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選択は安易に選んじゃいけません
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今日も朝から冒険者の仕事に出かけます。
いつものようにイリヤさんの待ち伏せに遭い、門に着くまでに屋台であれやこれや買ってもらって、セクハラもいろいろとされて……送り出されました。
なんだよっ、あの人! いい加減にしてくれよっ! 絶対に絶対に絆されないぞっ。俺はこの世界で、清く正しく仙人レベルの枯れた生活を送るって決めたんだから!
イリヤさんは男の人でも綺麗だし、いい匂いするし、面倒見がいいし、優しいし、たまに流されそうになるけど、「抱く」も「抱かれる」も嫌だ! いーやーだー!!
こうして毎日ちゃんと否定しないと、本当に絆されそうで怖いぜ。
門を出て、いつもとは違う方へ進む。今日は午後から「魔法講習」があるので、薬草採取は早めに終わらせるつもり。いつもの場所だと薬草が沢山採取できてしまうため、ついつい時間を忘れてしまう。
「岩の多い草原地帯で麻痺を治す薬草採取依頼、うぅーん、薬草つーか苔? かな。岩の下に付いてる薬草って」
あまり量が採取できないせいか、報酬は高い。短時間でバアーンと稼ぐつもりだ。ただ……。
「なんで、今日に限ってアレが出たのかなぁ?」
アレとは、【人生の選択】だ。宿を出る間際に、ピロリン♪
【人生の選択】
・宿で休みますか
・薬草採取に行きますか
と出た。
え? なんで? いつもは何もないのに、と思いつつチョンと薬草採取を選んだ。
この選択は俺の人生に関わるときだけに出る。今日、薬草採取に行くか行かないかは人生に関わる重要事項だと気づいたときには、もう選んでしまっていた。
そうなったらピコンと道路に矢印が表示される。もう、行くしかない。
後々、このとき薬草採取に行くことを選んだ自分を恨むことになる。
ついでに言うなら、せめていつもの場所に薬草採取に行けばよかった。
でもさ、でもさ、薬草採取であんなことになるなんて……思わないじゃないかーっ!
ふうっ。こんなものかな?
小さな革袋に苔のような薬草がこんもり入ってる。幸運度MAXのおかげで順調に薬草が見つけられたぜ。
今は丁度いい高さの岩に腰掛けて、イリヤさんに買ってもらったお昼ご飯をもきゅもきゅ食べている。
あー、辛甘なタレの肉がうーまーい。
魔法鞄から水筒を出してクピクピ飲んで、ぷはーっ。
イリヤさんは、おやつも買ってくれる。チュロスみたいなお菓子をモグモグ。
少し休んだら町に帰ろう。まだ、魔法講習には早い時間だからお風呂に入ってからギルドに行こうかな?
食べた後のゴミを片付けて、中腰の作業で固まった体を解すように、大きく伸びをする。
あー、気持ちいい。お腹も満たされて、天気も良くていい日だなー……、ん?
「なんか、聞こえたか?」
キョロキョロ辺りを見回す俺。
岩が点在するが草原地帯なので見晴らしはいい。何も見えないよね?
はてな、と首を傾げた俺。チラッと何かか見えた。見えたけど……砂煙? 砂漠じゃあるまいし、砂嵐なんて起きないでしょ? なんじゃ、ありゃ。
微かに聞こえる、人の声?
「……げろ。……あ……いぞ……」
「ん?」
目を眇めて砂煙をよく見てみる。もうもうと沸き立つ煙の中、太い四肢が見えた。
「んんっ?」
ドカドカッと恐ろしいスピードで何かが駆けている。その何かが砂煙を立てながらこちらに向かって駆けてくる。砂煙の影の濃いところの大きさが、ものすごくデカイんだが……。あれ、何?
ぼーっと、現実逃避していると、その何かはどんどん近づいてくる。
誰かの声がちゃんと聞こえるぐらいには。
「おーいっ! 危ないっ、逃げろ! 逃げろ!」
「へっ?」
声は砂煙の中から聞こえてきた。誰? とマジマジと見つめると、その砂煙はドデカイ猪が全力疾走しているからで、その猪は普通の猪じゃなくて凶暴な魔物で、間違いなく俺を獲物としてロックオンしている……て、マージ―かーっ!
「に、逃げなきゃ……。逃げなきゃ、あわあわわわ」
猪は真っ直ぐに走るから、横に逃げなきゃという頭と、とにかく逃げなきゃと反応する体が見事に混じって、俺はその場に転げ倒れた。
倒れたら、もう恐怖で足が動かない。腰が抜けて立てない。
「ひえぇぇぇぇっ! ど、どおしよう……」
体をできるだけ縮めて丸めて、両腕で頭を庇うけど、あの大きさの猪の口だったら俺なんて一口でガブリだと思う。だってトレーラーぐらいの大きさはあったぞ。
「助けて……誰か助けてくださいっ。あー、イリヤさん、助けて!」
冒険者といっても都会で生まれ育った俺が魔物討伐なんてできるはずもなく、薬草採取しかしてこなかった。だって、生き物殺すとか無理! 魔法で討伐することも考えたけど、死体触れないし、解体できないし、やっぱ無理!
冒険初心者でさえ討伐可能な小さな魔物すら無理なんだから、こんなデカイのは問題外!
【人生の選択】間違えた。今日は魔法講習まで宿で大人しく休んでいるのが正解だったんだ……。バカバカ、俺のバカ。
だぱぁーっと涙が両目から溢れてくる。ひぐっひぐっと喉が鳴るほど泣き、ぷるぷると全身が恐怖に震えだした。
ああ、とうとう死んじゃう。いや、もう死んだんだけど。また死んじゃう。
こうしている間もドカドカッと猪の走る音が聞こえるし、地響きも感じる。
ドカドカッ。ドカドカッ。
死のカウントダウンが……。
ドカドカッ。ドカドカッ。
ドカ……ドォーン!
「ふぅーっ、間に合った。おい、あんた!大丈夫か?」
「……ひー」
「おいおい、大丈夫かよ」
この猪、人の言葉を喋るのかよ。怖さ倍増だわっ。もう、思い切ってひと思いに殺ってくださいぃーっ。
いつものようにイリヤさんの待ち伏せに遭い、門に着くまでに屋台であれやこれや買ってもらって、セクハラもいろいろとされて……送り出されました。
なんだよっ、あの人! いい加減にしてくれよっ! 絶対に絶対に絆されないぞっ。俺はこの世界で、清く正しく仙人レベルの枯れた生活を送るって決めたんだから!
イリヤさんは男の人でも綺麗だし、いい匂いするし、面倒見がいいし、優しいし、たまに流されそうになるけど、「抱く」も「抱かれる」も嫌だ! いーやーだー!!
こうして毎日ちゃんと否定しないと、本当に絆されそうで怖いぜ。
門を出て、いつもとは違う方へ進む。今日は午後から「魔法講習」があるので、薬草採取は早めに終わらせるつもり。いつもの場所だと薬草が沢山採取できてしまうため、ついつい時間を忘れてしまう。
「岩の多い草原地帯で麻痺を治す薬草採取依頼、うぅーん、薬草つーか苔? かな。岩の下に付いてる薬草って」
あまり量が採取できないせいか、報酬は高い。短時間でバアーンと稼ぐつもりだ。ただ……。
「なんで、今日に限ってアレが出たのかなぁ?」
アレとは、【人生の選択】だ。宿を出る間際に、ピロリン♪
【人生の選択】
・宿で休みますか
・薬草採取に行きますか
と出た。
え? なんで? いつもは何もないのに、と思いつつチョンと薬草採取を選んだ。
この選択は俺の人生に関わるときだけに出る。今日、薬草採取に行くか行かないかは人生に関わる重要事項だと気づいたときには、もう選んでしまっていた。
そうなったらピコンと道路に矢印が表示される。もう、行くしかない。
後々、このとき薬草採取に行くことを選んだ自分を恨むことになる。
ついでに言うなら、せめていつもの場所に薬草採取に行けばよかった。
でもさ、でもさ、薬草採取であんなことになるなんて……思わないじゃないかーっ!
ふうっ。こんなものかな?
