胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第二章

番外編 二十歳の夜 ④

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そんなこんなで、葉月の二十歳の誕生日前日、結局二人はいつも通りの塩尻の温泉宿へと向かう。二泊三日の小さな旅。高級ホテルのスイートなんかも、提案してみたけれど、葉月ちゃんは、毎年あそこへ行かないと落ち着かないそうで……もはや、お盆に帰る実家みたいな感覚なのだろうか。

例によって、電車に揺られながらの旅である。鉄堅は車の免許を取得していたので、車で行くことも提案してみたが、やはり、このいつもの電車がいいとのこと。変わらないのが良いと。

「葉月ちゃんの休みがもっと取れたら良かったのにね」
「しゃぁねーよ、夏休みって親子ずれ多くて忙しいんだから。俺の誕生日って8月22日だろ、ちょうど夏休みが終わる一週間前で、旅行とか行った帰りにうちによってくれるとか、イベントに疲れたお母さんが子供連れてかなり来るんだよ」
「なるほど……」
「あとなんか、子供とか俺にちっちゃいお土産とかくれたりして可愛いんだよなーー地域密着型店舗の特権だよな」

葉月ちゃんて、ほんと誰にでも好かれるの、そりゃこんなに可愛い顔で、にこにこしてありがと、なんて言われたら、初恋泥棒も良いとこだよ。あぁ、僕の葉月ちゃんなのに!

隣の手をぎゅっとつかんだら、葉月ちゃんがこてって、僕に頭を預けてもたれてくれた。はぁ、嫉妬が消えて幸せで満たされる。

誰も僕から葉月ちゃんを奪わないで欲しいと願う。だって本当に心のそこから大好きなんだ。葉月ちゃんの何もかもを愛してる。愛して愛して愛してる。この大切な人を誰かに奪われたらきっともう生きてなんかいられない。

毎年変わらない電車旅行。葉月ちゃんと僕の下には空気クッション、あの旅の翌年もう一つ買った。やはり、大事だからね色々とね。

甲府を抜けたあたりから、車窓の外に山が連なる。青く生き生きとした木々に癒される風景。山は昔から信仰の対象だそうだけれど、本当に人の心を清らかにしてくれる。

僕の中の邪心も鎮まり……まるで16歳のあの頃に戻ったような気持ちになる。初めて葉月ちゃんと旅に出たあの頃に。

幼かったな。と思う。妊娠に関する知識も浅くて。今は、葉月ちゃんの体調の全てを把握。もうあんな風に動揺することもない。ヨーグルト食べてたって、僕はもう知っているんだぞと、余裕のある眼差しも向けられるし。

大人になってしまったな。もう二十歳だしね。あれから4年、あっという間に過ぎ去ったけれど、変わらず僕たちは愛し合っている。むしろ、想いは強くなる一方だ。大好き葉月ちゃん。

葉月の頭の上にぴろんとした、寝癖の一房をみつめ、あぁ、なんて可愛い寝癖なんだろうと思う。

髪が柔らかいから、すぐに直るけど……小さな変化がレアで写真に残したい。後でとろう。

宿についたら、カップル夫婦割引についている、最近できた貸し切り風呂へ入ろう。僕たちが通うようになってから、若いお客様向けにって、造られたみたい。増設だから、ちょっと、離れになるけど、二人きりで入れるのは嬉しいし安心だ。

葉月ちゃんの裸体を誰にも見せたくない、思い起こせば、学校のプールの時間本当に嫌だった。友達と裸でじゃれる葉月ちゃんを遠くから見つめ、嫉妬で死ぬかと思った。触るなふれるなって、ずっと睨んでた。でもあの頃は……僕にそんな権利なくて。

僕こそが見てはいけなくて。僕こそが触ってはいけなくて。

はぁ。

許してもらえて、よかった。好きになってもらえてよかった。

奇跡みたいな毎日の繰り返しが、僕にとってどれほど嬉しいしいことか。愛していいって、許してもらえることがどれほど得難いことか。幸せだよ、葉月ちゃん。葉月ちゃんも幸せだといいな。僕なんかで、本当に満足してくれてるかな。

失えなくてこわい。離れられなくてこわい。好きすぎてこわい。けど、信じてる。葉月ちゃんが、ずっといていいって言ってくれたから。俺だけをみてろっていってくれたから。みてる。これからも、ずっとずっと。






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