12 / 15
真相⑥
しおりを挟む
「セ、セレナ……なのか?」
初めて見た王太子に、マリアンヌが下した評価は――“見た目は良い”だった。
肌は綺麗で顔立ちも良い、体型も痩せ型で見苦しさがない。上質といえば上質だ。
が……あくまでマリアンヌ自身の感想はこれだ。
――骨が無い。
自分を一目見てからずっと青い顔をしている男からは信念のようなものが見つからない。どうやら真実の愛というものは、感染されたら骨がやられるらしい。
シダー男爵領の資源は豊かだ。それもこれも祖先や今までの領主が、現状に甘えず積み重ねてきた努力の結果だ。しかしそれを脅かし、食い物にしようとする輩はいる。それらから民を守る為にと、マリアンヌは両親や周りの大人達から色々教え込まれてきた。人を見抜け、見かけや言葉に騙されるな、と。
そんな彼女が下した評価がそれだった。間違っていたとは思わないし、間違っていなかった。
肥満を強調するように、体を縦にして応接間に入る。いや実際そうでないと入れなかった。今日の日の為に用意した“肥満を強調するドレス”のせいで。
公爵家御用達の仕立屋が、今回の作戦用に考案した特別製。小太りなマリアンヌを更に膨張するべく作られた特別製だ。あまり目立たないところに空気穴がある。
“こうやって空気を入れるんです。ただし入れ過ぎはいけません、破裂してしまいます”
仕立屋に感謝だ。効果は抜群だ。
王太子の、真っ青に引きつった顔が、証明してくれている。
マリアンヌは王太子に秒で近付くと、
「お待ちしておりました、殿下!」
力いっぱい、抱きしめてやった。
「ぐぇぇ……」
抱きついた腕に力を込めると、悲痛なうめき声が聞こえてくる。
ふふふ、この瞬間の為に訓練したのよこの、P(ポエマー)M(迷惑)O(王太子)!
「ほ、骨が、息が……!」
へえ、骨あるんだ。
「ああ……セレナ、良かったな父も嬉しいぞ」
「セレナ……何て幸せそうに……」
いつの間にか公爵夫人まで来て、一緒に演技してくれている。晴れやかな笑顔ですね。王太子が苦悶しながら睨んでいるのに、一向に気にしていない。
「だ……だ、ず、げ……!!」
王太子サマが、苦しい息で助けを求めている。
……何か物足りないけど、公爵達がアイコンタクトで“一旦引け”と示しているから仕方なく拘束を解いた。
自由になった王太子サマが、ふーっ、って呼吸を整えて言ったのはこれだ。
「ち、違う! お前はセレナじゃない!! セレナはこんなのではない」
え、バレた?
「何を仰られます殿下」
ビビったマリアンヌをフォローするように、公爵が断言する。
「この子は紛れもなく我が愛娘であり、貴方様の愛を受けているセレナです。……ちょっと変りましたが」
公爵夫人も一緒に言う。
「ええ、この子は私がお腹を痛めて産んだ娘のセレナですわ。……ちょっと変りましたが」
「ちょっとどころじゃない!!」
変わるにも程がある!! と顔にデカデカと書いている王太子に公爵は断言する。
「全ては殿下への愛、故ですよ」
王太子がピタ、と口を閉じた。
「悲しみから心を閉ざした娘は、その空になった心を埋めるように、ひたすら過食を繰返しました。結果今のように……」
「寂しかったのですわ、殿下……!」
か細い声で言い、再度ギュ~ッと絞めていくマリアンヌ。
公爵夫人は、マリアンヌが見たこともないような零度の微笑みを王太子に向ける。
「真実の愛などとロマンチストな殿下は勿論、娘が変わった程度で心変わりなどされませんわね? さ、あなた♪後は若い2人だけで」
「お……っそうだな。殿下、気が効かず申し訳ありません。ではごゆっくり」
夫妻は同時に立ち上がり、そそくさと部屋を出て行く。出て行く間際、マリアンヌにアイコンタクトをする。
――うまくヤるのよ?
マリアンヌは殿下の背後で頷いた。
――はい!!
「待て――!!」
初めて見た王太子に、マリアンヌが下した評価は――“見た目は良い”だった。
肌は綺麗で顔立ちも良い、体型も痩せ型で見苦しさがない。上質といえば上質だ。
が……あくまでマリアンヌ自身の感想はこれだ。
――骨が無い。
自分を一目見てからずっと青い顔をしている男からは信念のようなものが見つからない。どうやら真実の愛というものは、感染されたら骨がやられるらしい。
シダー男爵領の資源は豊かだ。それもこれも祖先や今までの領主が、現状に甘えず積み重ねてきた努力の結果だ。しかしそれを脅かし、食い物にしようとする輩はいる。それらから民を守る為にと、マリアンヌは両親や周りの大人達から色々教え込まれてきた。人を見抜け、見かけや言葉に騙されるな、と。
そんな彼女が下した評価がそれだった。間違っていたとは思わないし、間違っていなかった。
肥満を強調するように、体を縦にして応接間に入る。いや実際そうでないと入れなかった。今日の日の為に用意した“肥満を強調するドレス”のせいで。
公爵家御用達の仕立屋が、今回の作戦用に考案した特別製。小太りなマリアンヌを更に膨張するべく作られた特別製だ。あまり目立たないところに空気穴がある。
“こうやって空気を入れるんです。ただし入れ過ぎはいけません、破裂してしまいます”
仕立屋に感謝だ。効果は抜群だ。
王太子の、真っ青に引きつった顔が、証明してくれている。
マリアンヌは王太子に秒で近付くと、
「お待ちしておりました、殿下!」
力いっぱい、抱きしめてやった。
「ぐぇぇ……」
抱きついた腕に力を込めると、悲痛なうめき声が聞こえてくる。
ふふふ、この瞬間の為に訓練したのよこの、P(ポエマー)M(迷惑)O(王太子)!
「ほ、骨が、息が……!」
へえ、骨あるんだ。
「ああ……セレナ、良かったな父も嬉しいぞ」
「セレナ……何て幸せそうに……」
いつの間にか公爵夫人まで来て、一緒に演技してくれている。晴れやかな笑顔ですね。王太子が苦悶しながら睨んでいるのに、一向に気にしていない。
「だ……だ、ず、げ……!!」
王太子サマが、苦しい息で助けを求めている。
……何か物足りないけど、公爵達がアイコンタクトで“一旦引け”と示しているから仕方なく拘束を解いた。
自由になった王太子サマが、ふーっ、って呼吸を整えて言ったのはこれだ。
「ち、違う! お前はセレナじゃない!! セレナはこんなのではない」
え、バレた?
「何を仰られます殿下」
ビビったマリアンヌをフォローするように、公爵が断言する。
「この子は紛れもなく我が愛娘であり、貴方様の愛を受けているセレナです。……ちょっと変りましたが」
公爵夫人も一緒に言う。
「ええ、この子は私がお腹を痛めて産んだ娘のセレナですわ。……ちょっと変りましたが」
「ちょっとどころじゃない!!」
変わるにも程がある!! と顔にデカデカと書いている王太子に公爵は断言する。
「全ては殿下への愛、故ですよ」
王太子がピタ、と口を閉じた。
「悲しみから心を閉ざした娘は、その空になった心を埋めるように、ひたすら過食を繰返しました。結果今のように……」
「寂しかったのですわ、殿下……!」
か細い声で言い、再度ギュ~ッと絞めていくマリアンヌ。
公爵夫人は、マリアンヌが見たこともないような零度の微笑みを王太子に向ける。
「真実の愛などとロマンチストな殿下は勿論、娘が変わった程度で心変わりなどされませんわね? さ、あなた♪後は若い2人だけで」
「お……っそうだな。殿下、気が効かず申し訳ありません。ではごゆっくり」
夫妻は同時に立ち上がり、そそくさと部屋を出て行く。出て行く間際、マリアンヌにアイコンタクトをする。
――うまくヤるのよ?
マリアンヌは殿下の背後で頷いた。
――はい!!
「待て――!!」
2
あなたにおすすめの小説
真実の愛のおつりたち
毒島醜女
ファンタジー
ある公国。
不幸な身の上の平民女に恋をした公子は彼女を虐げた公爵令嬢を婚約破棄する。
その騒動は大きな波を起こし、大勢の人間を巻き込んでいった。
真実の愛に踊らされるのは当人だけではない。
そんな群像劇。
ただの婚約破棄なんてため息しか出ませんわ
アキナヌカ
恋愛
私、ユディリーア・パヴォーネ・スカラバイオスは、金の髪に美しい蒼い瞳を持つ公爵令嬢だ。だが今は通っていた学園の最後になる記念の舞踏会、そこで暇を持て余して公爵令嬢であるのに壁の花となっていた。それもこれも私の婚約者である第一王子が私を放っておいたからだった、そして遅れてやってきたヴァイン様は私との婚約破棄を言いだした、その傍には男爵令嬢がくっついていた、だが私はそんな宣言にため息をつくことしかできなかった。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
真実の愛ならこれくらいできますわよね?
かぜかおる
ファンタジー
フレデリクなら最後は正しい判断をすると信じていたの
でもそれは裏切られてしまったわ・・・
夜会でフレデリク第一王子は男爵令嬢サラとの真実の愛を見つけたとそう言ってわたくしとの婚約解消を宣言したの。
ねえ、真実の愛で結ばれたお二人、覚悟があるというのなら、これくらいできますわよね?
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる