5 / 50
5
しおりを挟む
マツユキ君は、なかなか泣き止まない僕を、呆れること無く、ずっと慰め、ホテルの中まで連れていってくれて、更にはベットへ座らせてくれた。なんて親切なんだろう。
僕はマツユキ君にしがみついたまま、ヨレヨレと歩き体重をかけてしまったからきっと重かったに違いない、ちゃんと歩けなかったことを後悔した。こんなの、ほぼ介護。なんて情けないんだ。自己嫌悪の深い深い穴へ落ちに落ちてしまう。
「マツユキぐん、ごめ、んねぇ、涙がとまらなくて、情けなくて、ごめん。ううっ」
「もう、なるみさん何でそんなに謝るの、謝らなくて良いってば、せっかく会えたのに、泣いてばかりじゃ勿体無いよ、泣き顔可愛いけど」
あぁ、なんて気遣いができる人なんだ。僕が可愛いわけないのに。最高に優しくてどうしよう、好きすぎる。男のオメガだって言ったら、どうなるのかな、嫌われるかな、気持ち悪いってさっきの夢みたいに言われるのかな、やだよぉ、優しいマツユキ君に嫌われたくない。お金を払うからお願いだから嫌わないで。
「うっうっ、嫌わないで」
「え? なんで、嫌わないよ」
「ほ、ほんとに? でも、僕、僕は、うっうう、男だし、男なのに申し込んでしまって」
「あぁ、俺もゲイだから大丈夫だよ」
オレモゲイ……俺もゲイ! 俺も? ゲイ!!??
心の中に“俺もゲイ”という、何とも素敵なワードが星を撒き散らしながら飛び回る。なんて、キラキラしたパワーワードなんだ。マツユキ君、そんなに優しくてかっこよくてしかもゲイなんて、理想の塊なんですけど。感動で死ぬかもしれない。
人生初、ゲイの人に……いや、ゲイの神様と言って良い人に会った。そんな感動的な日に、僕はこんなぼろぼろで、みっともなくて、泣いて迷惑をかけて。なんて迷惑な人間なんだろう。
僕から止めどなくぽたぽた落ちる涙を、マツユキ君がせっせとふいてくれる。
「ううっ」
「わぁ、また泣いちゃった、ごめんね、ゲイやだった?」
「ちがっ、違います、うううっ、ぐずっ、グスン、嬉しくて、ごめんなさぃ、ゲイの神様に会ったの初めてで」
「え? あ、ゲイに会ったの初めてなの?」
「はい」
「そっか~~そう、なるみさん確かにこんなに気が弱いんじゃ、そうなるよね、今まで一人でつらかったね、よくサイト見つけてくれたね、頑張って予約してくれてありがとね」
よしよしと、頭をなぜられた。まじでもう死んでも悔いない。こんな優しい王子様みたいなゲイの人に出会えて、僕はもう人生の勝ち組といって過言ではない。あぁ、この幸福な気持ちのまま天に召されたら僕の人生も悪くなかったなって、終わりよければ全てよしだなって気持ちのまま天国へいける。
幸福感に包まれ昇天しかけた時、横でただひたすら僕に癒しを与え、頭をなぜてくれてたマツユキ君が服を脱ぎ出した。え? 何してるの? 暑いのかな?
「じゃ、ちょっと待っててね」
「へ?」
待つって、何を? なんで服を脱ぐの? あれ、そう言えば、最初は面談って書いてなかったっけ。面談はもしかして、もう終わったのかな。僕、泣いてただけなのだけど。そもそも面談って何だったんだろ、これからのコース説明とかがあるのかなって勝手に思い込んでました。
僕の希望としては、定期的に会えるようにしてもらえれば、あの、無理にそれ以上は望んでないというか、むしろあの、望むのは、もし可能ならアルファさんに、抱き締めてもらえたらくらいで。それ以上のことは、そんな、でも、もし、もし許してもらえるなら……ゲイとしての指南を受けてもよいのなら、頼みたいかも。あ、エッチなことじゃなくて、えっと、ゲイとして生きていく為に、出会いの場とか? ぼく、ネットでよくみる、発展場とか行ったことなくて。
仮面とか付けて行けるところがあったら良いのだけど、外見に自信がないから、内面でって、内面も自信がないけど。
もしかしたら、僕なんかと付き合ってくれるアルファさんに出会えたり……と、そんな相談をする人もいなくて、マツユキ君がもし、そういうの知ってたら教えてもらえないかな。
僕はマツユキ君にしがみついたまま、ヨレヨレと歩き体重をかけてしまったからきっと重かったに違いない、ちゃんと歩けなかったことを後悔した。こんなの、ほぼ介護。なんて情けないんだ。自己嫌悪の深い深い穴へ落ちに落ちてしまう。
「マツユキぐん、ごめ、んねぇ、涙がとまらなくて、情けなくて、ごめん。ううっ」
「もう、なるみさん何でそんなに謝るの、謝らなくて良いってば、せっかく会えたのに、泣いてばかりじゃ勿体無いよ、泣き顔可愛いけど」
あぁ、なんて気遣いができる人なんだ。僕が可愛いわけないのに。最高に優しくてどうしよう、好きすぎる。男のオメガだって言ったら、どうなるのかな、嫌われるかな、気持ち悪いってさっきの夢みたいに言われるのかな、やだよぉ、優しいマツユキ君に嫌われたくない。お金を払うからお願いだから嫌わないで。
「うっうっ、嫌わないで」
「え? なんで、嫌わないよ」
「ほ、ほんとに? でも、僕、僕は、うっうう、男だし、男なのに申し込んでしまって」
「あぁ、俺もゲイだから大丈夫だよ」
オレモゲイ……俺もゲイ! 俺も? ゲイ!!??
心の中に“俺もゲイ”という、何とも素敵なワードが星を撒き散らしながら飛び回る。なんて、キラキラしたパワーワードなんだ。マツユキ君、そんなに優しくてかっこよくてしかもゲイなんて、理想の塊なんですけど。感動で死ぬかもしれない。
人生初、ゲイの人に……いや、ゲイの神様と言って良い人に会った。そんな感動的な日に、僕はこんなぼろぼろで、みっともなくて、泣いて迷惑をかけて。なんて迷惑な人間なんだろう。
僕から止めどなくぽたぽた落ちる涙を、マツユキ君がせっせとふいてくれる。
「ううっ」
「わぁ、また泣いちゃった、ごめんね、ゲイやだった?」
「ちがっ、違います、うううっ、ぐずっ、グスン、嬉しくて、ごめんなさぃ、ゲイの神様に会ったの初めてで」
「え? あ、ゲイに会ったの初めてなの?」
「はい」
「そっか~~そう、なるみさん確かにこんなに気が弱いんじゃ、そうなるよね、今まで一人でつらかったね、よくサイト見つけてくれたね、頑張って予約してくれてありがとね」
よしよしと、頭をなぜられた。まじでもう死んでも悔いない。こんな優しい王子様みたいなゲイの人に出会えて、僕はもう人生の勝ち組といって過言ではない。あぁ、この幸福な気持ちのまま天に召されたら僕の人生も悪くなかったなって、終わりよければ全てよしだなって気持ちのまま天国へいける。
幸福感に包まれ昇天しかけた時、横でただひたすら僕に癒しを与え、頭をなぜてくれてたマツユキ君が服を脱ぎ出した。え? 何してるの? 暑いのかな?
