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お届け物は賄賂でした
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「リン、応接室に案内して」
「はい、ラズ兄ちゃん」
リンに頼むと「いやだ~、馬のりたい!」やら「高い高いして~」と団長に群がっている子供達がだだをこねた。
「お客様に失礼なことしたら夜中に院長先生がやってくるぞ!」
戻ってきたサイに脅かされて、子供達は「キャー」と歓声のような悲鳴を上げて逃げていった。
多分、院長先生が来た! ごっこが始まるだろう。
「ラズ、院長先生はお化けか?」
団長が笑いながら馬を柱に繋いだ。
「人間ですよ。ちょっと変わっているだけで……」
あと、がめついけれど。ただ、がめついのにも理由があるからラズも院長のいうとおり城に勤めているし、休日にお菓子を作りにきている。
「これ、生クリームですね。カカオもある」
「そうか、使ってくれ」
「食堂から持ってきてくれたんですか?」
「いや、食堂から運ぶ分は人に頼んできた。これは私の家の料理人に聞いて、お菓子の材料になりそうなものを用意してくれって言ったら出てきた分だ。小麦粉とかは多くても問題ないだろう?」
馬には沢山のものが積んであった。生クリームは保冷の魔法がかかっている。
「でも食堂の分だけで作れますよ」
どれだけ期待されているのかと思うと嬉しいけれどプレッシャーがすごい。
「これは賄賂だ」
真っ昼間から堂々と賄賂を持ってこられても困る。
「賄賂は受け取れません」
「ラズは真面目だと聞いていたが本当だな」
冗談だとわかるが、ラズは言質をとられたくない。
「食堂の分もそうだが、子供達に食べさせてやってくれ。子供の頃はお菓子が楽しみだったんだ。今はラズのお菓子が日々の生きがいだ」
侯爵家の跡取りなのだからきっと高級なお菓子を沢山食べているだろうに、団長はそう言ってラズの頭を撫でた。
「小麦粉はパンとかにして食べさせてもいいんですか?」
「もちろんだ」
小麦粉なんて団長は触ったこともないだろう。
「運んできてくれたお礼にさっき焼いたカップケーキをお出ししますね。生クリームも添えて」
「運んでいたかいがあったな」
「馬に水と草を上げて良いですか?」
「クレセントも喜ぶよ」
馬の名前はクレセントというのだろう。三日月の星が額にあるからだろうか。
「リン、団長を応接室に案内して」
「はい、こちらです」
リンと仲良しのサラも一緒だ。
鬼ごっこ(院長先生版)をしていたサイが鬼でなくなったのを見計らって、クレセントに神殿でも飼っている馬の飼い葉と水を用意してあげるように頼んだ。
ラズがお茶とお菓子を持って応接室に入ったとき、団長は本棚にある本をめくっていた。応接室は院長先生が子供に勉強を教えるときに使っているので、そこにある本はラズも勉強したものばかりだ。
「これで魔法を勉強したのか? わかりやすく書いている良い本だ」
ラズは父の元で暮らしていた時、魔法を習っていた。子供だったこともあって、初級の初級に過ぎなかったけれど。少ない魔力だから高い本を買ってまで勉強しなくてもいいと言うラズを『可能性があるかぎり精一杯やれ』と一喝したのは院長だった。
「はい、水の魔法は院長に教えてもらったのですが他は本で覚えました」
「すり切れるほど読んでいる……」
覚えるまで何度も読んだから空で暗記できる。
「用意してくれた院長が怖かったんですよ」
院長も水魔法を使うことができる。基礎は一緒だが火や風、土、どれも呪文も陣も違うから教えてもらうことができない。それを院長は金を工面して本をラズに与えてくれた。神殿を訪れる魔法を使える人に頼んで教えてもらうこともあった。結局ある程度の魔法しかラズの魔力量では使うことができなかった。
院長はそれを責めなかった。いっそ責められれば『あんたがやれって言ったんだろう』と責任転嫁できただろうに、逃げ道など許してくれるような院長ではない。
「そうか、いい師匠だな」
院長が褒められて嬉しいわけではないのに、何故か照れくさい。
「団長、お菓子をどうぞ。持ってきてくれた生クリームを泡立てて添えてます。まだあったかいから早くお召し上がりください」
お菓子を勧めると、団長は丁寧に本をもどしてソファに座った。二人用のソファなのに狭そうだ。ラズは横の椅子に座り、団長が目を細めて食べる姿を見つめた。
子供のような顔で食べている。口の横に生クリームがついていたのに気付かないのだろうか。
「団長、生クリームが口元に……」
団長は「ここか?」と指で口の反対側を撫でた。
「そっちじゃなくて、こっちです」
思わずいつも子供達にしているように指ですくいとって、自分で舐めてしまった。
しまった、団長が驚いた顔をしている。
「ありがとう」
口元についていたのが恥ずかしかったのか、少し照れたような顔をして団長がお礼を言った。
「いえ……」
見られてたら、子供達に『ラズ兄ちゃんはオカン属性』と言われるのだろうと思った。
「はい、ラズ兄ちゃん」
リンに頼むと「いやだ~、馬のりたい!」やら「高い高いして~」と団長に群がっている子供達がだだをこねた。
「お客様に失礼なことしたら夜中に院長先生がやってくるぞ!」
戻ってきたサイに脅かされて、子供達は「キャー」と歓声のような悲鳴を上げて逃げていった。
多分、院長先生が来た! ごっこが始まるだろう。
「ラズ、院長先生はお化けか?」
団長が笑いながら馬を柱に繋いだ。
「人間ですよ。ちょっと変わっているだけで……」
あと、がめついけれど。ただ、がめついのにも理由があるからラズも院長のいうとおり城に勤めているし、休日にお菓子を作りにきている。
「これ、生クリームですね。カカオもある」
「そうか、使ってくれ」
「食堂から持ってきてくれたんですか?」
「いや、食堂から運ぶ分は人に頼んできた。これは私の家の料理人に聞いて、お菓子の材料になりそうなものを用意してくれって言ったら出てきた分だ。小麦粉とかは多くても問題ないだろう?」
馬には沢山のものが積んであった。生クリームは保冷の魔法がかかっている。
「でも食堂の分だけで作れますよ」
どれだけ期待されているのかと思うと嬉しいけれどプレッシャーがすごい。
「これは賄賂だ」
真っ昼間から堂々と賄賂を持ってこられても困る。
「賄賂は受け取れません」
「ラズは真面目だと聞いていたが本当だな」
冗談だとわかるが、ラズは言質をとられたくない。
「食堂の分もそうだが、子供達に食べさせてやってくれ。子供の頃はお菓子が楽しみだったんだ。今はラズのお菓子が日々の生きがいだ」
侯爵家の跡取りなのだからきっと高級なお菓子を沢山食べているだろうに、団長はそう言ってラズの頭を撫でた。
「小麦粉はパンとかにして食べさせてもいいんですか?」
「もちろんだ」
小麦粉なんて団長は触ったこともないだろう。
「運んできてくれたお礼にさっき焼いたカップケーキをお出ししますね。生クリームも添えて」
「運んでいたかいがあったな」
「馬に水と草を上げて良いですか?」
「クレセントも喜ぶよ」
馬の名前はクレセントというのだろう。三日月の星が額にあるからだろうか。
「リン、団長を応接室に案内して」
「はい、こちらです」
リンと仲良しのサラも一緒だ。
鬼ごっこ(院長先生版)をしていたサイが鬼でなくなったのを見計らって、クレセントに神殿でも飼っている馬の飼い葉と水を用意してあげるように頼んだ。
ラズがお茶とお菓子を持って応接室に入ったとき、団長は本棚にある本をめくっていた。応接室は院長先生が子供に勉強を教えるときに使っているので、そこにある本はラズも勉強したものばかりだ。
「これで魔法を勉強したのか? わかりやすく書いている良い本だ」
ラズは父の元で暮らしていた時、魔法を習っていた。子供だったこともあって、初級の初級に過ぎなかったけれど。少ない魔力だから高い本を買ってまで勉強しなくてもいいと言うラズを『可能性があるかぎり精一杯やれ』と一喝したのは院長だった。
「はい、水の魔法は院長に教えてもらったのですが他は本で覚えました」
「すり切れるほど読んでいる……」
覚えるまで何度も読んだから空で暗記できる。
「用意してくれた院長が怖かったんですよ」
院長も水魔法を使うことができる。基礎は一緒だが火や風、土、どれも呪文も陣も違うから教えてもらうことができない。それを院長は金を工面して本をラズに与えてくれた。神殿を訪れる魔法を使える人に頼んで教えてもらうこともあった。結局ある程度の魔法しかラズの魔力量では使うことができなかった。
院長はそれを責めなかった。いっそ責められれば『あんたがやれって言ったんだろう』と責任転嫁できただろうに、逃げ道など許してくれるような院長ではない。
「そうか、いい師匠だな」
院長が褒められて嬉しいわけではないのに、何故か照れくさい。
「団長、お菓子をどうぞ。持ってきてくれた生クリームを泡立てて添えてます。まだあったかいから早くお召し上がりください」
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「団長、生クリームが口元に……」
団長は「ここか?」と指で口の反対側を撫でた。
「そっちじゃなくて、こっちです」
思わずいつも子供達にしているように指ですくいとって、自分で舐めてしまった。
しまった、団長が驚いた顔をしている。
「ありがとう」
口元についていたのが恥ずかしかったのか、少し照れたような顔をして団長がお礼を言った。
「いえ……」
見られてたら、子供達に『ラズ兄ちゃんはオカン属性』と言われるのだろうと思った。
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