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第一章
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朝の8時台、駅から高校へ続く道は学生で埋め尽くされ、流れ作業のコンベアに乗せられたかのごとくある規則性を持って学生がぞろぞろ歩いて行く。前の人の歩調に合わせ、進んでいく先に学校があるのだ。
葉月も、そのコンベアに乗ったところで、背後から声をかけられた。
「おはよう、戸村」
いきなり真打ち登場というか、成瀬里久がいつも通りのニコニコとした顔で葉月の肩をポンと叩いた。動揺をかくし、引きつらないよう気をつけて、笑顔を返す。
「おぅ、はょ」
肩に置かれた手がなかなか離れないのに少しだけ違和感。チロッとみると、成瀬は、そのイケメンの要素だと言われる茶色がかった前髪をさっとかきあげた。
「だいぶ、暖かくなったよな、学ラン暑い」
「確かに、休んでた間に初夏から夏になってたって感じ」
学ランの詰襟は外していても怒られないけど、歩いてると2、3個のボタンはとってしまう。葉月は割りとキチッと着る派だが、成瀬は第3ボタンまでがばりと外してる。
「シャツまだ冬の着てるから暑い」
「あーーそろそろメッシュじゃないと」
「だよなーしくじった、朝、探してる時間なくてさ、あるの着ちゃった」
「しゃぁねぇ、我慢だな」
「だなーー。戸村元気そうで良かった、匂いももう治まってる」
「え?あ、あぁ、うん」
急に耳元でこそっと、囁かれ戸惑う。成瀬はやっぱり鉄堅が言うようにアルファなんだろうか。
「あのさ、お前ってさやっぱ、アルファなの?」
人にあまりバースは聞かない。個人情報だし、隠してる人も多いから。でも、成瀬の場合、チラチラ答えをちらつかせてるのはそっちだし。隠してる様にはみえなかった。
「うん、そうだよ、でも他の人には内緒な、二人だけの秘密」
「二人だけ……って」
鉄堅にばれてるけど?と思うと、成瀬はクスッとわらった。
「まぁ、アイツには宣戦布告的な?」
「は?」
宣戦布告ってなんだ?アルファ同士縄張り争い的な何かが有るのだろうか。鹿が角をつき合う映像が頭の中に流れて、ぷっと、笑ってしまった。
◆◇◆
葉月は、脳内で、鹿の争いを想像しながら、成瀬と登校した。アルファって、割りと本能に忠実なとこあるよな……ぷっ。
流石に一週間近く休んでいたこともあり、下駄箱辺りで、久しぶりに会ったクラスメートに次々と声をかけられる。この学校の良いところは、皆明るくて、挨拶をよくするところだと思う。
休み明けの返事としては微妙だが、元気元気と返すしかない。実際に元気なのだし。
まぁ、女子の比率が少なくて男子校みたいなノリがあるから深く追求もされない。スポーツをやってる生徒が多くて、コミュニケーション能力が高い生徒が多く、なんというかその場のノリというか、生きが良い感じ。
身体を動かすのが好きな人っていうのは、好奇心も旺盛でいろんな人と交流を好むみたい。
葉月も本来は、走るのが好きなスポーツ少年だったけど、鉄堅とのいざこざと自分のバースのせいで、ちょっと引っ込み思案に育ってしまった。頑張っても隣に天才がいると、どうしても比較しちゃうし、諦め癖みたいなのが付いてくるというもので。
鉄堅は別にできることをひけらかしたりしなかったけど、寡黙ゆえに、他者との間に誤解を産むというか……嫉妬されやすいんだよなと、冷静に今ならそんな風に考えて、同情も出来るようになった。
「あ!戸村じゃん、久しぶり」
「ほんとだ、インフルだったの?熱でた?」
1の3組の教室に入ると、村上と沼田が寄ってきた。そう言えば、インフルで休むことになってたんだった。
「熱は、初日だけかな」