「じゃ、ちょっと待っててね」
「へ?」
待つって、何を? なんで服を脱ぐの? あれ、そう言えば、最初は面談って書いてなかったっけ。面談はもしかして、もう終わったのかな。僕、泣いてただけなのだけど。そもそも面談って何だったんだろ、これからのコース説明とかがあるのかなって勝手に思い込んでました。
僕の希望としては、定期的に会えるようにしてもらえれば、あの、無理にそれ以上は望んでないというか、むしろあの、望むのは、もし可能ならアルファさんに、抱き締めてもらえたらくらいで。それ以上のことは、そんな、でも、もし、もし許してもらえるなら……ゲイとしての指南を受けてもよいのなら、頼みたいかも。あ、エッチなことじゃなくて、えっと、ゲイとして生きていく為に、出会いの場とか? ぼく、ネットでよくみる、発展場とか行ったことなくて。
仮面とか付けて行けるところがあったら良いのだけど、外見に自信がないから、内面でって、内面も自信がないけど。
もしかしたら、僕なんかと付き合ってくれるアルファさんに出会えたり……と、そんな相談をする人もいなくて、マツユキ君がもし、そういうの知ってたら教えてもらえないかな。
652
あなたにおすすめの小説
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
君さえ笑ってくれれば最高
大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。
(クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け)
異世界BLです。
アルファ王子に嫌われるための十の方法
小池 月
BL
攻め:アローラ国王太子アルファ「カロール」
受け:田舎伯爵家次男オメガ「リン・ジャルル」
アローラ国の田舎伯爵家次男リン・ジャルルは二十歳の男性オメガ。リンは幼馴染の恋人セレスがいる。セレスは隣領地の田舎子爵家次男で男性オメガ。恋人と言ってもオメガ同士でありデートするだけのプラトニックな関係。それでも互いに大切に思える関係であり、将来は二人で結婚するつもりでいた。
田舎だけれど何不自由なく幸せな生活を送っていたリンだが、突然、アローラ国王太子からの求婚状が届く。貴族の立場上、リンから断ることが出来ずに顔も知らないアルファ王子に嫁がなくてはならなくなる。リンは『アルファ王子に嫌われて王子側から婚約解消してもらえば、伯爵家に出戻ってセレスと幸せな結婚ができる!』と考え、セレスと共にアルファに嫌われるための作戦を必死で練り上げる。
セレスと涙の別れをし、王城で「アルファ王子に嫌われる作戦」を実行すべく奮闘するリンだがーー。
王太子α×伯爵家ΩのオメガバースBL
☆すれ違い・両想い・権力争いからの冤罪・絶望と愛・オメガの友情を描いたファンタジーBL☆
性描写の入る話には※をつけます。
11月23日に完結いたしました!!
完結後のショート「セレスの結婚式」を載せていきたいと思っております。また、その後のお話として「番となる」と「リンが妃殿下になる」ストーリーを考えています。ぜひぜひ気長にお待ちいただけると嬉しいです!
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
【完結】浮薄な文官は嘘をつく
七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。
イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。
父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。
イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。
カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。
そう、これは───
浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。
□『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。
□全17話
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
泡にはならない/泡にはさせない
玲
BL
――やっと見つけた、オレの『運命』……のはずなのに秒でフラれました。――
明るくてお調子者、だけど憎めない。そんなアルファの大学生・加原 夏樹(かはらなつき)が、ふとした瞬間に嗅いだ香り。今までに経験したことのない、心の奥底をかき乱す“それ”に導かれるまま、出会ったのは——まるで人魚のようなスイマーだった。白磁の肌、滴る水、鋭く澄んだ瞳、そしてフェロモンが、理性を吹き飛ばす。出会った瞬間、確信した。
「『運命だ』!オレと『番』になってくれ!」
衝動のままに告げた愛の言葉。けれど……。
「運命論者は、間に合ってますんで。」
返ってきたのは、冷たい拒絶……。
これは、『運命』に憧れる一途なアルファと、『運命』なんて信じない冷静なオメガの、正反対なふたりが織りなす、もどかしくて、熱くて、ちょっと切ない恋のはじまり。
オメガバースという世界の中で、「個」として「愛」を選び取るための物語。
彼が彼を選ぶまで。彼が彼を認めるまで。
——『運命』が、ただの言葉ではなくなるその日まで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる