2 / 6
2 助けてほしいなんてお門違いよ。
しおりを挟む
長い婚約期間を白紙に戻された上、私は22才。
行き遅れに片足を突っ込んでいるだけでなく、傷物扱い。
次の求婚者に、私は自分を恥じて傅き、服従する事を求められるだろう。
負い目を感じ顔色を窺い続ける人生なんて、まっぴらごめんだ。
「よろしくお願い致します。バンジャマン侯爵様」
「噂は耳にしていたが、こんなに美しい人だとは」
「お気遣い、感謝致します」
「否、君の美しさは内面からあふれ出ている知性だ。とても大切なものだよ」
バンジャマン侯爵マリユス・ルブタン卿は2年前に奥方ヴィクトワールを亡くし、忘れ形見の跡取り息子アルノーの家庭教師を募っていた。
家にいてもピエールが泣きついてきて鬱陶しい。
そこへこれほど条件のいい家庭教師の仕事が降ってきた。
私の人生はまだ、終わっていない。
「アルノーも7才になってしまった。まだ間に合うだろうか」
「ええ。侯爵様の御子息でいらっしゃるのですから、なにも心配ないでしょう」
「どうかマリユスと呼んでくれ。よろしく、イザベル」
こうしてバンジャマン侯爵家で令息の家庭教師を始めた私は、幸運にもそれが天職だと気づかされた。母親を亡くした事を理解しはじめていたアルノーは、反発ではなく、素直に甘えてくれた。これほどの幸運、神の導きでなくなんだというのだろう。
一方、その頃。
アサント伯爵夫人となったナタリーは、ピエールが望んだ男児を産んで1年経っていた。ロベールと名付けられたアサント伯爵令息は、父親となったピエールに深い苦悩を齎していた。
一生続く苦悩を。
「イザベル、教えてくれ。僕はどうしたらいい? 祖父の血が濃く出たと思えばいいのだろうか。それともナタリーは、僕を愛してはいないのだろうか」
という内容の手紙を13通、訪問は5回あった。
ナタリーは、ナタリーとピエールの間では生まれるはずのない褐色の肌の男児を産んだのだ。
ピエールは愚かでも、冷酷にはなりきれなかった。
息子ではないかもしれないロベールに、不遇な人生を送らせたくはないらしく、しきりに私の意見を求めた。
本当に女々しくて、鬱陶しくて、情けなくて。
でももう私はバンジャマン侯爵の使用人。
ピエールが気軽に訪ねていい相手ではなくなっている。
私に答えを提示してもらおうなんて、お門違いもいいところ。
性悪な女を妻に選んだ己の人生なのだから、彼は覚悟を持つべきなのだ。
行き遅れに片足を突っ込んでいるだけでなく、傷物扱い。
次の求婚者に、私は自分を恥じて傅き、服従する事を求められるだろう。
負い目を感じ顔色を窺い続ける人生なんて、まっぴらごめんだ。
「よろしくお願い致します。バンジャマン侯爵様」
「噂は耳にしていたが、こんなに美しい人だとは」
「お気遣い、感謝致します」
「否、君の美しさは内面からあふれ出ている知性だ。とても大切なものだよ」
バンジャマン侯爵マリユス・ルブタン卿は2年前に奥方ヴィクトワールを亡くし、忘れ形見の跡取り息子アルノーの家庭教師を募っていた。
家にいてもピエールが泣きついてきて鬱陶しい。
そこへこれほど条件のいい家庭教師の仕事が降ってきた。
私の人生はまだ、終わっていない。
「アルノーも7才になってしまった。まだ間に合うだろうか」
「ええ。侯爵様の御子息でいらっしゃるのですから、なにも心配ないでしょう」
「どうかマリユスと呼んでくれ。よろしく、イザベル」
こうしてバンジャマン侯爵家で令息の家庭教師を始めた私は、幸運にもそれが天職だと気づかされた。母親を亡くした事を理解しはじめていたアルノーは、反発ではなく、素直に甘えてくれた。これほどの幸運、神の導きでなくなんだというのだろう。
一方、その頃。
アサント伯爵夫人となったナタリーは、ピエールが望んだ男児を産んで1年経っていた。ロベールと名付けられたアサント伯爵令息は、父親となったピエールに深い苦悩を齎していた。
一生続く苦悩を。
「イザベル、教えてくれ。僕はどうしたらいい? 祖父の血が濃く出たと思えばいいのだろうか。それともナタリーは、僕を愛してはいないのだろうか」
という内容の手紙を13通、訪問は5回あった。
ナタリーは、ナタリーとピエールの間では生まれるはずのない褐色の肌の男児を産んだのだ。
ピエールは愚かでも、冷酷にはなりきれなかった。
息子ではないかもしれないロベールに、不遇な人生を送らせたくはないらしく、しきりに私の意見を求めた。
本当に女々しくて、鬱陶しくて、情けなくて。
でももう私はバンジャマン侯爵の使用人。
ピエールが気軽に訪ねていい相手ではなくなっている。
私に答えを提示してもらおうなんて、お門違いもいいところ。
性悪な女を妻に選んだ己の人生なのだから、彼は覚悟を持つべきなのだ。
409
あなたにおすすめの小説
虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~
***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」
妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。
「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」
元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。
両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません!
あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。
他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては!
「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか?
あなたにはもう関係のない話ですが?
妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!!
ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね?
私、いろいろ調べさせていただいたんですよ?
あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか?
・・・××しますよ?
天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。
coco
恋愛
我儘だけど、皆に愛される天使の様に愛らしい妹。
そんな彼女に、ついに婚約者まで奪われてしまった私は、神に祈りを捧げた─。
永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~
畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。
特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する
下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。
ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。
小説家になろう様でも投稿しています。
従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。
【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……
小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。
この作品は『小説家になろう』でも公開中です。
【完結】義家族に婚約者も、家も奪われたけれど幸せになります〜義妹達は華麗に笑う
鏑木 うりこ
恋愛
お姉様、お姉様の婚約者、私にくださらない?地味なお姉様より私の方がお似合いですもの!
お姉様、お姉様のお家。私にくださらない?お姉様に伯爵家の当主なんて務まらないわ
お母様が亡くなって喪も明けないうちにやってきた新しいお義母様には私より一つしか違わない双子の姉妹を連れて来られました。
とても美しい姉妹ですが、私はお義母様と義妹達に辛く当たられてしまうのです。
この話は特殊な形で進んで行きます。表(ベアトリス視点が多い)と裏(義母・義妹視点が多い)が入り乱れますので、混乱したら申し訳ないですが、書いていてとても楽しかったです。
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる