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第一章
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二度と近づかないだと? 鉄堅が言った言葉に、足が自然と止まった。
二度とって、本気で? もしこのまま、家について、俺を送り届けたら、もう二度と会わないって言うのか?
「そんなこと」
葉月は、振り向いた。振り向かれると思ってなかった鉄堅は、葉月の烈火の如く怒り狂った瞳を見て息を飲んだ。
「そんなこと、お前にできるのかよっ!? 」
できるのか? 本気でもう二度と会わないなんて、本当に? 二度とっていうのは、一生ってことなんだぞ。
もう一生、死ぬまで、死んでからも、墓にすら来ないで、もう会わないって事だぞ。
お前に……できないだろ? できないって言えよ。
鉄堅は暗い瞳で、地面に瞳を下げた。じっと、地面をみてる。その行為が更に葉月をムカつかせた。
「何で俺を見ないんだよ、俺をみて、会わないなんて、できないって言えよっ! 言わないなら、もう、一生、俺に会わないで生きていくんだな、解ったよ、じゃぁここでもう終わりにしよう、家まで送ったって送らなくったって、もうこの先一度も会わない人間のことなんか気にしたって仕方ないだろ、俺が困ろうが、怪我しようが、死のうがどうだっていいだろっ! だって、もう二度と会わないんだもんな! 死ぬまで、1度も、会わないんだよな? もう帰れ! そんでもう一生、俺と関わらないで生きていけよ」
「……」
怒鳴り散らした俺の言葉に、鉄堅は下を向いて耐えている。ぎゅっと、瞳を閉じて、そして身体はふるふると震えていた。
「……できない」
「聞こえないッ!」
「できない、葉月ちゃんに一生会わないで生きていくなんて、できない、できないよ、そんなの、嫌だ」
ぽろりと、鉄堅の瞳から涙がこぼれた。
「き、嫌われても、この先、君がいない人生なんて、僕には考えられない……葉月ちゃんに関われないなんて嫌だ、嫌だけど、葉月ちゃんは、僕がいたら、迷惑でしょ、ずっと迷惑だったでしょ、好きな人に迷惑だって思われてるのに、そばになんて、どうやって居たらいいの? 嫌われてるのに、迷惑だって解ってて、居れるほど僕だって強くない」
ぼろぼろ泣きながら、鉄堅が葉月に向かって叫んだ。
「そばに居たいに決まってる! 決まってるだろ、好きなんだ、ずっと好きだったのに」
苦しげに泣く鉄堅に、葉月は、キッと睨み返した。
「俺は、今日、お前にお礼を言うために来た、お前にお礼をいって、仲直りして、もっと仲良くなりたくて、メアドだって聞こうと思ってたし、ラインだって交換しようと思ってた、だけど、お前が、俺を邪険にしたんだろ、何で来たって、怒鳴って、早く帰れって言った」
こっちだって、言い分がある。泣いた方が許されると思うなよ、俺だって全部ぶちまけてやる、もう一生会わないって言うなら、言いたいこと全部いってやる。
「俺は、仲良くなりたくて来たのにッ!」
鉄堅は、信じられないって顔で、目を大きく見開いて、葉月の話を聞いてる。
「葉月ちゃ」
「それなのに、お前は二度と会わないんだろ」
「ごめん、嫌だ、二度と会わないなんて嫌だ、ごめん」
葉月はずんずんと、鉄堅に近づいて、その胸ぐらを両手で掴んだ。
「じゃぁもう二度と言うな、俺に二度と会わないなんて言うな!!」
「うん……言わない」
鉄堅が、葉月の両手をぎゅっと握りしめた。大きな手に、包み込まれて、胸元を掴む手を少しだけ緩めた。鉄堅は今度はしっかりと、葉月を見つめた。
「もう絶対言わない、葉月ちゃんに会えないなんて、嫌だ、ごめん、ごめんね、僕、葉月ちゃんなしでは生きていけないのに、ごめん」
ぎゅっと、両手を握ぎりこまれる。鉄堅と、俺の間にある隙間が、妙に遠くて、うざったくて、俺はぐいって、鉄堅の手を振り払って、そして、鉄堅の背中へ回して……鉄堅を抱き締めた。俺と鉄堅の距離が一気に縮まって、ゼロ距離になる。
鉄堅が、ひゅって息を飲むのが解って、驚くな馬鹿って、更に力を込めて抱き締めた。
