今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり

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 さて、とうとう来たクリスマス当日、着ていく服が決まらなくて昨日の夜から頭を捻ってる。指定されたホテルは徒歩20分くらいの所だから、16時に出れば充分だと思う。というか、3日前に下見してきた。可愛いイルミネーションがキラキラ光る夢のお城みたいに素敵なホテルだった。

「うーん、下はジーパンでいいか、問題は上だ」

ジャケット? ジャンパー? それともいっそスーツ? Tシャツは黒と白どっち? 適当にファッション雑誌をペラペラ。カッコいい男の子がカッコいい服をきてポーズとってて、全く参考にならない。

黒は女を綺麗にするって、何かで聞いたから、男も綺麗にしてくれるかな……Tシャツは黒でいっか。少しでも印象が良くなると良いのだけど。

長袖は、ボーダー? 無地? どっちがまし? ボーダーの方は襟首がちょっとヨレヨレしてる気がする、無地は灰色だけど、まぁいっか。明るい色着てって、ホテルだし、目立つのは良くないし。長袖は無地の灰色と。

上着がましなのがない、何で昨日までに買わなかったんだ、ばか。仕方ない、大学生だし、無理に背伸びしないで黒のシャンパーにしよう。寒いかもだし。

よし、服は決まった。後はお金を確認して、とりあえず5万持ったけど、もし足りなかったら困るから家に5万置いて置こう。足りなかったらダッシュで取りに来れるから。でも、さすがに10万は請求されたりしないよね? こういうサイト利用したことないから全く解らないよ。でも、お金でアルファに会うなんて後ろめたいし、法外な金額を提示されても、払ってしまうかも。

心配でモヤモヤするけど、ネットの評価は最高値付いてたし、口コミも凄くよかったし、大丈夫だよね。飛んで火に入る夏の虫よろしく、取っ捕まって身ぐるみ剥がされてなんてことないよねぇ。

ドキドキする胸を押さえる。

「はーーマツユキ君、どんな格好で来るのかな」

プルプルプルと、スマホが揺れてる、マナーモードにしたままだった。急いで、手に取ると、表示画面にはレンタルアルファシステムの文字が。

「ワッ! わーーは、はい」
「おはようございます、こんな時間にすみません、なるみさんですか?」
「あ、はい、そうです」

「今日の17時からの予約このまま大丈夫ですか?」
「は、は、はい、もちろんです」

「了解しました、ホテルの場所は解りますか?」
「はい! 大丈夫です」

「ふっ、そんなに緊張しなくて大丈夫だよ、歳も近いし気楽にいこうよ、じゃ、17時に109号室の中でまってるから」
「マツユキ君?」
「あ、そうそう、ごめん、名乗ってなかったか、マツユキでーす」
「あ、あああ」
「じゃ、また後でね」
「はい」

プっと、通話が切れて悶える。マツユキ君の声、めっちゃかっこよかったぁぁぁぁ! 声だけでもイケメンだった、陽気で爽やかで、あれはクラスで人気者の声だった。僕みたいにボソボソしてない、覇気の有る自信のある人の声。

だって、マツユキ君はアルファなんだもん、そりゃそうだよね。わぁ、生まれて初めて生でアルファさんと喋っちゃった。

感動にうち震えて、ベットの上でバタバタする。

スマホの時計を見ると午前10時、後7時間後。そして、とうとうアルファに会えるんだ。あのサイトがそもそもゲイ用だから、男でも大丈夫だよね? 今さら心配になってきた、さっき聞けばよかったのに、もし会って、え? 男のオメガ? って顔されたらどうしよう。オメガは言わなきゃバレないとおもうけど、なるみって名前、女の子みたいだし。もし勘違いされてたら。

でもでも、電話で男だって解ったよね、そもそもあのアプリ、性別をなんで聞いてくれなかったんだよ恋々バニー、そこは重要なんじゃ。

もう一度アプリを開いて、確認する。

ゲイ レンタル で検索かけると、ゲイに一番人気で出てくる。うん、大丈夫……。

昨日からあまり寝てなくてちょっと、うとうとしてきた。まだ7時間もあるし、ちょっとだけ寝よう。タイマーを15時に設定して、ベットへ入った。暖かい。冬はすぐ眠れるから好き。勉強ははかどらないけど。

一眠りしたら、シャワーを浴びて、消臭スプレーかけまくって、歯を磨いて、髪を整えて、用意した服をきて、行くんだ。

「楽しみ、くふふっ」

こんな気持ちで布団に入るのはいつぶりだろう。遠足や、修学旅行まえはむしろ憂鬱になるタイプ。大好きな漫画とか小説が明日発売する、前日とかかな。あれは、楽しみだよね、ずっと待ってたものが明日には手に入るって。それに似てる。

ずっとアルファに会ってみたかった。夢みたいだ。それで、気に入ってもらえたら、発情期に会ってもらえないか頼むんだ。1日だけで良いから。少しだけでも良いから。そしたら、きっともう惨めな気持ちで発情期をむかえなくて済むのだ。


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