オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。

黒茶

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さすがにヒミツにできなくなってきた。

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 ヴァルター先輩に

「新しい予言がでた」

と伝えた放課後。

オレたちはいつものガゼボで今後の対策を考えていた。

「先輩、予言に出てきた実習って、あの実習のことですよね!?
魔獣の大量発生なんて聞いたこともないですよね。
これが本当だとしたら、ヤバくないですか?」

「ああ、そうだな・・・
魔獣は1匹2匹なら俺でもなんとかなるが、
大量発生となるとさすがに俺だけでは・・・

仕方ない。
アイツらに、クラウスの予言のことを話すか」

「アイツらって?」

「アルベルトとレグルスだ。
俺達3人が事前に把握していれば、
何かあってもなんとか対処できるだろうし。

教師や上層部に伝えるのはもうちょっと待ってくれ。

ああ、でも、クラウスの存在が知られてしまうのは嫌だ・・・」

先輩は冗談っぽく、でも悲壮感たっぷりに言った。
先輩、どんだけだよ。


次の日、ガゼボにヴァルター先輩に加えてアルベルト先輩とレグルス先輩も座っていた。

アルベルト先輩が、

「ずーっと放課後コソコソしてるなとは思っていたけど、
ヴァルターはこんなところで愛を育んでいたんだね」

とヴァルター先輩に美しい笑みをたたえながら言った。

「はぁ・・・だからアルベルトには言いたくなったんだ」

とヴァルター先輩はうつむきながら右手で頭を押さえつつ、つぶやいた。

「まあまあ、二人とも。とりあえずクラウス君、
ヴァルターから簡単に話は聞いたけれど、
改めて話を聞かせてもらってもいいかい?」

とレグルス先輩が言った。

この3人が会話しているのは初めてだけど、こんな感じなんだ。
ヴァルター先輩がオレと話すときよりもさらに気安い感じがする。
先輩の新たな一面が見られてなんかうれしい。

「えっと、
オレが先輩方の前に『ステータス画面』っていうのが見える、っていうのは
ヴァルター先輩から聞いてますか?」

「ああ、聞いている。
試しに私の『ステータス画面』というのに何が書かれているか、
教えてくれないか?」

とアルベルト先輩が言った。

「えっと、
アルベルト先輩は・・・

攻略対象
アルベルト=メッテルニヒ
メッテルニヒ家の嫡男
4歳年下のジークハルトは弟
全属性の魔法が使える、魔法の天才
好物はスイーツ
見た目は穏やかそうに見えるが、
自分の目的のためなら手段を選ばない狡猾なところがある

って書いてありますね」

それを聞いてヴァルター先輩とレグルス先輩がふき出した。

「狡猾・・・すごい・・・的を得ている」

レグルス先輩が笑いをこらえきれない様子で言った。

アルベルト先輩はというと、

「確かに正確な情報だね。興味深い」

とむしろ面白がっているようだった。

「じゃあ俺の『ステータス画面』の内容も教えてくれるかい?」

とレグルス先輩が言ったので、

「えっと、レグルス先輩は、

攻略対象
レグルス=ゲーゲンバウアー
ゲーゲンバウアー家の嫡男
3歳年下のラルフは弟
魔法が得意な家系で、
光、火、水、風の魔法が使える他
独自に植物を操る魔法が使える
慈愛にあふれ、誰からも好かれている

ですね」

と答えた。

「ほう、皆の前で植物魔法は使ったことはなかったはずだが、
そういうのも開示されているのだね」

とレグルス先輩が言った。

「というか、
俺が人間嫌いで、アルベルトが狡猾で、レグルスだけひいきじゃないか?」

とヴァルター先輩が文句を言う。

「でも事実でしょ?」

とレグルス先輩がにっこり笑って返す。

そんなやりとりを見ながら、
レグルス先輩はなんでこの中にいるんだろう・・・と思いつつも、
この3人だからこそ、いいバランスの友人たちなのかな、とも思う。

「あ、そういえば、
お二人ハートが増えました。
前は半分だった気がするんですけど、
今は1コになりましたね」

とオレは言った。

そう、ハートが増えた。

ヴァルター先輩が、

「前にもそのハートについて言っていたな。
俺のハートに変化はあるのか?」

と、オレに聞いてきた。

「うーん、なさそうですね。
えっと先輩は・・・変わらず15個のハートですね」

なんなんだろう、と気にはなるけども、
ハートについてはヒントもなにもないので、
オレたちは一旦スルーすることにした。


 レグルス先輩が、

「じゃあ予言の話に戻ろうか。

『実習で魔獣が大量発生するから、
攻略対象たちと撃退しよう』

と書かれている、ということでいいんだね?」

と聞いてきたので、

「そうです。そのとおりです」

とオレは首をぶんぶん縦に振った。

「攻略対象っていうのはなんなんだ?」

と今度はアルベルト先輩が聞いてきた。

「よくわからないんですが、
『ステータス画面』に
『攻略対象』
って書いてあるんです。
だから『ステータス画面』が見える人が攻略対象っていうことなんでしょうか」

オレが答えると、

「攻略?攻略しろということなのか。
何を攻略したらいいんだ。
しかし対象ということは私が攻略される側ということなのか・・・?
攻略されるようなものはなにもないが。
私自身がダンジョンではあるまいし」

とアルベルト先輩は腑に落ちない顔をしながらつぶやいた。

ヴァルター先輩が

「攻略対象が『ステータス画面』が見える人間だとすると、
俺達3人、レグルスの弟のラルフとその友のエリアス、
あとはアルベルトの弟のジークハルトか。

この6人とクラウスがいれば、
大量発生にも十分対応できるだろう」

と言った。

レグルス先輩も賛同した。

「そうだね、
本当に大量発生が起きたとして、

1、2年生のところは入学したばかりで心もとないから
アルベルトとジークハルトの兄弟で対応して。
3年生は俺がフォローしよう。
4年生はラルフとエリアスの二人で十分対応できるだろうから、
5、6年生はヴァルターとクラウス君にお願いするよ。

それでどうかな?」

とレグルス先輩が提案したので、

「それで問題ない」

と残りの2人はうなづいた。
オレもウンウンと従った。

「本当は魔獣の大量発生なんて起きなければいいのだが・・・」

とヴァルター先輩がつぶやいた。

「そうですよね・・・」

となんだかオレが申し訳ない気分になった。
そんなオレの様子にヴァルター先輩は気付いてくれた。

「クラウスがそんな顔をする必要はないんだ、
魔獣自体は俺達でもなんとかなる。
そのためにたくさんの鍛錬を積んできた。

ただ、
この規模の予言ができてしまうとなると、
王族をはじめ、この国の上層部に
クラウスのことを報告しなければない。

それがイヤでイヤでたまらない・・・」

ヴァルター先輩がつらそうに言う。

「おいおい、
私の友がこんなに独占欲の強い人間だとは思わなかったぞ」

とアルベルト先輩。

「ほんと、
友の意外な一面を見させてもらったね。
クラウス君、愛されてるね」

とレグルス先輩がにっこり笑ってオレに言う。

最初に会ったときは人間嫌いのうさんくさい人だなと思っただけだったのに。
オレも意外です。

・・・まあそんな先輩がいとおしくてたまらないんですけどね。

というのは黙っておいた。
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