「だよなーーインフルって、最初は死ぬかと思うけど1日たつと普通で学校へ行きたくなる」
「でも、関節痛いじゃん」
「それなーー」
他愛ない会話がポンポン飛ぶのが懐かしい。
「そういや、聞いてよ、こないだの合コンに来てた利香ちゃんがさ」
「利香ちゃん?」
「来てただろ?髪の長いポニテの子」
「あぁ……うん」
全く記憶が無いが居たんだろう。でさでさと、沼田が興奮気味に詰め寄ってくる。
「利香ちゃんと付き合うことになったんだよ」
「え?沼田が?」
「そー、すまんな、皆、お先に大人の階段を登るわ」
「うわぁ……」
横で村上が、沼田をどつきまくる。ふーん、付き合うのかぁ。
「お先にって、成瀬はとっくにだろ?」
村上が、隣に居た成瀬に話をふる。クラス1のモテ男なのだから、スキャンダラスな出来事の一つや二つ有るだろ?と、期待が高まる。
「残念だけど、片思い中」
「エーーまじかよ、役立たずモテメンじゃん」
「なんだよそれ」
「デートの参考にしようと思ったのに」
「ばーか、そこら辺の公園にでも行ってろ」
「公園とか小学生かよぉ」
ギャイギャイ騒ぐ恋する男子。聞いてる分にはアホらしくて面白いんだけど。自分に話が飛んでくると厄介。
「まぁ、戸村にもイイコそのうち紹介するから楽しみにしてろよな」
「……うん」
どうして皆、そんなに恋がしたいんだろ。いつか居なくなる恋人より、友達の方が良いのにな。恋なんか……いらなくない?
《葉月ちゃん好きだよ》
鉄堅の声が聞こえた気がした。お前のその好きは本当に恋なのかな……恋じゃなきゃいいのに。そしたらずっと一緒にいられるのに。
恋はいつか終わるだろ。終わったらもうそばに居られないんだ。そんな綱渡りみたいな関係嫌だ。いつか切れる縁なら初めから要らない。じゃなきゃ、さびしい。居なくなるのはさびしいって、お前は知らないんだよ。だから簡単に好きになったりするんだ。俺はならない。誰のことも特別になんか思いたくない。だって……特別な人なんかつくったら、いつか別れるとき、つらいじゃん。俺は……ずっと一緒にいたいだけなのに。
葉月も、そのコンベアに乗ったところで、背後から声をかけられた。
「おはよう、戸村」
いきなり真打ち登場というか、成瀬里久がいつも通りのニコニコとした顔で葉月の肩をポンと叩いた。動揺をかくし、引きつらないよう気をつけて、笑顔を返す。
「おぅ、はょ」
肩に置かれた手がなかなか離れないのに少しだけ違和感。チロッとみると、成瀬は、そのイケメンの要素だと言われる茶色がかった前髪をさっとかきあげた。
「だいぶ、暖かくなったよな、学ラン暑い」
「確かに、休んでた間に初夏から夏になってたって感じ」
学ランの詰襟は外していても怒られないけど、歩いてると2、3個のボタンはとってしまう。葉月は割りとキチッと着る派だが、成瀬は第3ボタンまでがばりと外してる。
「シャツまだ冬の着てるから暑い」
「あーーそろそろメッシュじゃないと」
「だよなーしくじった、朝、探してる時間なくてさ、あるの着ちゃった」
「しゃぁねぇ、我慢だな」
「だなーー。戸村元気そうで良かった、匂いももう治まってる」
「え?あ、あぁ、うん」
急に耳元でこそっと、囁かれ戸惑う。成瀬はやっぱり鉄堅が言うようにアルファなんだろうか。
「あのさ、お前ってさやっぱ、アルファなの?」
人にあまりバースは聞かない。個人情報だし、隠してる人も多いから。でも、成瀬の場合、チラチラ答えをちらつかせてるのはそっちだし。隠してる様にはみえなかった。
「うん、そうだよ、でも他の人には内緒な、二人だけの秘密」
「二人だけ……って」
鉄堅にばれてるけど?と思うと、成瀬はクスッとわらった。
「まぁ、アイツには宣戦布告的な?」
「は?」
宣戦布告ってなんだ?アルファ同士縄張り争い的な何かが有るのだろうか。鹿が角をつき合う映像が頭の中に流れて、ぷっと、笑ってしまった。
