今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり

文字の大きさ
36 / 50

36

しおりを挟む
 雪夜君の申し出は、有難いけれど、流石に社長さんと住んでる所へ僕まで転がり込むのは気がひけるし、なにより僕の心臓がもたない。

「いえ、そんな、申し訳ないですから」
「まぁ、突然は無理だよな、でも覚えといて、何処にも行けなくなった時はここがあるって」

そんな最後の受け皿みたいに。僕にとっては逆です、最終的に到達したい憧れのステージみたいな所へ、そんな気軽に来れないです。今日はたまたまレンレンを見せてもらう為に上げてもらえたけど、本当に偶然だって理解しているので、勘違いしないから安心してください。

それにしても、雪夜君は本当にどこまで優しい人なんだろう、こんなポッと出のオメガを養おうとしてくれるなんて。慈愛に満ち溢れていて拝まずにあられない。それはそれとて、とにかく一緒に暮らすなんて畏れ多すぎるので、ここは、きちんとお断りを。

「お気持ちだけで充分です」
「そっか……なるみが弟君と上手く距離をとれるなら大丈夫だよな、お節介しちゃったな」

「お節介だなんて、お申し出は、本当に、心のそこから嬉しかったです。雪夜君は本当に優しいです」
「なるみが心配なんだよ、人の好意に対してかなり鈍感だから」

「はぁ、好意を持たれたことがないので」
「ほらな、そーゆーとこだよ、俺だって好意を持ってないヤツに一緒に住もうなんて言わないぞ」

ホークをグリングリンスパゲッティに突き刺しながら、雪夜くんは、ちょっとだけ、拗ねたように口を尖らせた。いやでも、好意を……雪夜君は、僕に憐れみで言ってるだけじゃないのです?


「エ、え?」
「だからさ、俺はなるみに好意を持ってる、仕事抜きで会いたいと思うし、なるみが幸せになる手伝いをしたい、その相手が俺だったら良いと思ってるけど」

「????」
「つまり、俺はなるみが好きだから、解った?」

「好きって……僕、男オメガですよ?」
「何がだめなんだ? 俺はアルファだし、ゲイだし、男オメガは伴侶としたら最高なのに」

「はんりょ……伴侶!? 雪夜君の!? まさか、そんな、畏れ多いこと」

高望みにも程がある。雪夜君の伴侶なんて、そんなの、5万分の1の確率ですよ? そんな高貴な位置に僕が座れるわけない。お内裏様の横には高貴なお雛様じゃないと、誰も祝ってくれません! 雪夜君は夢を売る仕事ですもんね、僕にも平等に夢をくれるんですね。優しいなぁ。でもそんなあり得ない夢は流石に……現実味なさすぎて、ファンタジーです。

僕がぼやぁっと、していると、雪夜君はさらに、質問を重ねた。

「鳴水は、正月は実家に帰るのか?」
「いいえ、とくに予定は無いので家に居ると思います」
「なら、30から泊まりにおいで」
「え?」
「月曜日あたりから発情期なんだろ?」
「そ……ですけど、雪夜君だってそんな年末忙しいですよね」
「たまに出かけるかもしれないけど、予定は空けたっていっただろ?」

予定は空けたって……あ! 発情期に一緒にいるっていう、あの夢みたいな提案のはなしですか! まさか、本気で? 僕はおろおろおろと、視線を彷徨わせた。

「リップサービスかと思ってました」
「はーーーだーかーらーそゆとこだよ、なるみはさぁ、ちょっと本当に、びっくりするレベルの鈍感だな」


雪夜君がケラケラ笑うから、僕もつられてヘラリと笑った。本当に年末年始会ってくれるんでしょうか? 僕にとっては、年末ジャンボ宝くじが当たるよりも嬉しいです。しかも、実は1月1日は僕の誕生日なので、あわよくば……一緒に過ごせるのでは、です。夢だった、好きな人と誕生日を過ごすことも、年を超す事も。雪夜君は僕の初めてと夢をどんどん叶えてくれる。ドラ○もんなんですか、ちがう。やはり神様なんですよね。


あぁ、それにしても、ここ最近の僕のボーナスタイムはいったいいつ終わりがくるのでしょう。こんなもらいすぎてしまって、だんだん怖くなってきました。幸せも過ぎると恐怖になるんですね。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました

小池 月
BL
 大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。  壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。  加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。  大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。  そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。 ☆BLです。全年齢対応作品です☆

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

アルファ王子に嫌われるための十の方法

小池 月
BL
攻め:アローラ国王太子アルファ「カロール」 受け:田舎伯爵家次男オメガ「リン・ジャルル」  アローラ国の田舎伯爵家次男リン・ジャルルは二十歳の男性オメガ。リンは幼馴染の恋人セレスがいる。セレスは隣領地の田舎子爵家次男で男性オメガ。恋人と言ってもオメガ同士でありデートするだけのプラトニックな関係。それでも互いに大切に思える関係であり、将来は二人で結婚するつもりでいた。  田舎だけれど何不自由なく幸せな生活を送っていたリンだが、突然、アローラ国王太子からの求婚状が届く。貴族の立場上、リンから断ることが出来ずに顔も知らないアルファ王子に嫁がなくてはならなくなる。リンは『アルファ王子に嫌われて王子側から婚約解消してもらえば、伯爵家に出戻ってセレスと幸せな結婚ができる!』と考え、セレスと共にアルファに嫌われるための作戦を必死で練り上げる。  セレスと涙の別れをし、王城で「アルファ王子に嫌われる作戦」を実行すべく奮闘するリンだがーー。 王太子α×伯爵家ΩのオメガバースBL ☆すれ違い・両想い・権力争いからの冤罪・絶望と愛・オメガの友情を描いたファンタジーBL☆ 性描写の入る話には※をつけます。 11月23日に完結いたしました!! 完結後のショート「セレスの結婚式」を載せていきたいと思っております。また、その後のお話として「番となる」と「リンが妃殿下になる」ストーリーを考えています。ぜひぜひ気長にお待ちいただけると嬉しいです!

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

【完結】浮薄な文官は嘘をつく

七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。 イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。 父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。 イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。 カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。 そう、これは─── 浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。 □『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。 □全17話

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

泡にはならない/泡にはさせない

BL
――やっと見つけた、オレの『運命』……のはずなのに秒でフラれました。――  明るくてお調子者、だけど憎めない。そんなアルファの大学生・加原 夏樹(かはらなつき)が、ふとした瞬間に嗅いだ香り。今までに経験したことのない、心の奥底をかき乱す“それ”に導かれるまま、出会ったのは——まるで人魚のようなスイマーだった。白磁の肌、滴る水、鋭く澄んだ瞳、そしてフェロモンが、理性を吹き飛ばす。出会った瞬間、確信した。 「『運命だ』!オレと『番』になってくれ!」  衝動のままに告げた愛の言葉。けれど……。 「運命論者は、間に合ってますんで。」  返ってきたのは、冷たい拒絶……。  これは、『運命』に憧れる一途なアルファと、『運命』なんて信じない冷静なオメガの、正反対なふたりが織りなす、もどかしくて、熱くて、ちょっと切ない恋のはじまり。  オメガバースという世界の中で、「個」として「愛」を選び取るための物語。  彼が彼を選ぶまで。彼が彼を認めるまで。 ——『運命』が、ただの言葉ではなくなるその日まで。

処理中です...