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第二章
番外編 初めてのお泊まり ⑥
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鉄堅と葉月は、かくれんぼやら、おいかけっこ、ボールの当てあいなんかで鉄堅にしては奇跡的に仲良く遊んだ。
その後は、少し小腹が空いたので秘密基地を作ってその中でお菓子を食べようと、ソファーに毛布をかけて簡易テントを作った。
テントのなかでお菓子を食べていると、しだいに葉月は、うつらうつらと舟をこぎだし、お菓子を食べながらパタンと寝てしまった。
鉄堅はそっとお菓子の袋を葉月の手からとった。それを机の上において、眠った葉月をほの暗いテントのなかでじっと見ていた。くぅくぅと聞こえる寝息がとても可愛らしい。長いまつげが、一向に開く気配はなく、健やかな寝顔を惚れ惚れと見つめる。ずっとこんな風に暮らせたら良いのに。
カチャカチャと、玄関が開く音が聞こえ、鉄堅は毛布の中からもぐりでた。葉月の父がちょうど帰ってきたところだった。
「鉄堅くん、こんばんは、遅くなってごめんね」
「お帰りなさい、お邪魔してます」
「葉月は何処へいったかな?」
「この中で寝てます」
ソファーにかかった毛布の中で、すやすやと寝ている葉月を見て、お父さんはやれやれと笑った。
「困った子だね、お客様をおいて寝ちゃうなんて、ちゃんとおもてなしはできたのかな」
「はい、いっぱいちゃんとしてもらいました!」
「そっか、ならよかった。お風呂のしたくをしてくるから、二人で後で入りなさい」
「エッ!」
二人で入る!? そんな、そんなことしても良いのかな。入りたい気持ちが100パーセントだけれど、鉄堅は、ぷるぷると首をふった。
「おじさん、あのね、僕……僕、アルファなんです、だから葉月ちゃんとお風呂には入れません」
「おや、もうバース判定がでたのかい?」
「僕のは早い段階から解ってて」
「そうだったんだね、でも、アルファだからって、気にすることないんじゃないか? まだ君たちは小学生なんだし」
「僕、葉月ちゃんのことが好きだからだめです、おじさんだって好きな人とお風呂に入るの恥ずかしいでしょ?」
葉月のお父さんは、おやおやという顔をして、頷いた。
「確かにそうだね」
穏やかに頷くその顔が少しさびしそうだった。
「おじさんは、葉月ちゃんのお母さんいなくてさびしくないの? ぼく、好きな人のそばにいられないのさびしいよ」
「そうだね……もちろん、さびしいよ、だけど私達の関係は複雑でね、普通の恋ではなかったから……私は彼女を愛していたけど、彼女はたぶん、私とは違う感情を持っていたからね、一緒にずっとはいられなかったんだよ」
「僕……葉月ちゃんとずっとずっと一緒にいたいです」
「ありがとう鉄堅くん、だけど葉月はまだ君への感情が育ってない、待ってやってくれるかい? 私が思うに、きっと葉月はそのうち鉄堅君の優しさに気づくから」
それはまるで、何もかもを見透した賢者の言葉の様だった。鉄堅の報われない想いに光が射し、心に希望が溢れた。
「はいっ! 待ちます、いくらでも待ちます」
「うん、お願いします、じゃ、先に風呂に入ろうか」
毛布のテント、まるで繭のなかで寝てる妖精みたいな葉月をおいて、鉄堅は先に風呂へはいった。葉月の普段使うシャンプーの銘柄とパッケージを覚えて、後で買ってもらおう。
待っている、これから先もずっと待ってる。葉月に好きになってもらえる未来があるなら、その日をずっと待ってる。鉄堅は、うきうきと湯船につかった。
その後は、少し小腹が空いたので秘密基地を作ってその中でお菓子を食べようと、ソファーに毛布をかけて簡易テントを作った。
テントのなかでお菓子を食べていると、しだいに葉月は、うつらうつらと舟をこぎだし、お菓子を食べながらパタンと寝てしまった。
鉄堅はそっとお菓子の袋を葉月の手からとった。それを机の上において、眠った葉月をほの暗いテントのなかでじっと見ていた。くぅくぅと聞こえる寝息がとても可愛らしい。長いまつげが、一向に開く気配はなく、健やかな寝顔を惚れ惚れと見つめる。ずっとこんな風に暮らせたら良いのに。
カチャカチャと、玄関が開く音が聞こえ、鉄堅は毛布の中からもぐりでた。葉月の父がちょうど帰ってきたところだった。
「鉄堅くん、こんばんは、遅くなってごめんね」
「お帰りなさい、お邪魔してます」
「葉月は何処へいったかな?」
「この中で寝てます」
ソファーにかかった毛布の中で、すやすやと寝ている葉月を見て、お父さんはやれやれと笑った。
「困った子だね、お客様をおいて寝ちゃうなんて、ちゃんとおもてなしはできたのかな」
「はい、いっぱいちゃんとしてもらいました!」
「そっか、ならよかった。お風呂のしたくをしてくるから、二人で後で入りなさい」
「エッ!」
二人で入る!? そんな、そんなことしても良いのかな。入りたい気持ちが100パーセントだけれど、鉄堅は、ぷるぷると首をふった。
「おじさん、あのね、僕……僕、アルファなんです、だから葉月ちゃんとお風呂には入れません」
「おや、もうバース判定がでたのかい?」
「僕のは早い段階から解ってて」
「そうだったんだね、でも、アルファだからって、気にすることないんじゃないか? まだ君たちは小学生なんだし」
「僕、葉月ちゃんのことが好きだからだめです、おじさんだって好きな人とお風呂に入るの恥ずかしいでしょ?」
葉月のお父さんは、おやおやという顔をして、頷いた。
「確かにそうだね」
穏やかに頷くその顔が少しさびしそうだった。
「おじさんは、葉月ちゃんのお母さんいなくてさびしくないの? ぼく、好きな人のそばにいられないのさびしいよ」
「そうだね……もちろん、さびしいよ、だけど私達の関係は複雑でね、普通の恋ではなかったから……私は彼女を愛していたけど、彼女はたぶん、私とは違う感情を持っていたからね、一緒にずっとはいられなかったんだよ」
「僕……葉月ちゃんとずっとずっと一緒にいたいです」
「ありがとう鉄堅くん、だけど葉月はまだ君への感情が育ってない、待ってやってくれるかい? 私が思うに、きっと葉月はそのうち鉄堅君の優しさに気づくから」
それはまるで、何もかもを見透した賢者の言葉の様だった。鉄堅の報われない想いに光が射し、心に希望が溢れた。
「はいっ! 待ちます、いくらでも待ちます」
「うん、お願いします、じゃ、先に風呂に入ろうか」
毛布のテント、まるで繭のなかで寝てる妖精みたいな葉月をおいて、鉄堅は先に風呂へはいった。葉月の普段使うシャンプーの銘柄とパッケージを覚えて、後で買ってもらおう。
待っている、これから先もずっと待ってる。葉月に好きになってもらえる未来があるなら、その日をずっと待ってる。鉄堅は、うきうきと湯船につかった。
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