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夜鳥すぱり

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32 レンレン

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 Rainの画面にポコンと1つのアカウント、丸のなかに有る写真は……これは、ウサギだろうか? 白くてホワホワの赤ちゃんウサギが真ん中にぴょこんと写った写真。

「ウサギですか?」
「うん、レンレンだよ、俺の家族」
「レンレン……バニー!? 」
「そそ、可愛いだろ?」
「はい、え? もしかして、雪夜君がリアルに飼ってるんですか?」
「うん」
「わぁ、かわいい」
「だろっ、このホワホワの真っ白な手がさ、まじで艶々でさまじ可愛いんだよ」

いやいや、可愛いのは雪夜君です、なにその蕩けきった顔は。イケメンが小動物好きとか、好感度UP案件だよ、も、ギュインギュイン上がって天井越えたよ。一生懸命、レンレンの可愛い所を説明してくれる、雪夜君が可愛い過ぎてつらい。なんなの、何処まで僕を惚れさせるきなの。心臓が痛くなってきたよ。

「レンレン見たい?」

そんなキラキラした目で、聞かないで。僕が見たいのは、レンレンの事を誇らしげに語る雪夜君です。でも、もちろんレンレンもみたいけど。

「はい」
「じゃ、俺のマンション行く?」
「……え?」
「レンレン見たいんだろ?」
「は、ぃ」
「じゃ、行こう、こっち」
「……」

え? えーーーっと、まってまって。レンレンを見るのに、雪夜君のマンションへ行くだって!?

僕は、ちょっともう意味が解らなさすぎて、意気揚々と歩く雪夜君に従う従者のごとく、後を追った。気のせいでなければ、雪夜君の後ろ姿が浮き足立ってるように見えるのは、僕の目がおかしいのだろうか。

新宿三丁目の方の路地を何度も曲がって、到達した10階建てのマンション、僕の住んでる学生アパートより、立派で、気後れしつつ付いてはいる。

カギで自動ドアを開けて手招きする雪夜君の後に続く。二人でエレベーターに乗る、狭い密室にドキドキして目線を彷徨わせ、ガゴンと揺れて着いた5階へ降り立ち、角部屋の扉を雪夜君が開けて、僕を招いた。

「あんま、綺麗じゃないけど、どうぞ」
「は、はぃ、お邪魔します」

ここが、雪夜君が暮らすマンション。白い木製の床はお洒落で、玄関には靴が所せましと積み上がり、雪夜君のオシャレ度が伺える。靴を脱いで、玄関から直結した廊下を歩き、内扉の中へ入ると、十二畳程のキッチンリビング、窓辺にソファーとテーブル壁際にテレビ、キャビネットには数札の本とCD、Blu-rayディスク、ゲーム機、が並んで、ソファーの横にゲージがあって、そこから藁の匂いが漂ってる。懐かしい匂いだ。草の中を駆けた子供時代の記憶がふと、甦る。

「レンちゃん、ただいま」

雪夜君が、ゲージの中に声をかけてて、激萌えなんだが。レンレンのこと、レンちゃんて呼ぶんだ。はぁ、もう、可愛い。やばいなこれ。

ケージの中から、真っ白なウサギがぴょこんとでてきて、雪夜君が、扉を開けてヒョイっと抱っこした。

「ほら、なるみ、レンレン」
「はわわわ、かわい」

白い丸々と太った清らかなうさぎと、その兎を抱っこして微笑む天使の雪夜君のコラボに、もう僕は目が乾燥してしまうのも忘れ、まばたきもせず、ガン見しました。すごい、すごい景色が目の前にある。

なんかもう、全てがキラキラしてて、僕なんかが、この天国の床を踏んでいて良いのかと罪悪感を感じる。僕の靴下臭くないかな。どうして昨日念入りに靴を洗わなかったんだろう。後悔しかない。心の中、絶望と、幸福が同居して、最終的には、幸福が勝った。目の前の雪夜君とレンレンみて、幸福が勝ちましたとも。圧勝。


それにしても、僕は最近、凄いことが立て続けに起きてしまって、幸福の限界点を常に越えているきがする。頭がオーバーヒートしそう。

そもそもは、あの日あの時、レンタルアルファシステムに登録しなかったら、こんな尋常じゃない幸福には出会えなかった。でかした、あの時の僕。たまには欲望に忠実になってみるもんだ。最強の大吉をずっと引き当ててるような日々。人生のボーナスタイム……いつか終わりはくる、反動はくる、解ってる解ってるけど、目の前のチャンスを全力で掴んでいたい。たった一度の人生だ、迷惑をかけないなら……良いよね。








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