あなたと妹がキモ……恐いので、婚約破棄でOKです。あ、あと慰謝料ください。

百谷シカ

文字の大きさ
3 / 12

3 マルク狂う

しおりを挟む
 父は婚約を白紙に戻すため、方々に手を尽くした。
 そして、要らぬ誤解が生じて揉め事に発展しても面倒くさいので、挨拶も兼ねて再びティボー伯爵家を訪ねた。これで最後という、希望を抱いて。


「お待ちしておりましたよ、シドニー伯爵。やあ、ルイゾン」

「ふんっ。お呼びじゃないわよ」


 兄妹は健在だ。
 ティボー伯爵夫人は寝込んでしまい、伯爵は看病に追われているとの事で、また会えなかった。気持ちはわかる。自分の腹から生まれた兄妹がこんな大人になったとしたら、それは寝込むしかない。

 父は丁寧に、穏便に、この婚約を解消する旨を伝えた。
 その瞬間、フェリシエンヌがほくそ笑み、マルクは激高した。


「なんという事だ! そんなに身勝手な人だとは思わなかった!!」


 父は耐えている。
 私も、耐えている。

 兄の腕に巻き付くフェリシエンヌが高らかに笑った。


「あなたなんかにお兄様は渡さないわ!」


 ええ。
 要らないって話をしに来たのよ。


「無責任だな。妹の婿候補を連れて来られないなら、こちらから君との婚約は破棄させてもらう!」

「あー……それで、結構です」


 終わりにしたくて、私は目を逸らして低く答えた。
 けれど、これが地獄の始まりだった。

 フェリシエンヌの高笑いを背に帰路についた私たちは、達成感と解放感に満ち溢れて帰宅し、安らかに眠り、そして起きて、新しい日々を満喫できるかと思いきや、違った。

 訴訟を起こされたのであります。
 速攻で。


「……なん、だと……!?」


 父が顔面蒼白で書状をビラビラ震わせる。
 母が顔を覆って俯き、私はわなわなと怒りに震えた。

 
「なんなのよこれは!」


 私は叫んだ。

 書状には、私が複数の未婚男性を選り好みしティボー伯爵令息との結婚を先延ばしにした上で、味見をした数人の男性を未来の義妹となるフェリシエンヌに宛がい、淫らな行いを強要し、それがためにフェリシエンヌを離婚にまで追い込み、更に離婚直後のフェリシエンヌを冒涜したという作り話が尤もそうに書き連ねられていた。
 そして、兄妹からの、多額の賠償金請求。

 破産よ。


「地獄に落ちるがいいわ……!」


 弱々しく泣く母の呟きが物騒。


「これは酷い……酷すぎる……!」


 父はほぼ骸骨みたいになっちゃってるし。


「負けちゃ駄目よ。降りかかる火の粉は払うまでだわ!」

「狂人から、どう逃れるって、言うんだい……?」


 父が泣いた。
 まったく、軟弱者なんだから。


「ねえ、お父様。昔、お仕事の関係で親しくしていたラモー伯爵の末っ子、リシャール。彼って宮廷で法律関係の仕事に就いたって言ってたわよね?」

「お、おお……!」


 父の目に、涙とわずかな希望が煌めく。


「私は幼馴染よ。きっと助けてくれるわ」

「おおお!」

「手紙書いてくる。貸して!」


 父から書状を受取り、私は自室に走った。

 手が触れる事を拒絶している。
 まったく、忌まわしい書状だこと!


「負けないわよ、マルク・バゼーヌ……あとフェリシエンヌ」


 けれど、そのまま手紙を書く事は叶わなかった。
 憤怒で鼻血が出たから。

 びっくりした。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?

江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。 大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて…… さっくり読める短編です。 異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。

聖女で美人の姉と妹に婚約者の王子と幼馴染をとられて婚約破棄「辛い」私だけが恋愛できず仲間外れの毎日

佐藤 美奈
恋愛
「好きな人ができたから別れたいんだ」 「相手はフローラお姉様ですよね?」 「その通りだ」 「わかりました。今までありがとう」 公爵令嬢アメリア・ヴァレンシュタインは婚約者のクロフォード・シュヴァインシュタイガー王子に呼び出されて婚約破棄を言い渡された。アメリアは全く感情が乱されることなく婚約破棄を受け入れた。 アメリアは婚約破棄されることを分かっていた。なので動揺することはなかったが心に悔しさだけが残る。 三姉妹の次女として生まれ内気でおとなしい性格のアメリアは、気が強く図々しい性格の聖女である姉のフローラと妹のエリザベスに婚約者と幼馴染をとられてしまう。 信頼していた婚約者と幼馴染は性格に問題のある姉と妹と肉体関係を持って、アメリアに冷たい態度をとるようになる。アメリアだけが恋愛できず仲間外れにされる辛い毎日を過ごすことになった―― 閲覧注意

姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します

しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。 失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。 そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……! 悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。 幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。 一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。 ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。

不倫した妹の頭がおかしすぎて家族で呆れる「夫のせいで彼に捨てられた」妹は断絶して子供は家族で育てることに

佐藤 美奈
恋愛
ネコのように愛らしい顔立ちの妹のアメリア令嬢が突然実家に帰って来た。 赤ちゃんのようにギャーギャー泣き叫んで夫のオリバーがひどいと主張するのです。 家族でなだめて話を聞いてみると妹の頭が徐々におかしいことに気がついてくる。 アメリアとオリバーは幼馴染で1年前に結婚をして子供のミアという女の子がいます。 不倫していたアメリアとオリバーの離婚は決定したが、その子供がどちらで引き取るのか揉めたらしい。 不倫相手は夫の弟のフレディだと告白された時は家族で平常心を失って天国に行きそうになる。 夫のオリバーも不倫相手の弟フレディもミアは自分の子供だと全力で主張します。 そして検査した結果はオリバーの子供でもフレディのどちらの子供でもなかった。

婚約破棄されたので30キロ痩せたら求婚が殺到。でも、選ぶのは私。

百谷シカ
恋愛
「私より大きな女を妻と呼べるか! 鏡を見ろ、デブ!!」 私は伯爵令嬢オーロラ・カッセルズ。 大柄で太っているせいで、たった今、公爵に婚約を破棄された。 将軍である父の名誉を挽回し、私も誇りを取り戻さなくては。 1年間ダイエットに取り組み、運動と食事管理で30キロ痩せた。 すると痩せた私は絶世の美女だったらしい。 「お美しいオーロラ嬢、ぜひ私とダンスを!」 ただ体形が変わっただけで、こんなにも扱いが変わるなんて。 1年間努力して得たのは、軟弱な男たちの鼻息と血走った視線? 「……私は着せ替え人形じゃないわ」 でも、ひとりだけ変わらない人がいた。 毎年、冬になると砂漠の別荘地で顔を合わせた幼馴染の伯爵令息。 「あれっ、オーロラ!? なんか痩せた? ちゃんと肉食ってる?」 ダニエル・グランヴィルは、変わらず友人として接してくれた。 だから好きになってしまった……友人のはずなのに。 ====================== (他「エブリスタ」様に投稿)

処理中です...