1 / 1
大切な親友を裏切った後残ったものは?
しおりを挟む
あら、いらっしゃい。
こんなところに何の御用?
ここには廃墟しかないわよ。
え?私?
ふふ、災厄の魔女が滅ぼした国で何をしているのか気になるの?
私はただ、残された御霊が天に昇るのを見届けるだけよ。
あと少し。もう少しで、この国の人々の御霊は災厄の魔女の手によって天の国に旅立つわ。
災厄の魔女が作った、天の国。不幸のない楽園にね。
彼女は、ね。とても優しい人だったの。聖女、と呼ばれるほどにね。
奇跡の力を操り、誰よりも慈悲深く、すべての人の救済を望んでいたわ。
けれど。そんな彼女でも、すべての不幸を取り除くことは出来なかった。むしろ自分の手で不幸を生んでしまった。そんな彼女は絶望感に打ちひしがれた。
彼女は、誰よりも大好きだった人を失ってしまったのがきっかけで壊れてしまったのよ。
彼女はね、孤児院の出身だったの。その孤児院に慰問に来る貴族の夫人が連れてきていた女の子。貴族の少女とは親友だった。身分を超えてね。
その貴族の少女と何度も遊ぶうちに、貴族の少女が気付いたわ。彼女には特別な力があるって。奇跡の力、魔法。魔術とは違う、本物の奇跡。
彼女は孤児から聖女になった。けれど、貴族の少女とは相変わらず親友だった。
悪いのは、そう。彼。ああ、聞いたことがある?この国の王子、貴族の少女の元婚約者。彼は、貴族の少女より聖女を望んだ。
彼女は、貴族の少女には悪いと思いつつも王子に惹かれてしまった。両想いの二人、王子と聖女。貴族の少女は身を引いたわ。ええ、恨みはなかった。失望はしたけれど。
…貴族の少女の王子妃教育は終わっていた。貴族の少女は王家の闇も知っていた。婚約者で無くなった以上、貴族の少女は生きることを許されない。貴族の少女は、毒杯を賜った。
彼女は何も知らなかった。けれど、突然の親友の死に彼女は真実を知った。優しいと思っていた王子が、その結末を知りながら自分に言い寄っていたことも含めて、ね。
彼女は初めて本物の絶望を知った。自業自得、と貴方は笑うかしら。私もそう思うわ。でもね、それでも。私はあの子に、純粋無垢なままでいて欲しかった。絶望なんて、真実なんて知らないで欲しかったわ。ざまぁ、っていうの?それは望んでなかったのよ。本当よ?
けれど彼女は、それを知った。知った以上、彼女は変質するしかなかった。何故なら彼女は、無垢であることこそが強みだったのだから。
だから、彼女は災厄の魔女となった。この国すべての命を喰らい尽くし、この国を滅ぼした。王子は、最期の最期まで自分の罪を認めなかったけど。まあ、災厄の魔女の作る楽園に行けるのだからいいんじゃない?
そして、災厄の魔女は全ての魂を己の中に内包し、奇跡の力を使って空…宇宙へ旅立とうとしている。新たな星で、楽園を生み出すのよ。…単純で馬鹿なあの子にしてはよく考えたけど、あの子一人で世界を生み出せるか心配だわ。いえ、世界を生み出すのは今のあの子なら簡単ね。
…楽園に、出来るのかしら。あの馬鹿王子への憎しみを、あの子は忘れられる?…あの子と馬鹿王子の婚約を望んで、私の結末を知りながら何も言わずに見捨てたすべての人をあの子は赦せる?
私は、毒杯を大人しく受け入れたことで天の国の使者になったもの。その時にはもう憎しみとか怒りとかは何も感じなくなったけれど。あの子は…魔女に変質してしまったから、むしろそれらの感情は倍増しているでしょうね。
あの子が作る世界が、地獄にならないことを祈るわ。どうか、優しいあの子が望んだ楽園になってほしい。…本当よ?
ああ、隣国の王子様。私に横恋慕していながら、馬鹿王子と私の幸せを尊重して手を伸ばしてこなかった貴方。今、災厄の魔女の篭った繭が割れて、あの子が宇宙へ旅立つわ。…貴方の伸ばそうとして伸ばさなかったその手を、今だけ握らせて。共に祈りましょう。新たな楽園の、誕生を。
…行ったわね。結局、私に気付かなかったのね。でも、そんなものだわ。…私は天の国の使者。新たな楽園の誕生を見届けるだけよ。さあ、私はあの子を追いかけるわ。すべてを見届けて、天の主人に報告しなくてはいけないの。…貴方は、人と生きなさい。私はもう人ではないわ。一緒にはいられないの。
そう。貴方は幸せに生きて。その上で、もし天上の世界でまた会えたなら。色々な、お話を聞かせて。私が天の主人にそうするように。…さようなら。
こんなところに何の御用?
ここには廃墟しかないわよ。
え?私?
ふふ、災厄の魔女が滅ぼした国で何をしているのか気になるの?