◆◇◆
葉月は、脳内で、鹿の争いを想像しながら、成瀬と登校した。アルファって、割りと本能に忠実なとこあるよな……ぷっ。
流石に一週間近く休んでいたこともあり、下駄箱辺りで、久しぶりに会ったクラスメートに次々と声をかけられる。この学校の良いところは、皆明るくて、挨拶をよくするところだと思う。
休み明けの返事としては微妙だが、元気元気と返すしかない。実際に元気なのだし。
まぁ、女子の比率が少なくて男子校みたいなノリがあるから深く追求もされない。スポーツをやってる生徒が多くて、コミュニケーション能力が高い生徒が多く、なんというかその場のノリというか、生きが良い感じ。
身体を動かすのが好きな人っていうのは、好奇心も旺盛でいろんな人と交流を好むみたい。
葉月も本来は、走るのが好きなスポーツ少年だったけど、鉄堅とのいざこざと自分のバースのせいで、ちょっと引っ込み思案に育ってしまった。頑張っても隣に天才がいると、どうしても比較しちゃうし、諦め癖みたいなのが付いてくるというもので。
鉄堅は別にできることをひけらかしたりしなかったけど、寡黙ゆえに、他者との間に誤解を産むというか……嫉妬されやすいんだよなと、冷静に今ならそんな風に考えて、同情も出来るようになった。
「あ!戸村じゃん、久しぶり」
「ほんとだ、インフルだったの?熱でた?」
1の3組の教室に入ると、村上と沼田が寄ってきた。そう言えば、インフルで休むことになってたんだった。
「熱は、初日だけかな」
「だよなーーインフルって、最初は死ぬかと思うけど1日たつと普通で学校へ行きたくなる」
「でも、関節痛いじゃん」
「それなーー」
他愛ない会話がポンポン飛ぶのが懐かしい。
「そういや、聞いてよ、こないだの合コンに来てた利香ちゃんがさ」
「利香ちゃん?」
「来てただろ?髪の長いポニテの子」
「あぁ……うん」
全く記憶が無いが居たんだろう。でさでさと、沼田が興奮気味に詰め寄ってくる。
「利香ちゃんと付き合うことになったんだよ」
「え?沼田が?」
「そー、すまんな、皆、お先に大人の階段を登るわ」
「うわぁ……」
横で村上が、沼田をどつきまくる。ふーん、付き合うのかぁ。
「お先にって、成瀬はとっくにだろ?」
村上が、隣に居た成瀬に話をふる。クラス1のモテ男なのだから、スキャンダラスな出来事の一つや二つ有るだろ?と、期待が高まる。
「残念だけど、片思い中」
「エーーまじかよ、役立たずモテメンじゃん」
「なんだよそれ」
「デートの参考にしようと思ったのに」
「ばーか、そこら辺の公園にでも行ってろ」
「公園とか小学生かよぉ」
ギャイギャイ騒ぐ恋する男子。聞いてる分にはアホらしくて面白いんだけど。自分に話が飛んでくると厄介。
「まぁ、戸村にもイイコそのうち紹介するから楽しみにしてろよな」
「……うん」
どうして皆、そんなに恋がしたいんだろ。いつか居なくなる恋人より、友達の方が良いのにな。恋なんか……いらなくない?
《葉月ちゃん好きだよ》
鉄堅の声が聞こえた気がした。お前のその好きは本当に恋なのかな……恋じゃなきゃいいのに。そしたらずっと一緒にいられるのに。
恋はいつか終わるだろ。終わったらもうそばに居られないんだ。そんな綱渡りみたいな関係嫌だ。いつか切れる縁なら初めから要らない。じゃなきゃ、さびしい。居なくなるのはさびしいって、お前は知らないんだよ。だから簡単に好きになったりするんだ。俺はならない。誰のことも特別になんか思いたくない。だって……特別な人なんかつくったら、いつか別れるとき、つらいじゃん。俺は……ずっと一緒にいたいだけなのに。
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