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領地経営編①
領主、葉っぱが気になる
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やってきました本日のオールポート伯爵領地の視察現場です。
なんにもねえぇぇぇぇぇぇっ。
見渡す限りの草原……と名の雑草が生い茂った平地だな。
「ベンジャミン。ここはずっと平地だったのか?」
昔は山だったのを切り崩したとか、火山灰が堆積したとか?
「はい。ここら辺は平地で、あっちには低い山があるだけです。ええっと、もう少し進むと細い川が流れています」
川か……ないよりはあったほうがいいけど、細い川って涸れそうとか?
「その川、雨期に溢れたり、日照りですぐ涸れたりしない? あと、飲める?」
「今までの記録ではそういうことはありません。透明度は悪くないと思いますが、セシル様やシャーロット様が飲用するのはお避け下さい」
「飲まないよ。あとは、あの林か。林? 森? なんか低い木の奥に高い木があるって変じゃない?」
「誰かが挿し木で低木を植えたんじゃないですかね? たぶんベリー系の果実がなる木ですよ」
ディーンが興味なさそうに口を挟む。
ちょっとはお前も興味を持てよっ。
「ああ……」
それって、もしかしてここに不法に住んでいる人たちの食用? 非常食?
「平地は見てもしょうがないから……あの森に行ってみるよ」
白豚はフットワーク軽くあちこちに行けないので、山なんて登れないので、森の探索でもしますよ。
「クラークは念のためディーンとここら辺の植生を調べてくれ。シャーロットちゃんとマリーもここにいるように」
「はい、わかりました」
「はい、お父様。気をつけてくださいね」
ああ、娘の心配するウルウル瞳が、白豚のささくれた気持ちを解してくれるぜ。
「じゃ、ベンジャミン行こう」
あの果実がなる木って、俺が知っている木っぽいんだよなー。正しくは葉っぱがね? こう、葉の縁がギザギザしている葉がね?
三歩歩いては汗を拭いて、十歩歩いては一休みを繰り返し、森に到着。
「これ、やっぱりクワの葉だ」
葉自体は薄くて、濃い緑色。触ると表面がざらつく。縁はギザギザと鋸状の葉。
ベリーみたいな実がなると言っていたがクワの実って食えたよな?
「ふむ。クワの葉といえばカイコ。あとは繊維質が強いから製紙関係か……。クワの実はジャムにするとか?」
ブツブツとクワの葉を手に持ち、新しい産業をどうするかと思案する俺の前に、サッとベンジャミンが庇うように出た。
「セシル様!」
「ほへぇ?」
なんだ、なんだ? なにがあった?
顔を上げた俺の前にはベンジャミンの逞しい背中と、デカイ……デカイ、白っぽくてむにょんとした何かの顔?
「うわあああっ! なんだ、コイツ」
「これは、カイコガの幼虫です」
ガ……カイコガ……って蛾か? まてよ、カイコガの幼虫ってカイコじゃないの?
しかし、俺の知っているカイコは手の平に乗せてうにょうにょするサイズだぞ?
この世界のカイコってバカデカイじゃないか! これ……大型犬ぐらいか?
「下がってくださいセシル様」
ベンジャミンが腰に佩いていた剣の柄に手を伸ばすと、カイコの後ろからひょっこりと壮年の痩せた男が顔を出した。
「おお、すまん、すまん。人がいるとは思わなんだ」
「……誰だ?」
「ん? ワシか? ワシはここに住んでこいつらの研究をしている爺だ」
わっははははと笑っているこの爺さん。ここでカイコの研究をしているって、もしかして繭から絹糸を作る研究か?
「俺はここオールポート伯爵領の領主、セシル・オールポートだ。ここら辺の視察に来た」
ベンジャミンの肩越しに顔を出して名乗ると、人の好さそうな爺さんの眼が一瞬ギラッと光る。
爺さんの話をじっくりと聞くために重い体をなんとか動かし、クラークたちのところまで戻ってきた。
正直、体が悲鳴を上げている。早く帰りたい。しかし、この爺さんは匂う。何か興味深い話が聞けるかも?
