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第二章
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善光寺下から、北松本駅で降りる。駅前からのびる大きな道路をひたすら真っ直ぐ進むと、目的地の松本城へたどり着ける解りやすい道だ。とり敢えず、また駅のロッカーへ荷物を預けた。
葉月は、鉄堅が差し出すスマホの地図を見ながら、道を確認する。
「松本城、この道真っ直ぐ行って左か」
「そうだね、広い道で歩きやすいけど……日陰が無いね」
「うーん、まぁ、仕方ないよな、俺さ、長野って林檎の木がずーっと生えてる印象だったわ」
テレビで昔に見た話だが、長野の何処かの町で道に林檎の木が立ち並んでいて、綺麗だなと思ったのだ。
「飯田市かな?昔、ヨーロッパの林檎並木から感銘を受けた学生達が、火事でさびしくなってしまった町の、街路樹に選んで植えたみたいな内容のテレビを見たことがあるよ」
「あ、それだわ、てか、それ俺も見てた」
思いがけず、同じテレビを見てたことに驚く。趣味も性格もまるで違うのに、心に残ったものが同じというだけで、なんでこんなにドキドキしちゃうんだろ。
「なんかさ、こういう時お前と運命感じるよな」
「葉月ちゃんっ!! 」
鉄堅が、キラキラとした目で葉月を見つめてきたので、葉月は自分が迂闊に運命なんて言ったことを恥ずかしく思った。
「や、あの、まぁ、さ、行こ」
「うん。僕もね、いま、やっぱり葉月ちゃんと僕は運命の相手なんだって思ったところだったんだよ、だってね、チャンネルが12もあって、そのなかで同じひに、同じ時間で、同じ番組を見てたなんて……あぁ運命」
「……うん」
感動にうち震えている所に、水を差したくないが、子供が見る番組って割りと似たり寄ったりだけどなと内心思いつつ、真っ直ぐ伸びる道を二人で歩く。予想通り、暑いけど、夏だから仕方ない。
「夏の昼に太陽直下やべぇな」
「溶けちゃいそうだね」
「うちのさ、学校のやつで、男でも日傘とかさして歩いてるやついてさ」
「僕の学校の生徒、ほとんどさしてるよ」
「マジか……」
日傘はなんとなく、日焼けをしたくない女子がさすイメージだったが、さすが、仰暒、見かけやプライドより効率重視なんだな。
「そういうの、いいよな、かっこいいと思う」
「え?まって、普通の傘ならある」
「いや、お前がかっこいいとかそういう話じゃ……まぁ、さすか」
「ちょっとでも、ましかもね」
鉄堅がさした雨傘に二人で入る。光が遮られるだけで、だいぶ涼しい。
「これ、良いな……ちょっとビジュアル的に変だけどな、男二人でこんな晴れた日に傘に入ってて、あはは」
「ふふっ、僕、初めての葉月ちゃんとの相合傘がまさか、夏の晴れの日だとは思わなかったよ」
「初めてかぁ?」
「初めてだよ」
ふふって、笑ってるけど、おそらく、昔、雨が降る度に鉄堅は何度も俺に傘を差し出してきたはずだ。俺は、受け取ることも、一緒に入ることもなかった。
「お前は昔から……俺に差し出してばっかりだな」
「え?」
「たぶん、お前がかまってくるの、鬱陶しいと思いながら俺、絶対嬉しかったと思う……父さん忙しかったし、俺の世話なんか誰も……お前だけがいつも、いつでも、気にかけてくれて」
鉄堅だけが、いつもそばにいてけくれた。どんなに反発しても、来るなと言っても、見放さず、雨が降れば傘を差し出し、風がふけば、寒くないかと聞かれ、雪がふれば上着を持って追いかけてくる、そんなやつだった。
「ありがとな、そばにいてくれて」
「葉月ちゃん……そんな、僕が居たくていただけだよ、葉月ちゃんが濡れたり寒かったりするのが嫌だったから」
こいつは──。
「ばか、普通、子供なんて、自分が濡れたり寒いのが嫌なんだよ」
我が儘な生き物なんだから、自分が大切にされることが一番な時期なのだから。
それなのに、ずっと同じ気持ちで、俺なんかのことを優先してくれてたのは鉄堅だけだ。ブランコの順番も、おやつの大きい方も、プレゼント選ぶときも……いつもいつも、先に選んでって。
気が弱いと思ってた、自主性がないと思ってた。全然違った。
鉄堅は、ただ、俺に優しいだけだった。ずっと細心の注意を払って、俺を優先して、大切にして、俺を喜ばせようと一生懸命で。
「俺、お前がいて良かったって、心の底から思うよ」
「……」
鉄堅が、俺の言葉に驚いて、カアッと顔を赤くする。耳まで赤い。そんなの見てたら、俺までなんか、赤くなってきた。
晴天の中、相合傘で、真っ赤になって歩く。夏だから、暑いからだと、周りの人は思うかな。
葉月は、鉄堅が差し出すスマホの地図を見ながら、道を確認する。
「松本城、この道真っ直ぐ行って左か」
「そうだね、広い道で歩きやすいけど……日陰が無いね」
「うーん、まぁ、仕方ないよな、俺さ、長野って林檎の木がずーっと生えてる印象だったわ」
テレビで昔に見た話だが、長野の何処かの町で道に林檎の木が立ち並んでいて、綺麗だなと思ったのだ。
「飯田市かな?昔、ヨーロッパの林檎並木から感銘を受けた学生達が、火事でさびしくなってしまった町の、街路樹に選んで植えたみたいな内容のテレビを見たことがあるよ」
「あ、それだわ、てか、それ俺も見てた」
思いがけず、同じテレビを見てたことに驚く。趣味も性格もまるで違うのに、心に残ったものが同じというだけで、なんでこんなにドキドキしちゃうんだろ。
「なんかさ、こういう時お前と運命感じるよな」
「葉月ちゃんっ!! 」
鉄堅が、キラキラとした目で葉月を見つめてきたので、葉月は自分が迂闊に運命なんて言ったことを恥ずかしく思った。
「や、あの、まぁ、さ、行こ」
「うん。僕もね、いま、やっぱり葉月ちゃんと僕は運命の相手なんだって思ったところだったんだよ、だってね、チャンネルが12もあって、そのなかで同じひに、同じ時間で、同じ番組を見てたなんて……あぁ運命」
「……うん」
感動にうち震えている所に、水を差したくないが、子供が見る番組って割りと似たり寄ったりだけどなと内心思いつつ、真っ直ぐ伸びる道を二人で歩く。予想通り、暑いけど、夏だから仕方ない。
「夏の昼に太陽直下やべぇな」
「溶けちゃいそうだね」
「うちのさ、学校のやつで、男でも日傘とかさして歩いてるやついてさ」
「僕の学校の生徒、ほとんどさしてるよ」
「マジか……」
日傘はなんとなく、日焼けをしたくない女子がさすイメージだったが、さすが、仰暒、見かけやプライドより効率重視なんだな。
「そういうの、いいよな、かっこいいと思う」
「え?まって、普通の傘ならある」
「いや、お前がかっこいいとかそういう話じゃ……まぁ、さすか」
「ちょっとでも、ましかもね」
鉄堅がさした雨傘に二人で入る。光が遮られるだけで、だいぶ涼しい。
「これ、良いな……ちょっとビジュアル的に変だけどな、男二人でこんな晴れた日に傘に入ってて、あはは」
「ふふっ、僕、初めての葉月ちゃんとの相合傘がまさか、夏の晴れの日だとは思わなかったよ」
「初めてかぁ?」
「初めてだよ」
ふふって、笑ってるけど、おそらく、昔、雨が降る度に鉄堅は何度も俺に傘を差し出してきたはずだ。俺は、受け取ることも、一緒に入ることもなかった。
「お前は昔から……俺に差し出してばっかりだな」
「え?」
「たぶん、お前がかまってくるの、鬱陶しいと思いながら俺、絶対嬉しかったと思う……父さん忙しかったし、俺の世話なんか誰も……お前だけがいつも、いつでも、気にかけてくれて」
鉄堅だけが、いつもそばにいてけくれた。どんなに反発しても、来るなと言っても、見放さず、雨が降れば傘を差し出し、風がふけば、寒くないかと聞かれ、雪がふれば上着を持って追いかけてくる、そんなやつだった。
「ありがとな、そばにいてくれて」
「葉月ちゃん……そんな、僕が居たくていただけだよ、葉月ちゃんが濡れたり寒かったりするのが嫌だったから」
こいつは──。
「ばか、普通、子供なんて、自分が濡れたり寒いのが嫌なんだよ」
我が儘な生き物なんだから、自分が大切にされることが一番な時期なのだから。
それなのに、ずっと同じ気持ちで、俺なんかのことを優先してくれてたのは鉄堅だけだ。ブランコの順番も、おやつの大きい方も、プレゼント選ぶときも……いつもいつも、先に選んでって。
気が弱いと思ってた、自主性がないと思ってた。全然違った。
鉄堅は、ただ、俺に優しいだけだった。ずっと細心の注意を払って、俺を優先して、大切にして、俺を喜ばせようと一生懸命で。
「俺、お前がいて良かったって、心の底から思うよ」
「……」
鉄堅が、俺の言葉に驚いて、カアッと顔を赤くする。耳まで赤い。そんなの見てたら、俺までなんか、赤くなってきた。
晴天の中、相合傘で、真っ赤になって歩く。夏だから、暑いからだと、周りの人は思うかな。
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