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写真を見せるのを断ったら、雪夜くんが唇を尖らせた。何それめちゃんこ可愛いんだけど。でも、だからといって盗撮に近いスクリーンショットを見せる訳には。断固として拒否させていただきます。雪夜君は、意外にも頑なに反抗的な僕の態度を面白がってる様子だった。僕の肩に手を回し、ゆさゆさと揺する。
「んだよ、いーじゃん、見せろ」
「や、です」
「エロい写真?」
「違います」
「じゃ、好きな人の写真だろ」
ギクッと、身体を揺らしてしまう。雪夜君のこういう勘の鋭いところ、急に胸に槍を突き付けられたような気持ちになる。無言で固まると、雪夜君は、ふーんと、意味ありげな視線を投げ、ひょいっと肩から腕をはずし、荷物を持った。
「好きな人とは付き合わないの?」
「そ、そんなっ無理です」
「なんで? もう結婚した人とか?」
「そうじゃないけど……男オメガが嫌いかもです」
口にして、そうだったと、自分で心に刃を刺したよう。僕は何を浮かれてたんだろ、そうだよ、雪夜君は男オメガだめなのに。でももともと報われるなんて思ってないんだ、大丈夫。心の中で想ってるだけだ。それくらいはきっと許してもらえる。
雪夜君は眉間に眉を寄せて、ちょっと厳つい顔をした。
「んだよ、じゃ、もうそんなやつ忘れちゃえ」
「え?」
「忘れて他の人にしな」
「……むり、です」
そんな簡単に雪夜君を忘れられるわけない。貴方みたいな人他にいない。それに、他の人なんか要らない。貴方しかいらないです。ぷるぷると首をふった。できない、いくら報われないからって、他の人に乗り換えるなんてできない。そんなに器用じゃない。君にしか恋はしない。
雪夜くんは、はぁっとしかたなさそうに溜め息をはいて、苦笑いした。
「そっか、じゃ、しょうがないか」
またヨシヨシと頭をなでられた。雪夜君にとって、こんなことは些細な慰めかもしれないけど、僕にとっては貴方からもらえる優しさは、心がえぐられるくらい苦しく嬉しいよ。こんにちはとさよならがいつも同居してるような、もらった瞬間に失うことを考えるような。いつか消える優しさだから。それでも、享受したい。いつか消えても、僕の心に輝く瑠璃の鉱石みたいに残り続けるから。
「よし、じゃ帰るか」
「はい」
僕たちは、ホテルクリスマスを出た。19時を回っても辺りはまだまだ賑やかだ。新宿は夜の町、これからきっと始まる処。
「明日の2時だぞ」
「え?」
「スマホ買い替える約束しただろ?」
「はい」
「もしなんかあったら、これ、俺の番号」
ほいっと、手渡された名刺の裏に手書きの番号が記されてる。僕の手の中のそれが金の札束の如く僕にとっては貴重なもので、大事に大事に、鞄の奥底にしまった。胸に鞄を抱き締める。帰り道でどんな暴漢に会おうとも、必ずこの鞄だけは死守するつもりだ。
じゃ、っと、雪夜君はさっぱりとした挨拶をした。僕は付いて行きそうになるのを堪えて地面に突き刺さった杭の如くそこを動かなかった。
雪夜君の後ろ姿が遠ざかるまでずっとその場で立って見てたら、時折、雪夜君が振り返って笑ってる。その姿が角を曲がって見えなくなるまで、僕は古い映画の別れのシーンみたいにずっと立ち続けた。
あぁ、これが一生の別れになりませんように。また明日、本当に会えますように。雪夜君からもらった名刺がはいった鞄を胸に抱き締めて、僕は、繁華街へと歩いた。部屋に飾るフォトフレームを買うのだ。真っ白なやつがいい、いつみても、雪夜君を思い出せるから。
「んだよ、いーじゃん、見せろ」
「や、です」
「エロい写真?」
「違います」
「じゃ、好きな人の写真だろ」
ギクッと、身体を揺らしてしまう。雪夜君のこういう勘の鋭いところ、急に胸に槍を突き付けられたような気持ちになる。無言で固まると、雪夜君は、ふーんと、意味ありげな視線を投げ、ひょいっと肩から腕をはずし、荷物を持った。
「好きな人とは付き合わないの?」
「そ、そんなっ無理です」
「なんで? もう結婚した人とか?」
「そうじゃないけど……男オメガが嫌いかもです」
口にして、そうだったと、自分で心に刃を刺したよう。僕は何を浮かれてたんだろ、そうだよ、雪夜君は男オメガだめなのに。でももともと報われるなんて思ってないんだ、大丈夫。心の中で想ってるだけだ。それくらいはきっと許してもらえる。
雪夜君は眉間に眉を寄せて、ちょっと厳つい顔をした。
「んだよ、じゃ、もうそんなやつ忘れちゃえ」
「え?」
「忘れて他の人にしな」
「……むり、です」
そんな簡単に雪夜君を忘れられるわけない。貴方みたいな人他にいない。それに、他の人なんか要らない。貴方しかいらないです。ぷるぷると首をふった。できない、いくら報われないからって、他の人に乗り換えるなんてできない。そんなに器用じゃない。君にしか恋はしない。
雪夜くんは、はぁっとしかたなさそうに溜め息をはいて、苦笑いした。
「そっか、じゃ、しょうがないか」
またヨシヨシと頭をなでられた。雪夜君にとって、こんなことは些細な慰めかもしれないけど、僕にとっては貴方からもらえる優しさは、心がえぐられるくらい苦しく嬉しいよ。こんにちはとさよならがいつも同居してるような、もらった瞬間に失うことを考えるような。いつか消える優しさだから。それでも、享受したい。いつか消えても、僕の心に輝く瑠璃の鉱石みたいに残り続けるから。
「よし、じゃ帰るか」
「はい」
僕たちは、ホテルクリスマスを出た。19時を回っても辺りはまだまだ賑やかだ。新宿は夜の町、これからきっと始まる処。
「明日の2時だぞ」
「え?」
「スマホ買い替える約束しただろ?」
「はい」
「もしなんかあったら、これ、俺の番号」
ほいっと、手渡された名刺の裏に手書きの番号が記されてる。僕の手の中のそれが金の札束の如く僕にとっては貴重なもので、大事に大事に、鞄の奥底にしまった。胸に鞄を抱き締める。帰り道でどんな暴漢に会おうとも、必ずこの鞄だけは死守するつもりだ。
じゃ、っと、雪夜君はさっぱりとした挨拶をした。僕は付いて行きそうになるのを堪えて地面に突き刺さった杭の如くそこを動かなかった。
雪夜君の後ろ姿が遠ざかるまでずっとその場で立って見てたら、時折、雪夜君が振り返って笑ってる。その姿が角を曲がって見えなくなるまで、僕は古い映画の別れのシーンみたいにずっと立ち続けた。
あぁ、これが一生の別れになりませんように。また明日、本当に会えますように。雪夜君からもらった名刺がはいった鞄を胸に抱き締めて、僕は、繁華街へと歩いた。部屋に飾るフォトフレームを買うのだ。真っ白なやつがいい、いつみても、雪夜君を思い出せるから。
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