◆◇◆
鉄堅は、自分の手をどうして良いか解らないみたいで、葉月に抱き締められながら、葉月の背中に回して良いのか、触って良いのか、わたわたと手を空中で動かした。
「は、葉月ちゃん、あのっ、あ、あんまり……くっつかないで」
「は? お、お前が泣くからっ、慰めてやったんだろ人を痴漢みたいに言うなよ」
ムッとして、もっと抱きついてやった。
「ち、痴漢って、違うよ、だって、あの、ちょっと本当に離れて、だって、葉月ちゃん、良い匂い過ぎて、ちょっと本当に駄目だから」
「お前……俺の匂い、昔からどんな風に感じてるんだよ? どんな匂いなんだ?」
「どんなって、めちゃくちゃ、クラクラするくらい良い匂いだよ」
「トイレの芳香剤より?」
「比べ物にならないよ、もっとずっと良い匂いだよ、ずっと嗅いでたいような、でも、あんまり嗅ぐと、酔うっていうか、あの、ちょっと、えっと、本当に……もう駄目」
ぐいっと、肩を押されて抱きついた身体をばりっとはがされ、鉄堅は2、3歩後ろに下がった。
「良い匂いなら、別に良いじゃん」
「……そういう事じゃ」
どうにも歯切れが悪い。まぁ、良いけど別に。
「お前、いま、スマホ持ってるの?」
「あ、うん、あるよ」
「じゃ、ほら、連絡先登録しろよ」
「あ……うん、ありがとう」
目をキラキラさせて、鉄堅はスマホに葉月の連絡先を登録した。
10年近く一緒にいたのに、初めて連絡先を交換したことに、気持ちが、ホクホクと温かくなった。
「よし、登録したな、これで……友達ってやつだな」
「え?」
「んだよ、やなのかよ」
「嫌じゃ……ないよ、嬉しい……けど、友達」
鉄堅は、友達、友達? 友達と、ぼそぼそ呟いてる。そういうとこが、ちょっとあれなんだよな。
もっと、爽やかに明るく、よろしくな! みたいな感じにできないもんかね。
まぁ、今まで、知り合い以上友達未満みたいな、微妙な関係だったのが、突然友達に昇格したらそりゃ、戸惑うよな。
はっきりいって、俺も戸惑ってる。鉄堅が友達とかさ。めちゃめちゃ今さら感。でもやっと、幼馴染みを手に入れた。照れ臭いけど。
二度とって、本気で? もしこのまま、家について、俺を送り届けたら、もう二度と会わないって言うのか?
「そんなこと」
葉月は、振り向いた。振り向かれると思ってなかった鉄堅は、葉月の烈火の如く怒り狂った瞳を見て息を飲んだ。
「そんなこと、お前にできるのかよっ!? 」
できるのか? 本気でもう二度と会わないなんて、本当に? 二度とっていうのは、一生ってことなんだぞ。
もう一生、死ぬまで、死んでからも、墓にすら来ないで、もう会わないって事だぞ。
お前に……できないだろ? できないって言えよ。
鉄堅は暗い瞳で、地面に瞳を下げた。じっと、地面をみてる。その行為が更に葉月をムカつかせた。
「何で俺を見ないんだよ、俺をみて、会わないなんて、できないって言えよっ! 言わないなら、もう、一生、俺に会わないで生きていくんだな、解ったよ、じゃぁここでもう終わりにしよう、家まで送ったって送らなくったって、もうこの先一度も会わない人間のことなんか気にしたって仕方ないだろ、俺が困ろうが、怪我しようが、死のうがどうだっていいだろっ! だって、もう二度と会わないんだもんな! 死ぬまで、1度も、会わないんだよな? もう帰れ! そんでもう一生、俺と関わらないで生きていけよ」
「……」
怒鳴り散らした俺の言葉に、鉄堅は下を向いて耐えている。ぎゅっと、瞳を閉じて、そして身体はふるふると震えていた。
「……できない」
「聞こえないッ!」
「できない、葉月ちゃんに一生会わないで生きていくなんて、できない、できないよ、そんなの、嫌だ」
ぽろりと、鉄堅の瞳から涙がこぼれた。
「き、嫌われても、この先、君がいない人生なんて、僕には考えられない……葉月ちゃんに関われないなんて嫌だ、嫌だけど、葉月ちゃんは、僕がいたら、迷惑でしょ、ずっと迷惑だったでしょ、好きな人に迷惑だって思われてるのに、そばになんて、どうやって居たらいいの? 嫌われてるのに、迷惑だって解ってて、居れるほど僕だって強くない」
ぼろぼろ泣きながら、鉄堅が葉月に向かって叫んだ。
「そばに居たいに決まってる! 決まってるだろ、好きなんだ、ずっと好きだったのに」
苦しげに泣く鉄堅に、葉月は、キッと睨み返した。
「俺は、今日、お前にお礼を言うために来た、お前にお礼をいって、仲直りして、もっと仲良くなりたくて、メアドだって聞こうと思ってたし、ラインだって交換しようと思ってた、だけど、お前が、俺を邪険にしたんだろ、何で来たって、怒鳴って、早く帰れって言った」
こっちだって、言い分がある。泣いた方が許されると思うなよ、俺だって全部ぶちまけてやる、もう一生会わないって言うなら、言いたいこと全部いってやる。
「俺は、仲良くなりたくて来たのにッ!」
鉄堅は、信じられないって顔で、目を大きく見開いて、葉月の話を聞いてる。
「葉月ちゃ」
「それなのに、お前は二度と会わないんだろ」
「ごめん、嫌だ、二度と会わないなんて嫌だ、ごめん」
葉月はずんずんと、鉄堅に近づいて、その胸ぐらを両手で掴んだ。
「じゃぁもう二度と言うな、俺に二度と会わないなんて言うな!!」
「うん……言わない」
鉄堅が、葉月の両手をぎゅっと握りしめた。大きな手に、包み込まれて、胸元を掴む手を少しだけ緩めた。鉄堅は今度はしっかりと、葉月を見つめた。
「もう絶対言わない、葉月ちゃんに会えないなんて、嫌だ、ごめん、ごめんね、僕、葉月ちゃんなしでは生きていけないのに、ごめん」
ぎゅっと、両手を握ぎりこまれる。鉄堅と、俺の間にある隙間が、妙に遠くて、うざったくて、俺はぐいって、鉄堅の手を振り払って、そして、鉄堅の背中へ回して……鉄堅を抱き締めた。俺と鉄堅の距離が一気に縮まって、ゼロ距離になる。
鉄堅が、ひゅって息を飲むのが解って、驚くな馬鹿って、更に力を込めて抱き締めた。
◆◇◆
鉄堅は、自分の手をどうして良いか解らないみたいで、葉月に抱き締められながら、葉月の背中に回して良いのか、触って良いのか、わたわたと手を空中で動かした。
「は、葉月ちゃん、あのっ、あ、あんまり……くっつかないで」
「は? お、お前が泣くからっ、慰めてやったんだろ人を痴漢みたいに言うなよ」
ムッとして、もっと抱きついてやった。
「ち、痴漢って、違うよ、だって、あの、ちょっと本当に離れて、だって、葉月ちゃん、良い匂い過ぎて、ちょっと本当に駄目だから」
「お前……俺の匂い、昔からどんな風に感じてるんだよ? どんな匂いなんだ?」
「どんなって、めちゃくちゃ、クラクラするくらい良い匂いだよ」
「トイレの芳香剤より?」
「比べ物にならないよ、もっとずっと良い匂いだよ、ずっと嗅いでたいような、でも、あんまり嗅ぐと、酔うっていうか、あの、ちょっと、えっと、本当に……もう駄目」
ぐいっと、肩を押されて抱きついた身体をばりっとはがされ、鉄堅は2、3歩後ろに下がった。
「良い匂いなら、別に良いじゃん」
「……そういう事じゃ」
どうにも歯切れが悪い。まぁ、良いけど別に。
「お前、いま、スマホ持ってるの?」
「あ、うん、あるよ」
「じゃ、ほら、連絡先登録しろよ」
「あ……うん、ありがとう」
目をキラキラさせて、鉄堅はスマホに葉月の連絡先を登録した。
10年近く一緒にいたのに、初めて連絡先を交換したことに、気持ちが、ホクホクと温かくなった。
「よし、登録したな、これで……友達ってやつだな」
「え?」
「んだよ、やなのかよ」
「嫌じゃ……ないよ、嬉しい……けど、友達」
鉄堅は、友達、友達? 友達と、ぼそぼそ呟いてる。そういうとこが、ちょっとあれなんだよな。
もっと、爽やかに明るく、よろしくな! みたいな感じにできないもんかね。
まぁ、今まで、知り合い以上友達未満みたいな、微妙な関係だったのが、突然友達に昇格したらそりゃ、戸惑うよな。
はっきりいって、俺も戸惑ってる。鉄堅が友達とかさ。めちゃめちゃ今さら感。でもやっと、幼馴染みを手に入れた。照れ臭いけど。
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