相反する気持ちで俺はフウフウと荒く息を吐く。
「大丈夫ですか、お父様。はい、ミント水です」
「シャーロットちゃん、ありがとう」
ああ、いい子。本当にいい子。俺の娘、最高。
さっぱりミント水で喉を潤していると、クラークが爺さんの顔を見て口をパッカーンと開けた。
「嘘だろ? ここで何してるんですか、ラスキン博士?」
「おや? 悪たれ。お前さん、オールポートに戻ってきたのか?」
……お二人はお知り合いですか? もしかしてクラークとお友達のディーンも?
「お前も知っているのか?」
口が開いてるぞ、ディーン。
「ええ。昔、いろいろと教えてもらった恩師です。王都の学園で教鞭をとっていたこともあるんですよ、あの人。こんなところで何しているのか」
ディーン、お前クラークを生贄に自分は助かろうと俺の体で隠れるなよ。
横は余裕があっても、背はお前のほうが高いだろうがっ。
「おやおや、ベンジャミンさんがいると思えば、ディーンもいたのですね」
ニッコニコの爺さん、ラスキン博士の食えない顔と、ベンジャミンの困惑顔がなんとも言えない。
「……とにかく、ラスキン博士の研究対象の話も聞きたい。屋敷に戻ろう」
俺は疲れたの! ディーンとクラークの悪童の昔話を聞く余裕はないの!
「おや? 伯爵殿はここに視察に来られたのでは? 何も見ずに帰られるので?」
「……何が言いたい?」
「ここで見るべきは、雑草が茂った平地でも細くただ流れるだけの川でもない。ここに住むしかなかった哀れな貴方の領民たちでは?」
……う~ん。そういう人たちはある程度のコミュニティを築き、ピラミッド状の関係性ができちゃっているから、話ならそのトップの人物を探して聞かないと時間のムダなんだよな。
他の奴らはトップの奴に気兼ねして口を噤んじゃうからね。
「まるで、ラスキン博士なら、その哀れな領民との橋渡しができるとでも言いたげだな?」
もし、できるなら、こちらから頭を下げてでもお願いしたいよ。
だって、この人の「気」はとっても清涼でキレイな色だからさ。
いい人だって確信できるんだよね!
なんにもねえぇぇぇぇぇぇっ。
見渡す限りの草原……と名の雑草が生い茂った平地だな。
「ベンジャミン。ここはずっと平地だったのか?」
昔は山だったのを切り崩したとか、火山灰が堆積したとか?
「はい。ここら辺は平地で、あっちには低い山があるだけです。ええっと、もう少し進むと細い川が流れています」
川か……ないよりはあったほうがいいけど、細い川って涸れそうとか?
「その川、雨期に溢れたり、日照りですぐ涸れたりしない? あと、飲める?」
「今までの記録ではそういうことはありません。透明度は悪くないと思いますが、セシル様やシャーロット様が飲用するのはお避け下さい」
「飲まないよ。あとは、あの林か。林? 森? なんか低い木の奥に高い木があるって変じゃない?」
「誰かが挿し木で低木を植えたんじゃないですかね? たぶんベリー系の果実がなる木ですよ」
ディーンが興味なさそうに口を挟む。
ちょっとはお前も興味を持てよっ。
「ああ……」
それって、もしかしてここに不法に住んでいる人たちの食用? 非常食?
「平地は見てもしょうがないから……あの森に行ってみるよ」
白豚はフットワーク軽くあちこちに行けないので、山なんて登れないので、森の探索でもしますよ。
「クラークは念のためディーンとここら辺の植生を調べてくれ。シャーロットちゃんとマリーもここにいるように」
「はい、わかりました」
「はい、お父様。気をつけてくださいね」
ああ、娘の心配するウルウル瞳が、白豚のささくれた気持ちを解してくれるぜ。
「じゃ、ベンジャミン行こう」
あの果実がなる木って、俺が知っている木っぽいんだよなー。正しくは葉っぱがね? こう、葉の縁がギザギザしている葉がね?
三歩歩いては汗を拭いて、十歩歩いては一休みを繰り返し、森に到着。
「これ、やっぱりクワの葉だ」
葉自体は薄くて、濃い緑色。触ると表面がざらつく。縁はギザギザと鋸状の葉。
ベリーみたいな実がなると言っていたがクワの実って食えたよな?
「ふむ。クワの葉といえばカイコ。あとは繊維質が強いから製紙関係か……。クワの実はジャムにするとか?」
ブツブツとクワの葉を手に持ち、新しい産業をどうするかと思案する俺の前に、サッとベンジャミンが庇うように出た。
「セシル様!」
「ほへぇ?」
なんだ、なんだ? なにがあった?
顔を上げた俺の前にはベンジャミンの逞しい背中と、デカイ……デカイ、白っぽくてむにょんとした何かの顔?
「うわあああっ! なんだ、コイツ」
「これは、カイコガの幼虫です」
ガ……カイコガ……って蛾か? まてよ、カイコガの幼虫ってカイコじゃないの?
しかし、俺の知っているカイコは手の平に乗せてうにょうにょするサイズだぞ?
この世界のカイコってバカデカイじゃないか! これ……大型犬ぐらいか?
「下がってくださいセシル様」
ベンジャミンが腰に佩いていた剣の柄に手を伸ばすと、カイコの後ろからひょっこりと壮年の痩せた男が顔を出した。
「おお、すまん、すまん。人がいるとは思わなんだ」
「……誰だ?」
「ん? ワシか? ワシはここに住んでこいつらの研究をしている爺だ」
わっははははと笑っているこの爺さん。ここでカイコの研究をしているって、もしかして繭から絹糸を作る研究か?
「俺はここオールポート伯爵領の領主、セシル・オールポートだ。ここら辺の視察に来た」
ベンジャミンの肩越しに顔を出して名乗ると、人の好さそうな爺さんの眼が一瞬ギラッと光る。
爺さんの話をじっくりと聞くために重い体をなんとか動かし、クラークたちのところまで戻ってきた。
正直、体が悲鳴を上げている。早く帰りたい。しかし、この爺さんは匂う。何か興味深い話が聞けるかも?
相反する気持ちで俺はフウフウと荒く息を吐く。
「大丈夫ですか、お父様。はい、ミント水です」
「シャーロットちゃん、ありがとう」
ああ、いい子。本当にいい子。俺の娘、最高。
さっぱりミント水で喉を潤していると、クラークが爺さんの顔を見て口をパッカーンと開けた。
「嘘だろ? ここで何してるんですか、ラスキン博士?」
「おや? 悪たれ。お前さん、オールポートに戻ってきたのか?」
……お二人はお知り合いですか? もしかしてクラークとお友達のディーンも?
「お前も知っているのか?」
口が開いてるぞ、ディーン。
「ええ。昔、いろいろと教えてもらった恩師です。王都の学園で教鞭をとっていたこともあるんですよ、あの人。こんなところで何しているのか」
ディーン、お前クラークを生贄に自分は助かろうと俺の体で隠れるなよ。
横は余裕があっても、背はお前のほうが高いだろうがっ。
「おやおや、ベンジャミンさんがいると思えば、ディーンもいたのですね」
ニッコニコの爺さん、ラスキン博士の食えない顔と、ベンジャミンの困惑顔がなんとも言えない。
「……とにかく、ラスキン博士の研究対象の話も聞きたい。屋敷に戻ろう」
俺は疲れたの! ディーンとクラークの悪童の昔話を聞く余裕はないの!
「おや? 伯爵殿はここに視察に来られたのでは? 何も見ずに帰られるので?」
「……何が言いたい?」
「ここで見るべきは、雑草が茂った平地でも細くただ流れるだけの川でもない。ここに住むしかなかった哀れな貴方の領民たちでは?」
……う~ん。そういう人たちはある程度のコミュニティを築き、ピラミッド状の関係性ができちゃっているから、話ならそのトップの人物を探して聞かないと時間のムダなんだよな。
他の奴らはトップの奴に気兼ねして口を噤んじゃうからね。
「まるで、ラスキン博士なら、その哀れな領民との橋渡しができるとでも言いたげだな?」
もし、できるなら、こちらから頭を下げてでもお願いしたいよ。
だって、この人の「気」はとっても清涼でキレイな色だからさ。
いい人だって確信できるんだよね!
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