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僕のへにゃりと丸まった情けない背中をマツユキ君が背後から優しく抱き締めてくれた。うう、情けない結局慰めてもらってる。
「なるみさん、落ち込んでる?」
「えっと、僕、僕は、マツユキ君に言わなきゃいけないことが有って、それで、たぶんそれが言えないと、罪悪感でどうにもこうにも」
しょんぼりと、自分の足を抱きかかえて、湯船から少しだけ出ている膝っ小僧に顔をつけた。マツユキ君は僕の背中から手を離し、よしよしとまた頭を撫でてくれた。
「そっか、でもなるみさんが言いたくないなら、言わなくても良いんだよ? 俺らみたいな職業のやつに、言いたくない事なんか皆有るだろうし」
俺らみたいな職業と言ったけど、レンタルアルファシステムは僕にとっては神様の職業です。レンタルでもしないと、アルファさんになんて一生出会いませんでした。憧れのアルファさんとこうしてお話できることが、どれだけオメガの僕にとって嬉しいことか。オメガは、アルファさんのそばにいるだけで、発情期すごく楽になるって聞いたんです。次は、発情期の時に……少しでも良いからお会いできたら、それだけが望みで。
「僕、本名も鳴水です」
「そうなの? じゃぁ、俺も秘密教えよっかな、恋々バニーの中身、俺なんだよ。チャットしただろ?」
「ええっ! 恋々バニーはマツユキ君だったんですか、あれ途中から急にキャラ口調で笑っちゃいました」
「ピョンつけるの、忘れるんだよ、パソコンの前で、あ、やべって何回も言ったわ」
「ふふふふっ」
マツユキ君は恐らくいま、僕が言わなければいけないことの逃げ口を作ってくれてる。言わないまま終れるように、気を使ってくれてる。
優しい。こんな気遣いできる人を騙して、お金で相手をさせてなんて、だめだな、バチがあたるや。もう充分だ。下心だけで突っ走れない。情けない醜い僕の心、これ以上自分で自分を嫌いたくない。深呼吸をして、意を決して告げよう。きちんと話してから帰ろう。嫌われてしまうかもだけど、嘘をついたまま別れたらきっと天に顔向けできない。一生涯、優しい人を騙した罪を背負ったまま生きることになる。
僕は大きく息を吸い込んだ。そして、吐き出すのと同時にずっと言えなかったことをマツユキ君に告白した。
「僕……オメガなんです」
「え」
「日本に男オメガなんて数人しかいないのに、たまたま僕の性別、オメガで……恥ずかしくて言えなくてごめんなさい」
「………」
マツユキ君が無言で、何か考えてる。やっぱり気持ち悪くなったんだろうか。男なのに発情期あるとか、妊娠するとか、そんなのめんどくさいもんね。
「黙っててごめんなさい、僕の相手をしてくれる、アルファが世界の何処かにいるかなと思って、お金を払ったら相手をしてもらえないかなって……でも、やっぱりそんな人、居ないですよね」
自分でも気持ち悪いのに、他人ならもっと気持ち悪いに違いない。親でさえ、僕をみると目を反らすのに。マツユキ君が優しいからって、優しいことを人に強要したくない。
「ごめんね、マツユキ君、あの、今日はもう充分だから、お風呂一緒に入ってくれてありがとう、もう、出よう、騙したみたいになってしまってすみません」
ごめんねと、離れようとした時、また、ぎゅっとマツユキ君に背後から抱き締められた。だ、だめだよマツユキ君、いま、優しくされたらまた涙腺が。
せっかく引っ込んだ涙が、競り上がってくる感覚がある。僕は必死で目を閉じた。もう泣くな、同情を売ろうとするな。そんな浅ましいことしたら、僕は、ただでさえ自分が許せないのに、もっと自分に絶望することになる。
だから離して。もう本当に充分優しくしてもらえたから。これ以上されたら、僕はもっと甘えてしまうよ。それなのに、マツユキ君は僕を抱き締めたまま、離す気はないみたいだった。
胸の鼓動を、背中に感じる。生きる力の強そうな力強いアルファの鼓動だ。なんて魅力的で落ち着くんだろう。オメガはアルファを求める生き物。そばにいるだけで、すごく安心する。これがアルファの庇護。アルファは、オメガを庇護する性質があって、フェロモンで包み込まれたオメガは、安心してアルファに身をまかせるのだとか。
