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真相①
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一方、スタン公爵家では……。
「王宮からの報告です」
執事が神妙な顔で、公爵夫妻に一礼する。
スタン公爵家の大広間。
そこにいるのは夫妻だけじゃない。長男のアンリとその妹のセレナもいる。
そして……公爵と交流のある者数人と、屋敷で働く使用人達。彼らは固唾を呑み、執事の言葉を待っている。
そんな彼らに執事は、気を持たせるような間を置いた後。
「殿下が王太子の地位を返上し、大使として旅立った……と」
少し口角を上げて、内容を告げた。
「…………」
誰もが直ぐに理解出来なかったのは、執事の表情から結果を読み取れなかったためだ。
しかし誰も知らなかったが、彼はお茶目なところがあるらしい。困惑する彼らにニッと笑うことで、言葉の意味を告げた。
我々は成功した、勝利したと。
「………………や……」
プルプル震えるかすかな声は合図だったか。聞いた誰かが大声で叫んだ。
「やったー!」
わぁぁー!! と、歓声があちこちから沸き起こる。腕を振り上げる者、ハイタッチする者。皆晴れ渡るような笑顔で、一つの喜びを分かち合う。
「あのアホ王太子を追い出せた!」
「これでもう心配ないわね!」
「やれたんだな、俺達でも……!」
「ああ! 公爵様方のお力になれた……やったんだ…!」
うれし涙を浮かべ口々に言い合うが、やがてその視線は、1人の人物に注がれる。
「……でも1番頑張ってくれたのは……」
「あなたですね!!」
その場にいる全員の感謝は、1人の女性に向けられた。
――王太子の前で“セレナ”だった彼女に。
「い、いや私なんて……。皆で頑張ったからですよ……」
実はこの令嬢、セレナではない。
彼女はシダー男爵家の令嬢でマリアンヌ。セレナとは遠縁の親戚だ。
が、血が薄いにも関わらず、彼女とセレナは幼少期、双子のようにそっくりだった。今は……髪の色と瞳の色くらいで、多少面影が残っているか程度。体格に至っては丸っきり違う。
公爵家と男爵家という立場の違いはあれど、領地が隣同士だったため家族ぐるみで仲が良かった。
そんな彼女が何故、セレナになりすましたかと言うと……。
半月程前。
「こんにちは! 門番さん。マリアンヌ・シダーが訪ねて来たとお取り次ぎ願えますか? お野菜持ってきたから裏口回りますね」
荷馬車から降りたマリアンヌが、顔なじみの門番に話しかけた。
“野菜の出来が良かったから、届けに行く”と数日前に頼りを出した。いつもなら使用人に行ってもらうのだが、彼は腰を痛めた祖母の看病をしなくてはならず、ならば私が、とマリアンヌが申し出たのだ。久しぶりに仲良しの少女の顔が見たかったのもある。
(セレナ、元気かな? お野菜喜んでくれるかな?)
何か、王太子様の婚約者に選ばれたって聞いた。偉い人になったから、私とは話してくれないかな? ま、元気だったらそんなことはいいや。
門番はマリアンヌに気付くと、厳つい顔をふっと綻ばせた。
「マリアンヌさんは、いつもお元気ですね……」
「えへへ、また貫禄がついた! ってよく言われるよ」
あははと笑ったついでに、お腹をパンパンと叩いてみせる。
はしたないって言われそうだけど、自分には“貴族のオジョウサマ”らしさなんて必要がない。毎日畑を耕して牧場の牛や羊を育てる健康な体。太い腕も、大きくて丸まった手も、全てを守る為のものだ。
ここに来るまででも、私を見て“デブ”とか“豚”とかコソコソ言って笑ってる人がいたけど分からないんだね。
この体で、大切なものをたくさん守れているってことを。
あれ?
そこでマリアンヌは気付いた。
「……? 門番さん、何か疲れていません?」
「い、いえ……自分は平気ですよ」
強がっていても声が疲れている。何かないか、とポシェットをごそごそして、ああこれをと小袋を出して手に持たせた。
「これドライフルーツ。良かったら食べてください」
お仕事中でもちょっとした合間に、口に入れられるし。
「あ、ありがと……ございます……!」
って、ええ!? ちょっと門番さん?
