについては、俺も同意見だ」
スチャッと右手を上げて同意する。今度のことってプレイステッド辺境伯のラファエルが、ルーカスにウェントブルック辺境伯になるよう脅迫するために起きたことだしな。二つの辺境伯と関わりのない俺にとっては、とんだとばっちりだし、俺を攫うために奥さんと孤児院を盾に脅されたハリソンは被害者ともいえる。
「ただなぁ、お前がプレイステッド家と接触した時点で相談してくれれば、もう少し事態は変わったんだぞ? そこは反省しろよ」
俺はゴツンとハリソンの頭にゲンコツをお見舞いしてやった。
正しくは、育ったのはプレイステッド辺境伯領にある個人が運営していた貧しい孤児院の出身だ。プレイステッド辺境伯領は海に面している領地のため、親のいないグレたガキがどこから辿り着いたのか、本人も覚えていなければ、知っている人もいない。
こじんまりとした一軒家に、慈愛溢れる微笑みを絶やさない白髪の婆さんに手を引かれて訪れたとき、世を恨んだ険しい顔のハリソンに笑顔全開で挨拶した人が、やがて奥さんになる少女だった。
……おっさんの初恋話をずっと聞かなきゃダメかな? 興味がないわけじゃにないけど、虜囚の身でじっくりと聞きたい話ではないなぁ。酒でも飲みながらベンジャミンやレナードたちと聞きたいです……。
しょっぱい顔をしている俺に気づくこともなく、床に胡坐座をかいたハリソンは俯いたままボソボソと話を続ける。まいったなぁ~。
教会に併設されている孤児院に入れないワケありの子どもたちを、私財で育てる婆さんの元、ハリソンはスクスクと育った。何が切欠だったのか、悪党まっしぐらの人生がガクンと急角度で更生され、少しでも孤児院の足しになればと働きだす。奥さん……え? 名前なんていうの? ああ、アンさんね。そのアンさんも針子の仕事をしながら家事育児とバリバリ働いていたそうだ。んで、ハリソンはそんな働き者の彼女にメロメロだったのね。はいはい、そうですか、よかったね。
「……ですが、面倒を見てくれていた婆さんが死んで……俺とアンで孤児院は続けることにしたんですが……」
婆さんが自分の死期を感じて、家や土地、預貯金の相続をしっかりとハリソンたちに済ませていた。そのおかげでハリソンたちは孤児院を追い出されることはなかったし、そのまま孤児院を運営することができた。よかったじゃん。なのに、なんでハリソンはオールポート伯爵家の騎士団長になってたのさ?
しばらくは四苦八苦しながらも奥さんと二人孤児院を運営していたが、大きな問題が発生する。
「娘……メイができたことと……孤児の一人が難病に罹りました」
つまり、資金的な問題が発生したんだね? このときハリソンは既に傭兵として働いていてかなりの高給取りだったが、仕事依頼が続くときもあればヒマになるときもあり、その収入は安定していなかった。子どもも生まれるし、薬を定期的に買わないといけない。ハリソンはどこかに仕官するため、王都の剣術大会に出場して名を売ることにした。そして、嘘みたいな話だが、勝ってしまった。すごいな、こいつ。我流の剣術で勝つか? 俺がちょっと引き攣った顔をしているとも知らず、ハリソンの話はまだまだ続く。リヒトがベッドの下で退屈していなければいいが……。
「現実は厳しかったですよ。どこの誰かもわからない傭兵上がりの俺に、声をかけてくれる貴族様はいなかったんです」
弱小王国騎士団も見栄とプライトは人一倍持っているので、ハリソンの仕官は叶わず。しかも傭兵だったことがマイナスで、衛兵や商会の護衛隊も門前払いだったらしい。……ハリソンの容貌も問題があったんじゃねぇの? お前、俺との初対面のときみたいな熊のごとき姿だったのでは? と俺は疑っている。そんな絶望顔をした熊……ハリソンを拾ったのがオールポート伯爵だ。シャーロットちゃんの曽祖父ね。
「これで金の心配はなくなったんですが……アンがプレイステッドでの孤児院に固執して、俺たちは別々に暮らすことにしました……」
しょんぼり中年なんて見たくないんだわーっ。
ハリソンたち夫妻は、子どもの教育を考えて、生まれた子どもをハリソンがオールポート伯爵家で育てることにした。読み書き計算、作法などもそうだが、いつ海賊山賊魔獣が襲ってくるかわからないプレイステッド辺境伯領より、オールポート伯爵領のほうが安全だと思ったんだって。そりゃね、オールポート領は王都にも近いですし。だったら孤児院の土地家屋を売って金にして、オールポート領で孤児院を営もうとしたけど……アンさんが反対した。
育ててくれた婆さんの思いを繋ぎたい……立派だけど、この世界では、なかなか難しい。女と子どもしかいない僻地の一軒家なんて、襲ってくださいと言っているものだ。ハリソンはそう反対したが、「今までだってアンタはいなかったでしょ」と反論され、ハリソンり出稼ぎが始まった。
「まあ、オールポートの屋敷もいろいろあって、俺は追い出されちまうんですが……」
ガシガシと照れ隠しに後ろ頭を掻いているが、そのことはセシル君を罠に嵌めたオールポート伯爵たちが悪いので、気にすんな。
「セシル様の元、ようやく安定した生活が送れると安心したのも束の間、こんなことに巻き込まれちまいました」
「そのことについては、俺も同意見だ」
スチャッと右手を上げて同意する。今度のことってプレイステッド辺境伯のラファエルが、ルーカスにウェントブルック辺境伯になるよう脅迫するために起きたことだしな。二つの辺境伯と関わりのない俺にとっては、とんだとばっちりだし、俺を攫うために奥さんと孤児院を盾に脅されたハリソンは被害者ともいえる。
「ただなぁ、お前がプレイステッド家と接触した時点で相談してくれれば、もう少し事態は変わったんだぞ? そこは反省しろよ」
俺はゴツンとハリソンの頭にゲンコツをお見舞いしてやった。
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