マツユキ君のフェロモン、すごく優しくて好き。すごく安心する。発情期の時にこうしてもらえたら、どんなに良いだろう。
「なるみさん、落ち込んでる?」
「えっと、僕、僕は、マツユキ君に言わなきゃいけないことが有って、それで、たぶんそれが言えないと、罪悪感でどうにもこうにも」
しょんぼりと、自分の足を抱きかかえて、湯船から少しだけ出ている膝っ小僧に顔をつけた。マツユキ君は僕の背中から手を離し、よしよしとまた頭を撫でてくれた。
「そっか、でもなるみさんが言いたくないなら、言わなくても良いんだよ? 俺らみたいな職業のやつに、言いたくない事なんか皆有るだろうし」
俺らみたいな職業と言ったけど、レンタルアルファシステムは僕にとっては神様の職業です。レンタルでもしないと、アルファさんになんて一生出会いませんでした。憧れのアルファさんとこうしてお話できることが、どれだけオメガの僕にとって嬉しいことか。オメガは、アルファさんのそばにいるだけで、発情期すごく楽になるって聞いたんです。次は、発情期の時に……少しでも良いからお会いできたら、それだけが望みで。
「僕、本名も鳴水です」
「そうなの? じゃぁ、俺も秘密教えよっかな、恋々バニーの中身、俺なんだよ。チャットしただろ?」
「ええっ! 恋々バニーはマツユキ君だったんですか、あれ途中から急にキャラ口調で笑っちゃいました」
「ピョンつけるの、忘れるんだよ、パソコンの前で、あ、やべって何回も言ったわ」
「ふふふふっ」
マツユキ君は恐らくいま、僕が言わなければいけないことの逃げ口を作ってくれてる。言わないまま終れるように、気を使ってくれてる。
優しい。こんな気遣いできる人を騙して、お金で相手をさせてなんて、だめだな、バチがあたるや。もう充分だ。下心だけで突っ走れない。情けない醜い僕の心、これ以上自分で自分を嫌いたくない。深呼吸をして、意を決して告げよう。きちんと話してから帰ろう。嫌われてしまうかもだけど、嘘をついたまま別れたらきっと天に顔向けできない。一生涯、優しい人を騙した罪を背負ったまま生きることになる。
僕は大きく息を吸い込んだ。そして、吐き出すのと同時にずっと言えなかったことをマツユキ君に告白した。
「僕……オメガなんです」
「え」
「日本に男オメガなんて数人しかいないのに、たまたま僕の性別、オメガで……恥ずかしくて言えなくてごめんなさい」
「………」
マツユキ君が無言で、何か考えてる。やっぱり気持ち悪くなったんだろうか。男なのに発情期あるとか、妊娠するとか、そんなのめんどくさいもんね。
「黙っててごめんなさい、僕の相手をしてくれる、アルファが世界の何処かにいるかなと思って、お金を払ったら相手をしてもらえないかなって……でも、やっぱりそんな人、居ないですよね」
自分でも気持ち悪いのに、他人ならもっと気持ち悪いに違いない。親でさえ、僕をみると目を反らすのに。マツユキ君が優しいからって、優しいことを人に強要したくない。
「ごめんね、マツユキ君、あの、今日はもう充分だから、お風呂一緒に入ってくれてありがとう、もう、出よう、騙したみたいになってしまってすみません」
ごめんねと、離れようとした時、また、ぎゅっとマツユキ君に背後から抱き締められた。だ、だめだよマツユキ君、いま、優しくされたらまた涙腺が。
せっかく引っ込んだ涙が、競り上がってくる感覚がある。僕は必死で目を閉じた。もう泣くな、同情を売ろうとするな。そんな浅ましいことしたら、僕は、ただでさえ自分が許せないのに、もっと自分に絶望することになる。
だから離して。もう本当に充分優しくしてもらえたから。これ以上されたら、僕はもっと甘えてしまうよ。それなのに、マツユキ君は僕を抱き締めたまま、離す気はないみたいだった。
胸の鼓動を、背中に感じる。生きる力の強そうな力強いアルファの鼓動だ。なんて魅力的で落ち着くんだろう。オメガはアルファを求める生き物。そばにいるだけで、すごく安心する。これがアルファの庇護。アルファは、オメガを庇護する性質があって、フェロモンで包み込まれたオメガは、安心してアルファに身をまかせるのだとか。
マツユキ君のフェロモン、すごく優しくて好き。すごく安心する。発情期の時にこうしてもらえたら、どんなに良いだろう。
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