オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。

黒茶

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決意。

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 街に先輩と出かけてから数日後、
またヴァルター先輩にいつものガゼボに呼び出された。

 オレがガゼボに行くと、先輩は先に椅子に座って、遠くを眺めていた。
なんだかいつもより表情が硬いような・・・気のせいかな?

 先輩はオレに気付くと、

「座って」

とオレに着席するように促し、一息置いてから、予想もしないようなことを話し始めた。

「そろそろこの勉強会を終わりにしようと思う」

先輩があまりに突拍子もないことを言うので、
オレは数秒、反応できずにいた。

「え・・・なんでそんなことを言うんですか!?」

「もう潮時かなと思って」

「潮時ってなんですか。
なんでそんなことを言うんですか?
オレとはもう会いたくないってことですか!?」

オレは反射的に椅子から立ち上がって先輩の前に立っていた。

「そんなことは・・・」

座ったままの先輩がオレを見上げながら、言いよどんだ。

「オレは!」

衝動的に大きな声で叫んでしまってから、
ちょっと冷静になろうと右手を胸にあてて息を吐き、
オレはゆっくりと言葉をつむいだ。

「オレはもっと先輩と一緒にいたいです。

もっと先輩のことが知りたいです。

先輩の一番近くにいたいです。

オレなんかがこんなことを言うなんておかしいですけど」

すると先輩が少し怯えたように言った。

「それは・・・君が俺に好意をもっている、ということか?」

そんな先輩の姿をみて、
オレははっとなった。

そうだよ、
先輩は自分に好意を向ける相手を心底嫌っていたじゃないか。
だから先輩への気持ちは隠そうって決めたのに。
やはり先輩へ隠すことなんてできなかった。
恐れていたことが起きてしまった。

「先輩は自分に好意を寄せられるのは心底イヤでしたもんね。
だからオレの気持ちを伝えるつもりはなかったんですけど、
やっぱ、オレはダメですね。
なんでもしゃべっちゃう。
先輩のことが好き、なんて気持ち、おさえることができませんでした」

ああ、終わった。
もう先輩はオレのことを他のヤツと同じように嫌うんだろう・・・

とオレが絶望しかけたとき。

先輩が立ちあがって、オレをぎゅっとだきしめた。

「本当に、

本当に俺のことが好きなのか?

俺も・・・クラウスのことが好きだ。

ずっと好きだった。

他のヤツからの好意なんてうれしくもなんともないのは事実だが、
クラウスからの好きは・・・死ぬほどうれしい」

本当に?
本当に先輩のことを好きでいてもいいの?

信じられないという驚きと、
想いが受け入れられた喜びに感情が追い付かなかった。

先輩も同じ気持ちだったかもしれない。
心なしか、声も震えていたし、手も震えていたような気がした。

顔が、腕が、胸が、熱い。

オレも先輩の背中をぎゅっとだきしめた。

お互いがその喜びをかみしめ、少し冷静になった頃に、

オレは、

「いや、死なれたら困ります」

と言った。

先輩とオレはお互い顔を見つめ合い、ふふっと笑った。

 先輩が少し不安そうに、

「クラウスは君の親友のルーカスが好きだったのではないのか?」

と聞いてきた。

オレはどう話したらいいのか、ちょっと考えてから話し始めた。

「そうなんですけどね、
ルーカスは好きですけど、親友のままでいいんです。
でも先輩は違う。
先輩にとって、もっと特別な存在になりたいし、
オレはもっと先輩の近くにいきたいし、
先輩にもっと触れたいし、
触れられたい」

オレは真剣な顔でそう言いながら、
オレは先輩の頬に右手をそっと添えた。

そんなオレを先輩はびっくりしたような目で見ていた。

ちょっとやりすぎたか。
でもこれが、オレの今の心からの望みだ。
本音を言うことも、先輩の頬に触れることも、止められなかった。

すると先輩は、
オレの右手に左手を添えて、オレの右手に自身の頬をあてた。
そして微笑んだ。
いつのもの作り笑いではない、心からの微笑み。

「クラウス、キミは気付いていたか。
君にはオレが息を吐くようにウソをつく人間だと出会ったときからバレていたが、
オレは君には一度もウソをついたことがないんだ。
君といるときだけは、
心の底から、
本当の自分でいられるんだ。
クラウス、
これからも君にだけはウソは言わないと誓うよ」

そう言って手をそっとはなし、
今度はオレの頬に手を添えてオレをみつめた。

そしてそっと口づけをした。
ふれるだけの、優しい口づけ。

そしてオレたちは再び抱きしめあった。

「クラウスが俺の腕の中にいてくれるなんて信じられない。
この気持ちは諦めなくてはならないと思っていたのに。

ああ、
このままクラウスを俺だけしか入れない部屋に閉じ込めたいくらいだ」

先輩が感極まったように口走った。

「ふふ、
オレは先輩にだったら閉じ込められてもいいですよ」

とオレが笑いながら言うと、
先輩は、

「そんなことを軽く言うな!」

と怒った。

そんなぁ、先輩が言い出したことなのに。理不尽だ!




------------------------------
ここまでお読みくださり、ありがとうございます!
晴れて想いが通じ合った二人、
次回から新章になります。
物語的にはちょうど折り返しになります。

とうとう乙女ゲームの本編スタートです!
ええ、乙女ゲームがこれから始まるというのに、
すでに主人公と攻略対象が両想い状態でございます。
ここからつっこみどころ満載ラブコメになる予定です!

もうしばらく、
意外と積極的な受けであるクラウスと
意外とヤンデレ属性ありそうな攻めである
ヴァルター先輩とのお話にお付き合いください~
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