オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。

黒茶

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魔獣の森での実習。

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 とうとう、魔獣の森での実習の日を迎えた。
当然だけど、魔獣の大量発生なんていう予言のことはオレたちしか知らないから、
みんな楽しそうに参加している。
ルーカスも、

「今年こそは魔獣退治で活躍したいな!
あと、夜にみんなで野営テントで寝るの、結構すきなんだよなぁ」

なんて軽口をたたいていた。
 
 オレは

「そうだな、楽しみだな」

なんて相づちをうちつつ、内心はハラハラが止まらなかった。

本当に魔獣が大量にでたらどうしよう。
でもヴァルター先輩と一緒に、アルベルト先輩やレグルス先輩と一緒に、
準備はしてきた。
作戦も練ったし、鍛練もした。
きっと大丈夫。

 そして始まった実習。

 ・・・予言通りになってしまった。

 大量の魔獣たちが、オレたちに向かってきたのだった。

「ちょっと、どういうことだよ、こんなの聞いてねぇぞ!」

とルーカスがわめく。

だよな。オレだってそう思うよ。

同級生や先生が慌てている中、

レグルス先輩とアルベルト先輩が走ってきた。

 アルベルト先輩が

「ジークハルト、私たちは1年生と2年生のフォローに行くぞ。
ついてこい!」

と弟であるジークハルトに呼びかけた。

 ジークハルトは無言でアルベルト先輩の後をついていった。
 
 レグルス先輩が、

「俺がこのあたりのフォローをする。
みんなは魔獣を無理に倒そうとせず、
自分の身を守ることを最優先にして!
大丈夫だから!
この危機を乗り切るよ!」

とオレ達に呼びかけた。

さすがレグルス先輩だ。
パニックになりかけていた同級生たちが落ち着きを取り戻し、
目の前の状況に対応できるようになっていた。

 そのとき、
オレの横にヴァルター先輩が来ていた。

「クラウス、行くよ」

オレとヴァルター先輩は、ルーカスをはじめとする同級生に気付かれないように、
そっとその場を離れた。


そしてオレ達は5年生、6年生たちがいる区域にやってきた。
このあたりはそもそも学年が上で、騎士団への入団が間近な学生ばかりということもあって、
魔獣たちにパニックになる者もほとんどおらず、
粛々と魔獣に対応しているように見えた。

「俺はアルベルトやレグルスみたいに、人の上に立って皆を鼓舞するようなタイプじゃないからね、
こっちはこっちで勝手にやらせてもらうよ」

とヴァルター先輩が言うと、
水魔法、闇魔法を次々と展開して、
バッタバッタと魔獣を倒していった。

正直、オレはやることがないくらいだった。

先輩の戦う姿は美しく、気付けば見とれてしまう。

そんなオレに先輩は気付いたのか、

「俺に見とれてくれるのはうれしいけど、
さすがに状況が状況だからな、

クラウスを守りきりたいのは山々だけど、
絶対に守りきれると約束できないのが己の未熟さだ。

だから目の前の敵に集中してくれ。

絶対にキズ一つ負ってくれるなよ!!」

と言った。

プレッシャーがすごい。

しかし、先輩があまりにも魔獣を片っ端から倒していくものだから、
他の5、6年生も

「あれ?急に魔獣が減ったような?なぜだ?」

と困惑しはじめ、

そうこうしているうちに、
オレが魔獣とろくに対峙することなく、
この区域の魔獣は討伐されてしまった。

「先輩、終わったみたいですね」

とオレがヴァルター先輩に声をかけると、
先輩は荒い息をしたまま、その場に座り込んだ。

「さすがに少し疲れた」

と笑顔を作りながら先輩が言うので、

「戦う先輩の姿、めっちゃかっこよかったです」

とオレはうっかり思っていたことを言ってしまった。

すると先輩はオレの腕を引っ張って抱き寄せた。

「少しだけ、充電させて」

「こんなことで充電できるならいくらでもいいですよ」

「ケガはない?」

「はい、先輩のおかげで、
ケガどころか、
服が汚れるスキもありませんでした」

「それはよかった。安心した」

しばらく先輩はオレを抱きしめたままじっとしていた。

「予言、本当になってしまったな。

クラウスのことを父上を通じて王族の方々へ報告しなければならなくなってしまった。

これから大変なことがあるかもしれない、いや、あるだろう。
でもいつでも俺がクラウスのそばにいるから。いさせてほしい」

「大丈夫ですよ、先輩がいてくれるならなんとかなります。
オレ、結構楽観的な性格なんですよ」

オレが先輩の背中をぎゅっとおさえながら言うと、

「そうか、俺の覚悟の問題なんだな」

と先輩がつぶやいた。


 他の区域も討伐が完了したようで、
アルベルト先輩とレグルス先輩も戻ってきた。

 レグルス先輩が、

「こちらの区域は特に被害もなく終わったよ。
クラウスの同級生たちも頑張ってくれた。

そちらはどうだった?」

と言うので、ヴァルター先輩が、

「ああ、問題なく終わった」

と答えた。

「ところで、アルベルトの様子が何かおかしくないか?」

とヴァルター先輩が言う。

確かに、アルベルト先輩、なんだか元気がない。落ち込んでるっぽいような・・・
あのアルベルト先輩が?まさか。

「ああ、さっきの魔獣との戦闘で、
ジークハルトの潜在能力がアルベルトより勝っていると気づいてしまったようだ。
アルベルトは弟であるジークハルトに対して絶対的な自信を持っていたからな、
それがショックみたいだよ」

とレグルス先輩が説明してくれた。

ひぇー。
ジークハルト、強いとは思っていたけど、まさかお兄さんであるアルベルト先輩以上とは。
あいつ、不愛想なくせにすごいな。まあ不愛想は関係ないけど。

「もう、あいつとは口きいてやらん。
この私より強いなんて、認めない!認めたくない!」

とアルベルト先輩が拗ねていた。

多分、こんな光景はめったにないのではないか。
オレなんかが間近で見てはいけないものの気すらする。

「まあまあ、弟の成長を見守るのが兄だぞ」

とレグルス先輩はフォローしたけれど、

まさかこのアルベルト先輩の拗ねた結果から起きた兄弟の確執が、
今後数年にわたり続くとは、
このときのオレ達はだれも想像できなかったのである。


そして後日、
ヴァルター先輩はお父上を通してオレのことを国の上層部へ報告したらしい。

そして、かなり大変なことになってしまったらしい。

なんとオレは非公式とはいえ、
皇帝陛下と王太子殿下に謁見することになってしまった。




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ここまでお読みくださり、ありがとうございます!!

このアルベルトくんとジークハルトくんの兄弟げんかの結末は、
(いや勝手に兄が拗ねてるだけですけど)

同じくアルファポリスさんで公開させていただいております、

「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」

にリンクしておりますので、よろしかったらこちらもお願いします。

という唐突な宣伝でした!


このお話も佳境に入ってまいりましたので、
乙女ゲームが進行しつつあるのに、
すでに好感度カンスト済みの両想いの二人がイチャイチャしてるお話を
もうしばらくお楽しみいただければ、と思います!



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