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夜鳥すぱり

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 マツユキ君は、なかなか泣き止まない僕を、呆れること無く、ずっと慰め、ホテルの中まで連れていってくれて、更にはベットへ座らせてくれた。なんて親切なんだろう。

僕はマツユキ君にしがみついたまま、ヨレヨレと歩き体重をかけてしまったからきっと重かったに違いない、ちゃんと歩けなかったことを後悔した。こんなの、ほぼ介護。なんて情けないんだ。自己嫌悪の深い深い穴へ落ちに落ちてしまう。

「マツユキぐん、ごめ、んねぇ、涙がとまらなくて、情けなくて、ごめん。ううっ」

「もう、なるみさん何でそんなに謝るの、謝らなくて良いってば、せっかく会えたのに、泣いてばかりじゃ勿体無いよ、泣き顔可愛いけど」

あぁ、なんて気遣いができる人なんだ。僕が可愛いわけないのに。最高に優しくてどうしよう、好きすぎる。男のオメガだって言ったら、どうなるのかな、嫌われるかな、気持ち悪いってさっきの夢みたいに言われるのかな、やだよぉ、優しいマツユキ君に嫌われたくない。お金を払うからお願いだから嫌わないで。

「うっうっ、嫌わないで」
「え? なんで、嫌わないよ」
「ほ、ほんとに? でも、僕、僕は、うっうう、男だし、男なのに申し込んでしまって」
「あぁ、俺もゲイだから大丈夫だよ」

オレモゲイ……俺もゲイ! 俺も? ゲイ!!??

心の中に“俺もゲイ”という、何とも素敵なワードが星を撒き散らしながら飛び回る。なんて、キラキラしたパワーワードなんだ。マツユキ君、そんなに優しくてかっこよくてしかもゲイなんて、理想の塊なんですけど。感動で死ぬかもしれない。

人生初、ゲイの人に……いや、ゲイの神様と言って良い人に会った。そんな感動的な日に、僕はこんなぼろぼろで、みっともなくて、泣いて迷惑をかけて。なんて迷惑な人間なんだろう。
僕から止めどなくぽたぽた落ちる涙を、マツユキ君がせっせとふいてくれる。

「ううっ」
「わぁ、また泣いちゃった、ごめんね、ゲイやだった?」
「ちがっ、違います、うううっ、ぐずっ、グスン、嬉しくて、ごめんなさぃ、ゲイの神様に会ったの初めてで」

「え? あ、ゲイに会ったの初めてなの?」
「はい」
「そっか~~そう、なるみさん確かにこんなに気が弱いんじゃ、そうなるよね、今まで一人でつらかったね、よくサイト見つけてくれたね、頑張って予約してくれてありがとね」

よしよしと、頭をなぜられた。まじでもう死んでも悔いない。こんな優しい王子様みたいなゲイの人に出会えて、僕はもう人生の勝ち組といって過言ではない。あぁ、この幸福な気持ちのまま天に召されたら僕の人生も悪くなかったなって、終わりよければ全てよしだなって気持ちのまま天国へいける。

幸福感に包まれ昇天しかけた時、横でただひたすら僕に癒しを与え、頭をなぜてくれてたマツユキ君が服を脱ぎ出した。え? 何してるの? 暑いのかな?

「じゃ、ちょっと待っててね」
「へ?」

待つって、何を? なんで服を脱ぐの? あれ、そう言えば、最初は面談って書いてなかったっけ。面談はもしかして、もう終わったのかな。僕、泣いてただけなのだけど。そもそも面談って何だったんだろ、これからのコース説明とかがあるのかなって勝手に思い込んでました。

僕の希望としては、定期的に会えるようにしてもらえれば、あの、無理にそれ以上は望んでないというか、むしろあの、望むのは、もし可能ならアルファさんに、抱き締めてもらえたらくらいで。それ以上のことは、そんな、でも、もし、もし許してもらえるなら……ゲイとしての指南を受けてもよいのなら、頼みたいかも。あ、エッチなことじゃなくて、えっと、ゲイとして生きていく為に、出会いの場とか? ぼく、ネットでよくみる、発展場とか行ったことなくて。
仮面とか付けて行けるところがあったら良いのだけど、外見に自信がないから、内面でって、内面も自信がないけど。
もしかしたら、僕なんかと付き合ってくれるアルファさんに出会えたり……と、そんな相談をする人もいなくて、マツユキ君がもし、そういうの知ってたら教えてもらえないかな。




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