【再々掲】男だけの異世界に転移しちゃった! 異世界人生は2択で進む「抱く」「抱かれる」さあ、どっち?

緒沢利乃

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だから、デートじゃないよ

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冒険者ギルドに戻り、受付カウンターにいるギルド職員のニーナさんの元へ。

「こんにちは」
「アオイくん、おかえりなさい。薬草採れた?」

はい、と皮袋から薬草の束を出していく。最後に「ビビビ草」を出すと、ニーナさんの目が爛々と輝きますよ。貴方も愛好者の一人なんですね、高額美容液の……。

ギルド職員のニーナさんは俺の冒険者登録を担当してくれた人でもあり、初心者用冒険者講習の講師でもある。俺と同じ位の背丈に童顔で恐ろしい鉄壁の営業スマイルに、勝手に親近感を持ってます。

「もう、アオイくんがこの薬草を持ち込んでくれるおかげで、手に入れやすくなって助かってるんだー。ありがとう、これからも、頑張ってね」

バチコーンとウィンクされましたが、笑顔で避けます。男からの好感度などいらん!

それじゃと、換金されたお金を仕舞って、そそくさと帰ろうとしたのに……、見つかった……。

「あら、アオイちゃん。おかえり。ちょっと待って、わたしも一緒に帰るわ」
「えー! サブマス、早くないですか? まだ仕事残ってますよね?」
「あの仕事はギルマスの分よ。ちゃんと自分でやりなさいって伝えておいて」

……。いやいや、貴方帰る気マンマンだったでしょ? だって手に荷物持ってるし……。

イリヤさんは、カツカツと靴の踵を響かせて階段を下りると、俺の腕をガシッと組んで捕まえる。

「じゃあ、お疲れ様ーっ」

ひらひらと手を振りながらギルドの扉を開けて、ズルズル俺を引き摺りながら出ていくのだ……イリヤさん。朝に会うだけで、お腹いっぱいなんだけどなぁ。

ピロリン♪ と「人生の2択」も表示されています。いっそのこと「抱く」か「抱かれる」かしたら、この状態も終わるのか……。
はっ! あぶないっあぶないっ。ヤバい方向へ考えが誘導されるところだった。ふうーっ。

「アオイちゃん、真っ直ぐ宿に戻るのでいいの? どっか寄っていく?」
「い、いいえ。宿に帰ってご飯食べます」
「じゃあ、一緒に食べましょ」
「……はい」

ううーっ、逃げられないっ。


宿屋に戻り、そのまま一階の受付兼食堂でご飯を食べてます。今日の夕飯は白パンとトマトスープとチキンソテー、サラダです。美味しいです。この宿屋「タイタンの矢」は白マッチョが料理や洗濯を担当して、褐色マッチョが受付と掃除を担当している。

二人とも気の良い人で、一人ずつと接するのには問題はない。ただ、二人揃うと俺の心がダメージを受けるので止めてほしい。男しかいない異世界の現実が俺を押し潰そうとするんだぁ……。

「あの……」
「ん? なぁに? このスーブ美味しいわね」
「はい、美味しいです。……じゃなくて……」
「あら、足りない? わたしのパンも食べる?」
「いいえ……。むしろ、多いぐらいです。いやいや、そうじゃなくて……」
「やだぁ、もっと食べないと、大きくなれないわよ? ほら、あーん」

あーん、じゃねぇよっ。
口を開ける訳ねぇだろうっ。そのシチュエーションは付き合って初めてのデートで、ディズニーランドでする予定だったんだよっ。

俺は無言で、テーブルの上でイリヤさんに握られている右手を放そうともがく。もがく。もーがーくーっ……ダメだ、この馬鹿力めっ!

席に着いた早々、手を握りやがって。しかも指で手の甲を擽ったり、指の股を強く押してみたり、手首をさわさわ柔く触ったり、いやらしいことすんなっ!

イリヤさんはニコニコしながら、フォークに刺したチキンをグイグイと俺の口に押し付ける。

やーめーれーっ!


バシッ!

「痛ーいっ。なにすんのよっ、カディ!」
「アオイが嫌がってんだろうが、飯ぐらいちゃんと食わせてやれっ」

褐色マッチョの旦那、カディさんがイリヤさんの後頭部を叩いて、俺の右手も救出してくれた。
ありがたやー、ありがたやー。

カディさんとイリヤさんが軽口を叩き合ってる間に、俺は残っていたスーブとパンを口に押し込んだ。

「アオイちゃん、リスみたい、頬っぺたパンパンでかわいい」

俺はふるふると頭を振って否定する。
かわいくない、俺は断じて、かわいくないっ。

だから、そんなうっとりした顔で俺を見るな!

「人生の2択」表示がチカチカと点滅しやがりますっ!
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