皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと

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皇帝陛下の愛娘は、卑屈な少年を救う

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リリアージュはその日、ナタナエルから新しい宮廷魔術師長と新しく入った宮廷魔術師を紹介された。

宮廷魔術師長が新しくなったのは、先日のコトリバコ騒動でナタナエルが容赦なく宮廷魔術師長を斬り殺したからである。そして新しく入った宮廷魔術師は、人員補給である。

新しく入った宮廷魔術師は、新しい宮廷魔術師長の息子で、リリアージュと同じ歳である。そのため、リリアージュ専属の宮廷魔術師としてリリアージュに紹介された。このあいだのようなことにならないため、ボディーガードのようなものである。

「リリアージュです!よろしくね?」

「ラウル・ルーセルです、よろしくお願いします」

リリアージュは早速ラウルを連れて庭に出る。ナタナエルはそんなリリアージュを優しく見守っていた。

「ラウル!ラウルは宮廷魔術師さんなんだよね!魔法を見たいな!」

「…では」

ラウルは炎の柱を出したり、それを大量の水を降らせて消したり、雨を降らせた地面から植物を生やしたり、その植物から出来た実を風の刃で切り落とし収穫したりしてみせた。そしてリリアージュの様子を伺った。リリアージュは、ラウルの想像とは真逆の反応を見せる。ただ、純粋に感動していた。

「ねえ、ラウル!ラウルってすごいね!天才だね!リリーにも出来るかなぁ…」

「…え」

「リリーのパパも魔法の天才なんだって!リリーも、パパやラウルみたいにかっこよくなれる?」

「かっこいい…俺が?」

「違うの?」

「だって俺は…バケモノで…」

バケモノ。ラウルは同じ歳の子供たちからそう呼ばれていた。ラウルは魔法の天才だった。いや、鬼才といっていい。魔力量こそ一般より多い程度だが、もしもナタナエル程の魔力量があればナタナエルより強くなるかも知れない。それくらい魔法の適性があった。だから、やっかみを受けバケモノと呼ばれて迫害されていた。

「?ラウルは人間だよ?」

無邪気なリリアージュは、きょとんとして当たり前のことを言う。しかし、そのリリアージュの姿にラウルは毒気を抜かれた。

「…リリアージュ様は、純粋な方ですね」

「そうかなぁ?あ、それよりラウルの取ってくれた果物食べよう!」

リリアージュは先程ラウルが生み出した実を拾い、清潔なハンカチでごしごしと拭い半分に割るとラウルに差し出してくる。

「ふふ。そうですね、いただきます」

「いただきます!うーん、美味しい!リリー、これ好きだなぁ。ねえ、ラウルはやっぱりかっこいいよ!もっと色々見せて!」

「では、これを食べ終わったらお見せします」

「ラウル大好きー!」

ぱっと笑顔を浮かべるリリアージュ。ラウルは初めて、自分の魔法の才能を誇らしいと思えた。

なお、ラウルは宮廷魔術師長の息子であると同時に伯爵令息である。本人の魔術師としての実力も合わせて、皇配になるにはギリギリではあるが充分な素質があると言える。ナタナエルは気づかない。可愛い娘を将来、取られる可能性が一つ増えたことに。こうしてリリアージュは、今日も何も知らずに無邪気に笑う。ナタナエルはそれをただ愛しく思った。
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