「王宮からの報告です」
執事が神妙な顔で、公爵夫妻に一礼する。
スタン公爵家の大広間。
そこにいるのは夫妻だけじゃない。長男のアンリとその妹のセレナもいる。
そして……公爵と交流のある者数人と、屋敷で働く使用人達。彼らは固唾を呑み、執事の言葉を待っている。
そんな彼らに執事は、気を持たせるような間を置いた後。
「殿下が王太子の地位を返上し、大使として旅立った……と」
少し口角を上げて、内容を告げた。
「…………」
誰もが直ぐに理解出来なかったのは、執事の表情から結果を読み取れなかったためだ。
しかし誰も知らなかったが、彼はお茶目なところがあるらしい。困惑する彼らにニッと笑うことで、言葉の意味を告げた。
我々は成功した、勝利したと。
「………………や……」
プルプル震えるかすかな声は合図だったか。聞いた誰かが大声で叫んだ。
「やったー!」
わぁぁー!! と、歓声があちこちから沸き起こる。腕を振り上げる者、ハイタッチする者。皆晴れ渡るような笑顔で、一つの喜びを分かち合う。
「あのアホ王太子を追い出せた!」
「これでもう心配ないわね!」
「やれたんだな、俺達でも……!」
「ああ! 公爵様方のお力になれた……やったんだ…!」
うれし涙を浮かべ口々に言い合うが、やがてその視線は、1人の人物に注がれる。
「……でも1番頑張ってくれたのは……」
「あなたですね!!」
その場にいる全員の感謝は、1人の女性に向けられた。
――王太子の前で“セレナ”だった彼女に。
「い、いや私なんて……。皆で頑張ったからですよ……」
実はこの令嬢、セレナではない。
彼女はシダー男爵家の令嬢でマリアンヌ。セレナとは遠縁の親戚だ。
が、血が薄いにも関わらず、彼女とセレナは幼少期、双子のようにそっくりだった。今は……髪の色と瞳の色くらいで、多少面影が残っているか程度。体格に至っては丸っきり違う。
公爵家と男爵家という立場の違いはあれど、領地が隣同士だったため家族ぐるみで仲が良かった。
そんな彼女が何故、セレナになりすましたかと言うと……。
半月程前。
「こんにちは! 門番さん。マリアンヌ・シダーが訪ねて来たとお取り次ぎ願えますか? お野菜持ってきたから裏口回りますね」
荷馬車から降りたマリアンヌが、顔なじみの門番に話しかけた。
“野菜の出来が良かったから、届けに行く”と数日前に頼りを出した。いつもなら使用人に行ってもらうのだが、彼は腰を痛めた祖母の看病をしなくてはならず、ならば私が、とマリアンヌが申し出たのだ。久しぶりに仲良しの少女の顔が見たかったのもある。
(セレナ、元気かな? お野菜喜んでくれるかな?)
何か、王太子様の婚約者に選ばれたって聞いた。偉い人になったから、私とは話してくれないかな? ま、元気だったらそんなことはいいや。
門番はマリアンヌに気付くと、厳つい顔をふっと綻ばせた。
「マリアンヌさんは、いつもお元気ですね……」
「えへへ、また貫禄がついた! ってよく言われるよ」
あははと笑ったついでに、お腹をパンパンと叩いてみせる。
はしたないって言われそうだけど、自分には“貴族のオジョウサマ”らしさなんて必要がない。毎日畑を耕して牧場の牛や羊を育てる健康な体。太い腕も、大きくて丸まった手も、全てを守る為のものだ。
ここに来るまででも、私を見て“デブ”とか“豚”とかコソコソ言って笑ってる人がいたけど分からないんだね。
この体で、大切なものをたくさん守れているってことを。
あれ?
そこでマリアンヌは気付いた。
「……? 門番さん、何か疲れていません?」
「い、いえ……自分は平気ですよ」
強がっていても声が疲れている。何かないか、とポシェットをごそごそして、ああこれをと小袋を出して手に持たせた。
「これドライフルーツ。良かったら食べてください」
お仕事中でもちょっとした合間に、口に入れられるし。
「あ、ありがと……ございます……!」
って、ええ!? ちょっと門番さん?
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