胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

文字の大きさ
74 / 120
第二章

72

しおりを挟む
さて、またしばし電車の旅だ。青春18きっぷも五枚つづりが、後一枚になった。

「後一枚か~なんか、あっという間だったな」
「本当だね、僕はこの旅を一生の思い出として生きていくよ」
「……大袈裟な、また来年もどっかいくだろ」
「来年も!? 」

未来の約束がこんなに嬉しいなんて。あぁ、部活やってなくて良かった、全ての休日を全部葉月ちゃんの予定に全フリ出来る。

そばに居られなかった時は、部活で同じ空間に居ることだけが救いだったけど、今となっては休みの予定を奪う部活など必要ない。

人知れず、鉄堅がガッツポーズを決めていると、葉月が、電車が来たことを告げる。

「おい、鉄堅、これに乗るんだよな?」
「そうだよ、中津川まで乗って、塩尻でまた、乗り換えて、長野の観光をしようか」
「うんうん」

とりあえず、座る座席を二人で確保して、さらにはさっき買い求めた、空気を入れるクッションなるものを膨らます。

「ぷーーっ、ぷーーっ、どう?こんなもんかな」
「貸してみ」

葉月に手渡すと、葉月の尻にそれはひかれた。なんて幸せなクッションなんだ。世に生まれてきて数年?もしくは数時間で葉月の尻にしかれるなんて、羨ましい。

鉄堅がクッションに嫉妬している間に、葉月はもう少しだけぷーーっ、と空気を入れて調整して、満足した。

「よし、完璧、1時間交代で使おう」
「ずっと葉月ちゃんが使えば良いよ」
「だめ、そーゆーのは、ダメ、平等に」
「うん」

僕としては葉月ちゃんの尻さえ守れれば、僕の尻など血が出ようが、破けようがどうでもいいのだが。葉月ちゃんは優しいから仕方ない。

塩尻あたりの、マップを開いて、計画を立てることにした。

「俺、ちょっと城フェチになってきたかもしれない、松本城行きたい」
「だね、後は、善光寺が有名だけど、松本からだと二時間くらいかな」
「迷うなそれは」

「でもさ、名古屋から松本までだいたい3時間半くらいだろ?今、8時だから12時30分に松本ついて、お城みて、まぁ、二時間くらいで善光寺行けば……」

「じゃぁ、いっそ、最初に善光寺行ってしまう?その方がホテルが塩尻だから楽かも」

降りてまた乗ってとするなら、シンプルな方が良い。ただ、城の天守閣をみるには16時までには松本駅に着きたいところだ。

「じゃ、そうする」
「善光寺は、お蕎麦が有名だよ」
「蕎麦、最高だな、やばい、今すぐ食べたい」
「葉月ちゃん、お蕎麦好きだったんだね」
「昔は苦手だったけど、なんか去年の夏に急にハマってさ、あとウドンも好き」

「ラーメンも好きだもんね、麺が好きなんだね」
「そうかも、スパゲッティも好きだし」

はぁ、麺類好きな葉月ちゃん可愛い。ちゅるちゅる麺をすすってるだけで、最高だよ。麺好き男子コンテストがあったら、即優勝間違いない。

「でも、葉月ちゃんが、あまり有名になったら困るから……」
「は?何で麺を食べると有名になるんだよ?大食いとか?それは、無理だぞ」
「違うよ葉月ちゃん」

葉月は、またこてりと首を傾げる。大食い以外で有名になれることあったか?ワンコ蕎麦早食いか?そっちだったか?でも、どっちにしろ、無理だろ。そんなにいっぱい食べられないし。

鉄堅は、時々俺に、意味不明な要求を抱いてる時あるよな……まぁ、鉄堅だし、仕方ないか。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【短編】初対面の推しになぜか好意を向けられています

大河
BL
夜間学校に通いながらコンビニバイトをしている黒澤悠人には、楽しみにしていることがある。それは、たまにバイト先のコンビニに買い物に来る人気アイドル俳優・天野玲央を密かに眺めることだった。 冴えない夜間学生と人気アイドル俳優。住む世界の違う二人の恋愛模様を描いた全8話の短編小説です。箸休めにどうぞ。 ※「BLove」さんの第1回BLove小説・漫画コンテストに応募中の作品です

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。 一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。 ✤✤

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

処理中です...