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白鷲騎士団寮にようこそ
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「ラズ、お前大変な人に好かれたな」
「好かれた?」
さっき出会ったばっかりだ。しかもあれはラズが好かれたわけではなく、クッキーを気に入ってくれただけだと確信を持って言える。
「まぁいいや。あの人がこっちの味方になってくれたら問題は無い。ラズはクッキーなんかを作ってくれれば……」
「クッキーは家というか、孤児院で大量に作るんです。だから、週に一度だけ休みがあったらそれで大丈夫です。小麦とかもらって本当にいいんでしょうか。横流しとか疑われたら困るので。それに孤児院の分と一緒に焼くので残業代とかはいらないです」
本当はクッキーをお買い上げしてくれると嬉しいけれど材料を支給されたらそういうわけにはいかないだろう。
「お前は真っ当な育ち方をしたんだな。休みは週に一度だが、クッキーを焼くためにその日を使うんだろう? それならその日と別に一日休みがいるだろう。結構体力使う仕事だからな。小麦とバターと砂糖。他は……卵か。後は何がいる?」
「せっかくなんでナッツとかあると嬉しいです」
孤児院出身ということで身ぎれいにしていないとすぐに疑われるから身についたものをマストは真っ当な育ち方をしたと言ってくれた。ラズにとっては嬉しいことだった。
「ああ、いるものが増えたら俺に教えてくれ」
「助かります」
「今日はもう疲れただろう? 服とタイを交換してもらって帰っていいぞ。祝勝会があるから夜の食堂は閉めるしな」
下ごしらえしている人がいるということは明日の準備なのだろう。
「いえ、昼ご飯を食べてないので休憩時間は欲しいですが、働いて帰りますよ。ジャガイモくらいなら剥けますよ」
「こんな時間まで食事休憩も与えないなんて最低な職場だったんだな。余り物で良かったら食べてくれ」
そう言ってマストが出してくれた食事は肉と野菜が入ったスープと、硬いパンと冷えているけど焼いた肉料理だった。
「こんな豪勢なものもらっていいんですか?」
下級使用人だったときは、肉や野菜がほとんど入っていないスープに硬いパンだけだった。
「食べ応えあるだろう。騎士様の食事の余りだけどな」
「これだけでもここに転職できて幸せです」
ラズは本気でそう言った。それが気に入ったのかマストは「そっか、これも食え」と魚料理も出してくれた。マストは料理を作るのが好きなんだろう。こういう人は人が喜んで食べるのが生きがいなのだ。まさに天職だ。
ラズも覚えがある。子供達が口いっぱいに頬張るお菓子を作るのを大変だと思ったことがない。
しかし、何が身を助けるかわからないものだなと思う。
言葉通り山のようなジャガイモを剥いてから、ラズの仕事が終わった。
ジャガイモは明日の朝の食事に使うのだそうだ。
ラズは制服とタイを交換してもらいに使用人事務棟を訪れた。
「ああ、ラズ・マフィンさんね。こっちが新しい制服とタイだよ。それから住居も変わることになるけど問題ないですか」
ラズが今住んでいるのは、下級使用人の専用宿舎で、値段も安いし荷物の少ないラズには狭さも気にならない物件だった。居心地がいいとは思わなかったけれど特に不便もなかった。友達と呼べる人もいないので寝る場所が変わるだけの話だ。仕事が毎日遅くまであったせいで他の人と関わる余裕もなかった。
「大丈夫です」
「新しい宿舎は騎士団の北の方にあります。多分わかると思うけれど……、ここね」
城の地図を見せてもらって何となく目星は付いた。
住んでいた宿舎から荷物を運んでいくとふくよかなおばあさんのような人が迎えてくれた。
「白鷲騎士団寮へようこそ」
大きな建物だなと思ったら騎士団の隊員宿舎だった。
「すみません。間違えてしまいました」
綺麗だし、大きいと思ったけれど、騎士団寮だった。きっと近くに使用人の宿舎があるはずだ。
「ごめんなさい、言い方が悪かったわね。騎士団寮の隣に使用人宿舎があるのよ。でも管理はどちらも私がしているの。ラズ・マフィンさんでしょう。料理人の方も住んでいるわ。ここは独身寮だから、既婚者はいないけれど。私はエカテリテ。皆はエカテおばさんって呼ぶわ」
「エカテおばさん、よろしくお願いします。ラズと呼んでください」
「よろしくね。わからないことがあったら何でも聞いてちょうだい。困ったことがあったら相談してね」
穏やかな雰囲気の人だった。
「ありがとうございます」
部屋は下級使用人の官舎より少しだけ大きい。違うところと言えば、綺麗に掃除されてシーツも調えられているところだろうか。
色んなことがありすぎて、ラズはベッドに横たわるとすぐに眠くなってしまった。
