胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第二章

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鉄堅と、葉月は、エレベーターから降りて、クーラーの効力が切れた下界へとでた。ムワンとした動かない空気。ぬるい膜の中へ入っていくようだった。

葉月が、余りの暑さに、げんなりしながら鉄堅へ愚痴る。

「今日はやけに暑いな、なんか名古屋って暑くない?気のせいかな」
「平野だからかなフェーン現象と、ヒートアイランド現象と」
「教科書で読んだ気がする、偏西風とか貿易風とか……あと、なんだっけなアレだよあれ、えーっと、うう気持ち悪い」
「モンスーン?」

あっと、葉月は、鉄堅を振り向いた。

「モンスーン、モンスーン!!それそれ、モンスーン……何語だ」
「アラビア語だよ」
「へぇ」
「季節風のことで、夏は海から陸、冬は陸から海へ、季節によって風向きが変わる風のことだよ」
「へぇーー鉄堅はよく覚えてるな、もし子供がいたら、塾要らずだな」
「え?」
鉄堅が、少し複雑な顔をして、葉月をチラリとみた。
葉月は、ん? と小首を傾げたが、ついさっき、子供がいたらなんて発言をしてしまったことに、ハッと気づいた。
まだ、結婚もしておらず、ツガイにもなっておらず……で、子供なんて。暑さのせいで、頭がなんか変。

「あ、いや、あの、もしだから、もし」
「うん……」
「もーーはずっ、忘れろ」
「うん……」

鉄堅が、妙にニコニコしているので、葉月は、照れて嫌そうな顔をして、ズンズンと、名古屋の真っ直ぐに伸びた道を歩いた。


宿に着くと、鉄堅が受付へ向かう。こじんまりとした無難なホテルだが、客がちらほらとロビーを行き交っているので、中々の人気のようだ。

「いらっしゃいませ、ご予約名をお伺いしてもよろしいですか?」

受付のおねぇさんが、にこりと微笑む。鉄堅は、慣れた様子で受け答えをしてゆく。

すぐに、ホテルの制服姿の若い従業員が、カートに荷物を預かりに来てくれて、葉月と鉄堅は背負っていた荷物を渡した。

「ご案内します」
「はい」

少し古めのエレベーターで、ガコンガコン時々止まるのは何故だろうか。緊張感のあるエレベーターで3階に着くと、突き当たりの部屋の扉が開かれた。

「こちらでございます」
「ありがとうございます」

二人が部屋に入ると、荷物を置いてくれた従業員さんが、軽く部屋の説明をして去っていった。

部屋は六畳程の広さにベットが二台で、まさに寝るだけの部屋という感じ。テレビは壁掛けで、窓際奥にひとりがけのソファーとテーブルが有り、入り口付近に洗面所兼シャワールーム兼トイレが有るだけの簡素なへやだった。

学生二人が泊まるには充分だ。むしろ、京都が豪華すぎた。少しだけがっかりしたのは仕方ないとして、ただクーラーがガンガンに部屋を冷やしていてくれることがありがたかった。

「荷物置いてコンビニに何か買いにいこうぜ」
「そうだね」

「はぁ、クーラーって偉大な発明だよなぁ……涼し~一気に身体が楽になる」
「本当だね、今日は特に暑かったね、テーマパーク行った後ずっと電車に乗っていたし、寒暖の差で疲れたのもあるね」

「だな。んーーあんまりのんびりしてると、寝ちゃいそう、さっきすぐそこにコンビニあったから、さっさと行くか」
「うん」

このままベットに埋もれて目を閉じてしまう前に、まず必要な行動をとること。団体行動で目的を速やかに達成するには協力が大事なのだ。二人は、またあの暑い空気の中へ繰り出す億劫さに負けず、財布と部屋の鍵だけ持って、コンビニへ向かった。

狭い部屋に二人きり、まだそのドキドキの序章は始まったばかり。






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