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4 親切な夫
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ランデル公爵ゴトフリート閣下は鳥類の研究をしているとの事で、その定期的な調査の帰り道に、私の噂を耳にしたのだという。
「あの男が厄介な執着を示すのは君が初めてではないんだ。幼児の頃から次々に被害者を苦しめている。一部の貴族の間では、ある種の厄介事として周知されている。気の毒だった。だがもう安心していい」
厳密には私ではなく、私に婚約破棄を叩きつけたエドガーの噂話だったらしい。婚約者に如何わしい疑惑があり、婚約を破棄した。如何わしい疑惑とはつまり、他の男の影がある。他の男とはつまり、イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルトである。
そこまでは聞き流していた閣下だったけれど、フィリップ卿の名前が出た時点で由々しき事件として腰を上げ、私の名を聞き出し、帰り道でもあるからと求婚に立ち寄ってくれたのだった。
案内されているところで窓の割れる音がして、兄と鉢合わせ、求婚の提案をしながら駆けつけて、あとはあの通り。
「私は婚期を逃しつつある。君は狂人に付き纏われている。君が思う以上に、この結婚には私にも利点がある。中年男を助けると思って……そう提案するつもりだったが、話が早く済んだ点だけはよかった」
閣下は威厳のあふれる風貌でありながら、穏やかで物静かな人物だった。けれど話す時は優しい目で度々微笑み、私たち一家に気を配ってくれる。
どんなに願っても届かないような、天の恵み。
神様が遣わしてくれた使者さながらに、眩しい存在。
ある種の崇拝にも似た気持を抱いた私は、ランデル城に移り住む事についてなんの不安もなかった。それについても閣下は最初、生家で暮らしていいと言ってくれた。安全と身分だけ与えた上で、父と兄との生活を続けていいと。父は泣いた。
けれど結局、結婚式の際に教会で神父様に窘められてしまった事もあり、あるべき形に収まった。ちなみに急な結婚だった事もあり、閣下の提案で私の不安を取り除くために半年から1年を目途として兄がついて来ている。
「君は話をしてくれるから助かる。父親や兄との仲が良好だからだろう。私の事も、急に現れた叔父とでも思ってくれ」
「御親切、心より感謝しております」
「そうだな。君に親切なおじさんと思っていてもらえるように努めよう」
家族と呼べるような関係ではない。
けれど、私を混沌とした恐怖から救い出したあと、穏やかな微笑みで言葉を交わし続けてくれる閣下は、父や兄と同じくらい尊敬できる、この上なく親切な夫だった。
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