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1 可哀相なのは私? そうかしら?
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「イザベル、イザベル、イザベル。君への愛が消えてしまったわけではないんだよ。ただ僕は、アサント伯爵。領主だ。領民のため、国王陛下のため、完璧な後継者へと命を繋いでいく責任がある。君は真面目で賢くて完璧に思えた。だが、妹のナタリーは100倍美人だ」
「……それで?」
「ナタリーは君の妹だから血筋としても申し分ないし、それに、男の子を産んでくれると約束してくれた。ナタリーの美しさが、僕の高貴な血にはどうしても必要なんだよ」
「……はい」
「だから君との婚約を白紙に戻して、僕はナタリーと婚約しようと思う」
ああ。
私と6年も同じ未来を夢見てきた婚約者が、こんなに愚かだったなんて。
「わかってくれるよね? イザベル」
悲しいと感じるより早く、私は白けてしまって言葉を失くした。
築き上げてきたものは幻で、貴重な時間を無駄な相手に費やしてしまったのだ。きっと私も盲目だったのだろう。
ふたつ年上のアサント伯爵ピエール・ジョリヴェを私は好ましいと感じたし、愛していたつもりだった。
「愛しているよ、イザベル・ジャン。泣かないで」
「泣かないわ……」
悲しいとすればそれは、私が自分で思うよりずっと、彼を愛していなかった事実に気づいてしまったから。彼が妹に奪われるとも思わないし、彼を失うとも思わない。
私は夢を見ていた。
美しいようで、作り物の夢を。
私は、私が描く未来を、むりやり彼の顔の上に描いていたのだ。
そうでなければ、たかが顔の美醜で婚約を破棄しようだなんて愚かな男を信頼するはずない。これは私の責任。私の人生の責任は、私が取らなくてはいけない。
「ピエール」
「なんだい?」
「今までお世話になった事、ありがとうございました」
「そんな、水臭い事を言わないでくれ。ナタリーとは結婚して後継ぎを設けるだけで、ずっと君を愛しているよ」
「……」
諦めが微笑みとして顔に出る。
ピエールはそれを、愛情だと受け取ったようだった。
抱きしめようとする腕を避け、もう二度と見つめる事もない美麗な顔に目が行かないよう努める。
──直後。
私の唇を動かしたのは、思いがけない愉快な気持ちだった。
「ナタリーは喜ぶわ。だけど、あの子はあなたを幸せにはしない」
「わかるよ。悲しみがそう言わせるんだね」
愚か者には、愚か者が似合う。
ピエールがそれを思い知るのは、そう先の事ではないはずだ。
「……それで?」
「ナタリーは君の妹だから血筋としても申し分ないし、それに、男の子を産んでくれると約束してくれた。ナタリーの美しさが、僕の高貴な血にはどうしても必要なんだよ」
「……はい」
「だから君との婚約を白紙に戻して、僕はナタリーと婚約しようと思う」
ああ。
私と6年も同じ未来を夢見てきた婚約者が、こんなに愚かだったなんて。
「わかってくれるよね? イザベル」
悲しいと感じるより早く、私は白けてしまって言葉を失くした。
築き上げてきたものは幻で、貴重な時間を無駄な相手に費やしてしまったのだ。きっと私も盲目だったのだろう。
ふたつ年上のアサント伯爵ピエール・ジョリヴェを私は好ましいと感じたし、愛していたつもりだった。
「愛しているよ、イザベル・ジャン。泣かないで」
「泣かないわ……」
悲しいとすればそれは、私が自分で思うよりずっと、彼を愛していなかった事実に気づいてしまったから。彼が妹に奪われるとも思わないし、彼を失うとも思わない。
私は夢を見ていた。
美しいようで、作り物の夢を。
私は、私が描く未来を、むりやり彼の顔の上に描いていたのだ。
そうでなければ、たかが顔の美醜で婚約を破棄しようだなんて愚かな男を信頼するはずない。これは私の責任。私の人生の責任は、私が取らなくてはいけない。
「ピエール」
「なんだい?」
「今までお世話になった事、ありがとうございました」
「そんな、水臭い事を言わないでくれ。ナタリーとは結婚して後継ぎを設けるだけで、ずっと君を愛しているよ」
「……」
諦めが微笑みとして顔に出る。
ピエールはそれを、愛情だと受け取ったようだった。
抱きしめようとする腕を避け、もう二度と見つめる事もない美麗な顔に目が行かないよう努める。
──直後。
私の唇を動かしたのは、思いがけない愉快な気持ちだった。
「ナタリーは喜ぶわ。だけど、あの子はあなたを幸せにはしない」
「わかるよ。悲しみがそう言わせるんだね」
愚か者には、愚か者が似合う。
ピエールがそれを思い知るのは、そう先の事ではないはずだ。
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