いつもと違ういい眠りが訪れそうな予感がした。
「好かれた?」
さっき出会ったばっかりだ。しかもあれはラズが好かれたわけではなく、クッキーを気に入ってくれただけだと確信を持って言える。
「まぁいいや。あの人がこっちの味方になってくれたら問題は無い。ラズはクッキーなんかを作ってくれれば……」
「クッキーは家というか、孤児院で大量に作るんです。だから、週に一度だけ休みがあったらそれで大丈夫です。小麦とかもらって本当にいいんでしょうか。横流しとか疑われたら困るので。それに孤児院の分と一緒に焼くので残業代とかはいらないです」
本当はクッキーをお買い上げしてくれると嬉しいけれど材料を支給されたらそういうわけにはいかないだろう。
「お前は真っ当な育ち方をしたんだな。休みは週に一度だが、クッキーを焼くためにその日を使うんだろう? それならその日と別に一日休みがいるだろう。結構体力使う仕事だからな。小麦とバターと砂糖。他は……卵か。後は何がいる?」
「せっかくなんでナッツとかあると嬉しいです」
孤児院出身ということで身ぎれいにしていないとすぐに疑われるから身についたものをマストは真っ当な育ち方をしたと言ってくれた。ラズにとっては嬉しいことだった。
「ああ、いるものが増えたら俺に教えてくれ」
「助かります」
「今日はもう疲れただろう? 服とタイを交換してもらって帰っていいぞ。祝勝会があるから夜の食堂は閉めるしな」
下ごしらえしている人がいるということは明日の準備なのだろう。
「いえ、昼ご飯を食べてないので休憩時間は欲しいですが、働いて帰りますよ。ジャガイモくらいなら剥けますよ」
「こんな時間まで食事休憩も与えないなんて最低な職場だったんだな。余り物で良かったら食べてくれ」
そう言ってマストが出してくれた食事は肉と野菜が入ったスープと、硬いパンと冷えているけど焼いた肉料理だった。
「こんな豪勢なものもらっていいんですか?」
下級使用人だったときは、肉や野菜がほとんど入っていないスープに硬いパンだけだった。
「食べ応えあるだろう。騎士様の食事の余りだけどな」
「これだけでもここに転職できて幸せです」
ラズは本気でそう言った。それが気に入ったのかマストは「そっか、これも食え」と魚料理も出してくれた。マストは料理を作るのが好きなんだろう。こういう人は人が喜んで食べるのが生きがいなのだ。まさに天職だ。
ラズも覚えがある。子供達が口いっぱいに頬張るお菓子を作るのを大変だと思ったことがない。
しかし、何が身を助けるかわからないものだなと思う。
言葉通り山のようなジャガイモを剥いてから、ラズの仕事が終わった。
ジャガイモは明日の朝の食事に使うのだそうだ。
ラズは制服とタイを交換してもらいに使用人事務棟を訪れた。
「ああ、ラズ・マフィンさんね。こっちが新しい制服とタイだよ。それから住居も変わることになるけど問題ないですか」
ラズが今住んでいるのは、下級使用人の専用宿舎で、値段も安いし荷物の少ないラズには狭さも気にならない物件だった。居心地がいいとは思わなかったけれど特に不便もなかった。友達と呼べる人もいないので寝る場所が変わるだけの話だ。仕事が毎日遅くまであったせいで他の人と関わる余裕もなかった。
「大丈夫です」
「新しい宿舎は騎士団の北の方にあります。多分わかると思うけれど……、ここね」
城の地図を見せてもらって何となく目星は付いた。
住んでいた宿舎から荷物を運んでいくとふくよかなおばあさんのような人が迎えてくれた。
「白鷲騎士団寮へようこそ」
大きな建物だなと思ったら騎士団の隊員宿舎だった。
「すみません。間違えてしまいました」
綺麗だし、大きいと思ったけれど、騎士団寮だった。きっと近くに使用人の宿舎があるはずだ。
「ごめんなさい、言い方が悪かったわね。騎士団寮の隣に使用人宿舎があるのよ。でも管理はどちらも私がしているの。ラズ・マフィンさんでしょう。料理人の方も住んでいるわ。ここは独身寮だから、既婚者はいないけれど。私はエカテリテ。皆はエカテおばさんって呼ぶわ」
「エカテおばさん、よろしくお願いします。ラズと呼んでください」
「よろしくね。わからないことがあったら何でも聞いてちょうだい。困ったことがあったら相談してね」
穏やかな雰囲気の人だった。
「ありがとうございます」
部屋は下級使用人の官舎より少しだけ大きい。違うところと言えば、綺麗に掃除されてシーツも調えられているところだろうか。
色んなことがありすぎて、ラズはベッドに横たわるとすぐに眠くなってしまった。
いつもと違ういい眠りが訪れそうな予感がした。
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