小さな革袋に苔のような薬草がこんもり入ってる。幸運度MAXのおかげで順調に薬草が見つけられたぜ。
今は丁度いい高さの岩に腰掛けて、イリヤさんに買ってもらったお昼ご飯をもきゅもきゅ食べている。
あー、辛甘なタレの肉がうーまーい。
魔法鞄から水筒を出してクピクピ飲んで、ぷはーっ。
イリヤさんは、おやつも買ってくれる。チュロスみたいなお菓子をモグモグ。
少し休んだら町に帰ろう。まだ、魔法講習には早い時間だからお風呂に入ってからギルドに行こうかな?
食べた後のゴミを片付けて、中腰の作業で固まった体を解すように、大きく伸びをする。
あー、気持ちいい。お腹も満たされて、天気も良くていい日だなー……、ん?
「なんか、聞こえたか?」
キョロキョロ辺りを見回す俺。
岩が点在するが草原地帯なので見晴らしはいい。何も見えないよね?
はてな、と首を傾げた俺。チラッと何かか見えた。見えたけど……砂煙? 砂漠じゃあるまいし、砂嵐なんて起きないでしょ? なんじゃ、ありゃ。
微かに聞こえる、人の声?
「……げろ。……あ……いぞ……」
「ん?」
目を眇めて砂煙をよく見てみる。もうもうと沸き立つ煙の中、太い四肢が見えた。
「んんっ?」
ドカドカッと恐ろしいスピードで何かが駆けている。その何かが砂煙を立てながらこちらに向かって駆けてくる。砂煙の影の濃いところの大きさが、ものすごくデカイんだが……。あれ、何?
ぼーっと、現実逃避していると、その何かはどんどん近づいてくる。
誰かの声がちゃんと聞こえるぐらいには。
「おーいっ! 危ないっ、逃げろ! 逃げろ!」
「へっ?」
声は砂煙の中から聞こえてきた。誰? とマジマジと見つめると、その砂煙はドデカイ猪が全力疾走しているからで、その猪は普通の猪じゃなくて凶暴な魔物で、間違いなく俺を獲物としてロックオンしている……て、マージ―かーっ!
「に、逃げなきゃ……。逃げなきゃ、あわあわわわ」
猪は真っ直ぐに走るから、横に逃げなきゃという頭と、とにかく逃げなきゃと反応する体が見事に混じって、俺はその場に転げ倒れた。
倒れたら、もう恐怖で足が動かない。腰が抜けて立てない。
「ひえぇぇぇぇっ! ど、どおしよう……」
体をできるだけ縮めて丸めて、両腕で頭を庇うけど、あの大きさの猪の口だったら俺なんて一口でガブリだと思う。だってトレーラーぐらいの大きさはあったぞ。
「助けて……誰か助けてくださいっ。あー、イリヤさん、助けて!」
冒険者といっても都会で生まれ育った俺が魔物討伐なんてできるはずもなく、薬草採取しかしてこなかった。だって、生き物殺すとか無理! 魔法で討伐することも考えたけど、死体触れないし、解体できないし、やっぱ無理!
冒険初心者でさえ討伐可能な小さな魔物すら無理なんだから、こんなデカイのは問題外!
【人生の選択】間違えた。今日は魔法講習まで宿で大人しく休んでいるのが正解だったんだ……。バカバカ、俺のバカ。
だぱぁーっと涙が両目から溢れてくる。ひぐっひぐっと喉が鳴るほど泣き、ぷるぷると全身が恐怖に震えだした。
ああ、とうとう死んじゃう。いや、もう死んだんだけど。また死んじゃう。
こうしている間もドカドカッと猪の走る音が聞こえるし、地響きも感じる。
ドカドカッ。ドカドカッ。
死のカウントダウンが……。
ドカドカッ。ドカドカッ。
ドカ……ドォーン!
「ふぅーっ、間に合った。おい、あんた!大丈夫か?」
「……ひー」
「おいおい、大丈夫かよ」
この猪、人の言葉を喋るのかよ。怖さ倍増だわっ。もう、思い切ってひと思いに殺ってくださいぃーっ。
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