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あれから数年後、とある夜会にて。
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今日はこのシャルフェンブルク帝国の皇女様の婚姻披露の夜会が開かれていた。
お相手は長年遠距離恋愛をしていたという元黒竜騎士団団長のダンテ様だ。
オレとヴァルター先輩も公爵家の人間として、この夜会に出席していた。
(先輩が魔法騎士学院を卒業して10年以上経つし、
オレが先輩と籍を入れてオレが公爵家の人間となって8年ほどが経った。
でもオレは今でもヴァルター先輩を先輩と呼んでいる。
これだけは譲れないこだわりだ。)
社交の場でもあるのでオレと先輩は愛想よく挨拶してまわる。
これが表の仕事でも裏の仕事でも大事な根回しにつながるのだ。
そしてこの歓談の場が終わりかけた頃。
オレは懐かしい人物を見かけた。
「おーい、ルーカス!久しぶり!」
オレが大きめの声で呼びかけると、
ルーカスがこちらを振り返って小走りで走ってきた。
あの頃となにも変わっていない。やや童顔の、まぶしい笑顔だ。
「クラウス!久しぶり!
え、最後に会ったの、いつだっけ?
もしかしてクラウスの結婚式?
オレが騎士団に入ってから全然会えてなかったんもんな。
普段は黒竜騎士団の宿舎のある辺境の地にいるしさぁ」
「ほんとだよ、全然会いに来てくれないんだもん。
ルーカスは薄情だなぁ・・・
てか今日もめっちゃ遅刻してるし!」
するとルーカスは後ろに立っていたジークハルトのほうをちらっと見ると
ごまかすように笑った。
「てか、クラウスが学院卒業して騎士団に入らずに
すぐにヴァルターさんと籍を入れるとは思わなかったよ。
あの頃から話には聞いていたけど、クラウス達ってほんとに恋人同士だったんだな・・・」
しみじみと言うルーカスに、オレは思わず噴き出した。
「なんだよ、信じてなかったのかよ」
「いやそうじゃないけど」
「ルーカスこそ、黒竜騎士団の副団長になるなんて、信じられないよ。
めちゃくちゃすごいじゃん!
しかも団長がジークハルトだなんて、
魔法騎士学院の同級生として、まわりに自慢したくなるよ」
「いや、オレには荷が重すぎる役職だよ・・・
ジークに助けてもらいながら、なんとか、ってところだよ」
「へぇ。ジークハルトとうまくやってるんだな。
・・・公私ともに」
オレがにやっと笑いながらルーカスの耳元でささやくと、
「なんで知ってるんだよ!」
とルーカスが慌てた。
どうやら二人が恋人同士というのは当人たちはヒミツにしていたようだったが、
ルーカスはオレの旦那様の交友関係をすっかり忘れているようだ。
「ルーカス、ヴァルター先輩の親友が誰だったか忘れてないか・・・!?」
そう、幼い時から家同士のつながりで、ヴァルター先輩と、
ジークハルトのお兄さんであるアルベルトさんは親友なのだ。
そりゃあそういう情報はオレまで流れてくるもんだ。
「あー、そうかぁ、アルベルト団長・・・」
ルーカスが脱力してつぶやく。
「それに・・・ルーカスも黒竜騎士団の副団長になったのなら、
オレの本当の仕事も知ったんだろう?」
ノイエンドルフ家が王族直属の影の騎士を務めているという事実は、
騎士団の中枢である団長や副団長クラスになると周知されるのだ。
「あ・・・うん。今までオレ達を影から支えてくれていたんだな。
改めて礼を言うよ。ありがとう。
そしてこれからもよろしくな」
ちなみにオレが伝説の神子であったり、今でも聖獣たちを呼び出せたりするということは内密のままだ。
だからルーカスは、
「あんなに平凡な戦闘力で、よくそんな仕事が務まるな」
と思っているに違いない。
「それにしても、ルーカスとしゃべってると魔法騎士学院のあの頃に戻ったみたいだな。
ルーカスは全然気づいてなかったけど、
オレ、ルーカスのこと、恋愛的な意味でもちょっと好きだったんだぜ」
ひひひと笑いながらオレが言う。
「え?ほんとに!?
あー、確かにクラウスがオレに好き好き言っていた記憶があるけど、
そういうことだったのか・・・ゴメン、オレ、全然気づいてなくて」
とルーカスがちょっと赤面しながら言ったとき。
オレは正面と背後から殺気を感じた。
まずは正面。
「おい、それはどういうことだ」
ジークハルトがおそらく最大級の殺気を放ちながら、
オレに向かって最大級の低音ボイスで威嚇してきた。
ルーカスの背後から少し離れたところに立ってオレたちの会話を聞いていたはずなのに、
いつの間にかルーカスの横に立って、がっちりルーカスの腰に腕をまわしているし。
「いや、昔ね、昔。しかもちょっとだけね!」
とオレが慌ててジークハルトに言う。
そして背後。こちらも殺気がすごい。
「当然だ。俺とクラウスは相思相愛だからな、
お前のようなヤツが入る隙間なんてないんだ」
という声が聞こえてくる。
ヴァルター先輩が、今度はオレの腰に手を回しつつ、ルーカスにアピールする。
それを聞いたジークハルトが、
「お前のようなヤツってなんだ。
俺の大事なルークだ。
昔の親友だかなんだか知らんが、もうそんなのの出る幕なんかねぇ」
とふっかけてくる。
なぜか、ジークハルトとヴァルター先輩が、一触即発。
「待って、待って、二人とも落ち着いて、
ヴァルター先輩、昔の話だって。知ってるでしょ?」
オレが先輩に言うと、
「そうは言っても、なぜ今、それをルーカスに言うのかな?
クラウス、お前には教育的指導が必要なようだ・・・」
と、先輩は怖い笑みを浮かべながら言った。
ああー、なんでオレは何年経っても
「なんでも思ったことを口に出してしまうところ」
の悪癖が治らないんだよー!!!!
そんなオレ達のやりとりを見ながら、ルーカスは
「ほんと、クラウス、変わんないな」
と微笑みながらつぶやいた。
この後、なぜかルーカスまで教育的指導という名目で、
ジークハルトから手厚く溺愛されたのことは、オレは知る由もなかった。
----------------------------------------
アルファポリス様に投稿させていただいております、
世界観や登場人物がリンクしている
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」
「オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。」
この3作品が完結した記念に
数年後の番外編を各々の作品に投稿いたしました。
各登場人物たちのその後や、
あのときのネタバレなどをしておりますので、
3作合わせて楽しんでいただけたらうれしいです!!!
お相手は長年遠距離恋愛をしていたという元黒竜騎士団団長のダンテ様だ。
オレとヴァルター先輩も公爵家の人間として、この夜会に出席していた。
(先輩が魔法騎士学院を卒業して10年以上経つし、
オレが先輩と籍を入れてオレが公爵家の人間となって8年ほどが経った。
でもオレは今でもヴァルター先輩を先輩と呼んでいる。
これだけは譲れないこだわりだ。)
社交の場でもあるのでオレと先輩は愛想よく挨拶してまわる。
これが表の仕事でも裏の仕事でも大事な根回しにつながるのだ。
そしてこの歓談の場が終わりかけた頃。
オレは懐かしい人物を見かけた。
「おーい、ルーカス!久しぶり!」
オレが大きめの声で呼びかけると、
ルーカスがこちらを振り返って小走りで走ってきた。
あの頃となにも変わっていない。やや童顔の、まぶしい笑顔だ。
「クラウス!久しぶり!
え、最後に会ったの、いつだっけ?
もしかしてクラウスの結婚式?
オレが騎士団に入ってから全然会えてなかったんもんな。
普段は黒竜騎士団の宿舎のある辺境の地にいるしさぁ」
「ほんとだよ、全然会いに来てくれないんだもん。
ルーカスは薄情だなぁ・・・
てか今日もめっちゃ遅刻してるし!」
するとルーカスは後ろに立っていたジークハルトのほうをちらっと見ると
ごまかすように笑った。
「てか、クラウスが学院卒業して騎士団に入らずに
すぐにヴァルターさんと籍を入れるとは思わなかったよ。
あの頃から話には聞いていたけど、クラウス達ってほんとに恋人同士だったんだな・・・」
しみじみと言うルーカスに、オレは思わず噴き出した。
「なんだよ、信じてなかったのかよ」
「いやそうじゃないけど」
「ルーカスこそ、黒竜騎士団の副団長になるなんて、信じられないよ。
めちゃくちゃすごいじゃん!
しかも団長がジークハルトだなんて、
魔法騎士学院の同級生として、まわりに自慢したくなるよ」
「いや、オレには荷が重すぎる役職だよ・・・
ジークに助けてもらいながら、なんとか、ってところだよ」
「へぇ。ジークハルトとうまくやってるんだな。
・・・公私ともに」
オレがにやっと笑いながらルーカスの耳元でささやくと、
「なんで知ってるんだよ!」
とルーカスが慌てた。
どうやら二人が恋人同士というのは当人たちはヒミツにしていたようだったが、
ルーカスはオレの旦那様の交友関係をすっかり忘れているようだ。
「ルーカス、ヴァルター先輩の親友が誰だったか忘れてないか・・・!?」
そう、幼い時から家同士のつながりで、ヴァルター先輩と、
ジークハルトのお兄さんであるアルベルトさんは親友なのだ。
そりゃあそういう情報はオレまで流れてくるもんだ。
「あー、そうかぁ、アルベルト団長・・・」
ルーカスが脱力してつぶやく。
「それに・・・ルーカスも黒竜騎士団の副団長になったのなら、
オレの本当の仕事も知ったんだろう?」
ノイエンドルフ家が王族直属の影の騎士を務めているという事実は、
騎士団の中枢である団長や副団長クラスになると周知されるのだ。
「あ・・・うん。今までオレ達を影から支えてくれていたんだな。
改めて礼を言うよ。ありがとう。
そしてこれからもよろしくな」
ちなみにオレが伝説の神子であったり、今でも聖獣たちを呼び出せたりするということは内密のままだ。
だからルーカスは、
「あんなに平凡な戦闘力で、よくそんな仕事が務まるな」
と思っているに違いない。
「それにしても、ルーカスとしゃべってると魔法騎士学院のあの頃に戻ったみたいだな。
ルーカスは全然気づいてなかったけど、
オレ、ルーカスのこと、恋愛的な意味でもちょっと好きだったんだぜ」
ひひひと笑いながらオレが言う。
「え?ほんとに!?
あー、確かにクラウスがオレに好き好き言っていた記憶があるけど、
そういうことだったのか・・・ゴメン、オレ、全然気づいてなくて」
とルーカスがちょっと赤面しながら言ったとき。
オレは正面と背後から殺気を感じた。
まずは正面。
「おい、それはどういうことだ」
ジークハルトがおそらく最大級の殺気を放ちながら、
オレに向かって最大級の低音ボイスで威嚇してきた。
ルーカスの背後から少し離れたところに立ってオレたちの会話を聞いていたはずなのに、
いつの間にかルーカスの横に立って、がっちりルーカスの腰に腕をまわしているし。
「いや、昔ね、昔。しかもちょっとだけね!」
とオレが慌ててジークハルトに言う。
そして背後。こちらも殺気がすごい。
「当然だ。俺とクラウスは相思相愛だからな、
お前のようなヤツが入る隙間なんてないんだ」
という声が聞こえてくる。
ヴァルター先輩が、今度はオレの腰に手を回しつつ、ルーカスにアピールする。
それを聞いたジークハルトが、
「お前のようなヤツってなんだ。
俺の大事なルークだ。
昔の親友だかなんだか知らんが、もうそんなのの出る幕なんかねぇ」
とふっかけてくる。
なぜか、ジークハルトとヴァルター先輩が、一触即発。
「待って、待って、二人とも落ち着いて、
ヴァルター先輩、昔の話だって。知ってるでしょ?」
オレが先輩に言うと、
「そうは言っても、なぜ今、それをルーカスに言うのかな?
クラウス、お前には教育的指導が必要なようだ・・・」
と、先輩は怖い笑みを浮かべながら言った。
ああー、なんでオレは何年経っても
「なんでも思ったことを口に出してしまうところ」
の悪癖が治らないんだよー!!!!
そんなオレ達のやりとりを見ながら、ルーカスは
「ほんと、クラウス、変わんないな」
と微笑みながらつぶやいた。
この後、なぜかルーカスまで教育的指導という名目で、
ジークハルトから手厚く溺愛されたのことは、オレは知る由もなかった。
----------------------------------------
アルファポリス様に投稿させていただいております、
世界観や登場人物がリンクしている
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」
「オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。」
この3作品が完結した記念に
数年後の番外編を各々の作品に投稿いたしました。
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