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夜鳥すぱり

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 僕がまたデートという単語に、昇天しかけている間に、 雪夜ゆきや君は、夕飯のメニューを決めるために、サイドテーブルに置かれたタブレットをポコポコ押してる。あ、それで頼むシステムなんですね、すごい、メニューの横の数字を押してエンターすれば、注文できちゃうんだ!

カラオケ屋のシステムと似てるなぁ。ま、カラオケ屋なんて遥か昔に一度しか行ったことないのですけどね。確か、みんな、タブレットで食べ物を注文してて、凄いなーってみてました。もちろん、僕にタブレットは回ってこず、ポテト一、二本しか食べられなかったけど。

「何を頼むんですか?」
「何でもいいよ、鳴水、とりあえず、何か食べたいもの言ってごらん、折角クリスマスだし、チキンたべようか? 食べれる?」
「はい、チキン好きです」

「サンドウィッチも頼むか、飲み物は?」
「え、あ、えっっと、ウーロン茶で」
「ウーロン茶? ぷっ、まぁ、そうだよな、未成年だもんな、んじゃ俺もウーロン茶でいいや、よし、他に食べたいものある?」

「あ、あの、もし、よかったらなんですが、小さいケーキを1つ頼んでも良いですか?」
「おーークリスマスケーキか、いいよ、せっかくだし、この丸いやつ2人で食べよ」
「ンンッ、はい」

クリスマスに、チキンとサンドウィッチと、ケーキを雪夜君と食べれるなんて、何と言うスペシャルイベント、良かった10万持ってきといて。2万じゃ、絶対足りなかった。危ない危ない。胸に手を置いて、安心してると、雪夜君が注文し終えたみたいで、タブレットを元の位置に戻してる。あ、全部やらせちゃった、僕ってばほんと、気が利かないなぁ。

「注文、ありがとうございます」
「うん、直ぐ来ると思うよ、あ、ほらランプついてる」
「え?」

プレゼントボックスみたいなのが壁にくっついてて、そこの上のランプが光ってる、僕は恐々、そのボックスの蓋を開けてみた。すると、なんと、箱に入ったチキンとサンドウィッチがことんことんと、滑り落ちてきて、間を少し開けてケーキがやって来た。凄いシステムだ! 本当にサンタさんからの贈り物みたい。

「凄い!」
「だてに、ホテル名がクリスマスじゃないよな、サンタさんからのプレゼントみたいで面白いよな」

雪夜君と同じこと、考えてて、胸が熱くなる。僕もいま、同じことを考えてましたって、言ったら……キモいかな。やめとこ。

「前に頼んだ時……あ、いや、さ、たべようか」

不自然に会話を切った雪夜君が、ボックスの中から、チキンとサンドウィッチとケーキを取り出してくれたので、慌ててテーブルの上の雑誌とかを片付けた。

「前頼んだ時、どうしたんですか?」
「んーー夏だったからかき氷頼んだら、くしゃぁってなって、あれは不味かったなって」
「かき氷は、流すの難しいですね、あはは……は」

ハタっと、気づいたけど、前頼んだ時って、つまり、お相手がいらっしゃったと。いやいやいや、雪夜君は5万もファンが居るだろうことは解ってた事で、動揺するな、僕。

チキンの入った箱を開けようとする、手が震えてしまって、ヤバい。ギュッと指を折って握り混んだら、雪夜君が、ぽそりと呻いた。

「ごめん」

「なっ、何を謝る必要が有るんですか、謝らないで下さい、僕は何もそんな、気にしてないというか、気にするような身分でもないというか、えっと、仕事ですし」

ダメだ、言えば言う程、墓穴を掘ってる気がする! かぁぁっと恥ずかしくて顔が赤くなる。そんな焦るばかりの僕をじっと見つめて、雪夜君はハッと小さく溜め息を吐いた。








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