私はただ、残された御霊が天に昇るのを見届けるだけよ。
あと少し。もう少しで、この国の人々の御霊は災厄の魔女の手によって天の国に旅立つわ。
災厄の魔女が作った、天の国。不幸のない楽園にね。
彼女は、ね。とても優しい人だったの。聖女、と呼ばれるほどにね。
奇跡の力を操り、誰よりも慈悲深く、すべての人の救済を望んでいたわ。
けれど。そんな彼女でも、すべての不幸を取り除くことは出来なかった。むしろ自分の手で不幸を生んでしまった。そんな彼女は絶望感に打ちひしがれた。
彼女は、誰よりも大好きだった人を失ってしまったのがきっかけで壊れてしまったのよ。
彼女はね、孤児院の出身だったの。その孤児院に慰問に来る貴族の夫人が連れてきていた女の子。貴族の少女とは親友だった。身分を超えてね。
その貴族の少女と何度も遊ぶうちに、貴族の少女が気付いたわ。彼女には特別な力があるって。奇跡の力、魔法。魔術とは違う、本物の奇跡。
彼女は孤児から聖女になった。けれど、貴族の少女とは相変わらず親友だった。
悪いのは、そう。彼。ああ、聞いたことがある?この国の王子、貴族の少女の元婚約者。彼は、貴族の少女より聖女を望んだ。
彼女は、貴族の少女には悪いと思いつつも王子に惹かれてしまった。両想いの二人、王子と聖女。貴族の少女は身を引いたわ。ええ、恨みはなかった。失望はしたけれど。
…貴族の少女の王子妃教育は終わっていた。貴族の少女は王家の闇も知っていた。婚約者で無くなった以上、貴族の少女は生きることを許されない。貴族の少女は、毒杯を賜った。
彼女は何も知らなかった。けれど、突然の親友の死に彼女は真実を知った。優しいと思っていた王子が、その結末を知りながら自分に言い寄っていたことも含めて、ね。
彼女は初めて本物の絶望を知った。自業自得、と貴方は笑うかしら。私もそう思うわ。でもね、それでも。私はあの子に、純粋無垢なままでいて欲しかった。絶望なんて、真実なんて知らないで欲しかったわ。ざまぁ、っていうの?それは望んでなかったのよ。本当よ?
けれど彼女は、それを知った。知った以上、彼女は変質するしかなかった。何故なら彼女は、無垢であることこそが強みだったのだから。
だから、彼女は災厄の魔女となった。この国すべての命を喰らい尽くし、この国を滅ぼした。王子は、最期の最期まで自分の罪を認めなかったけど。まあ、災厄の魔女の作る楽園に行けるのだからいいんじゃない?
そして、災厄の魔女は全ての魂を己の中に内包し、奇跡の力を使って空…宇宙へ旅立とうとしている。新たな星で、楽園を生み出すのよ。…単純で馬鹿なあの子にしてはよく考えたけど、あの子一人で世界を生み出せるか心配だわ。いえ、世界を生み出すのは今のあの子なら簡単ね。
…楽園に、出来るのかしら。あの馬鹿王子への憎しみを、あの子は忘れられる?…あの子と馬鹿王子の婚約を望んで、私の結末を知りながら何も言わずに見捨てたすべての人をあの子は赦せる?
私は、毒杯を大人しく受け入れたことで天の国の使者になったもの。その時にはもう憎しみとか怒りとかは何も感じなくなったけれど。あの子は…魔女に変質してしまったから、むしろそれらの感情は倍増しているでしょうね。
あの子が作る世界が、地獄にならないことを祈るわ。どうか、優しいあの子が望んだ楽園になってほしい。…本当よ?
ああ、隣国の王子様。私に横恋慕していながら、馬鹿王子と私の幸せを尊重して手を伸ばしてこなかった貴方。今、災厄の魔女の篭った繭が割れて、あの子が宇宙へ旅立つわ。…貴方の伸ばそうとして伸ばさなかったその手を、今だけ握らせて。共に祈りましょう。新たな楽園の、誕生を。
…行ったわね。結局、私に気付かなかったのね。でも、そんなものだわ。…私は天の国の使者。新たな楽園の誕生を見届けるだけよ。さあ、私はあの子を追いかけるわ。すべてを見届けて、天の主人に報告しなくてはいけないの。…貴方は、人と生きなさい。私はもう人ではないわ。一緒にはいられないの。
そう。貴方は幸せに生きて。その上で、もし天上の世界でまた会えたなら。色々な、お話を聞かせて。私が天の主人にそうするように。…さようなら。
33
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
愛するお嬢様を傷付けられた少年、本人が部屋に閉じこもって泣き暮らしている間に復讐の準備を完璧に整える
下菊みこと
恋愛
捨てられた少年の恋のお話。
少年は両親から捨てられた。なんとか生きてきたがスラム街からも追い出された。もうダメかと思っていたが、救いの手が差し伸べられた。
小説家になろう様でも投稿しています。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです
籠の中のうさぎ
恋愛
日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。
「はー、何もかも投げだしたぁい……」
直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。
十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。
王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。
聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。
そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。
「では、私の愛人はいかがでしょう」
時渡りと甘美な誘惑
下菊みこと
恋愛
過去に飛んで愛する人を守る孤独な女性のお話。
エメラルダは、王太子の亡骸に祈りを捧げ別れを告げた。今度こそ守ると、過去に飛ぶ。たとえ、自分が世界から爪弾きにされても愛する人の幸せな姿を見たかった。
小説家になろう様でも投稿しています!
私が偽聖女ですって? そもそも聖女なんて名乗ってないわよ!
Mag_Mel
恋愛
「聖女」として国を支えてきたミレイユは、突如現れた"真の聖女"にその座を奪われ、「偽聖女」として王子との婚約破棄を言い渡される。だが当の本人は――「やっとお役御免!」とばかりに、清々しい笑顔を浮かべていた。
なにせ彼女は、異世界からやってきた強大な魔力を持つ『魔女』にすぎないのだから。自ら聖女を名乗った覚えなど、一度たりともない。
そんな彼女に振り回されながらも、ひたむきに寄り添い続けた一人の少年。投獄されたミレイユと共に、ふたりが見届けた国の末路とは――?
*小説家になろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる