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第6話
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音楽の時間。
「僕は大のバイオリン弾き」
と言ってアントワーヌが下手くそなバイオリンを弾き始めた。
キコキコ耳障りな音が鳴る。
甲高い異音のような音。
まるで列車が車輪で線路を削るような音がする。
一言でうるさい。
周りは耳を塞いでいる。
そして……薄ら笑いを浮かべている。
アントワーヌが弾こうとしていた曲は『炎の槍』。
平音な曲でさほど難しくはない。
しかし、まずこの初心者並みの、バイオリン始めました、みたいな演奏は心地よいものではありません。
あまりに酷いので、音楽のトリスタン先生が演奏を中止するように静止するが、自信満々のアントワーヌは止めようとしない。
「アントワーヌ! 止めて下さい」
しかし、アントワーヌはやめない。
「アントワーヌ、聞こえているんですか?」
それでも演奏を止めない。
「アントワーヌ!」
それでもアントワーヌは演奏を続けようとする。
そこへコンスタン王太子殿下が現れ、演奏の妨害をした。
そうすると、アントワーヌはキレてバイオリンの弓を床に勢いよく叩きつけた。
「何だよ。王太子だからって偉ぶりやがってよ」
「先生がやめなさいって言ったのに、なぜやめないんだ」
「それは僕が一生懸命演奏しているのに、中断を迫るからだ」
「お前、下手なんだよ。どう考えても騒音なんだよ」
「騒音? ふざけんな!」
と言ってアントワーヌはコンスタン王太子殿下に掴みかかった。
そこにトリスタン先生が中に入った。
「やめなさい、二人共」
しかし、アントワーヌは手を緩めない。
そして言い出した。
「トリスタン先生、僕上手ですよね?」
トリスタンは「いいえ」とハッキリ言った。
しかし、アントワーヌも負けない。
「上手ですよね?」
トリスタンは首を左右に振った。
「上手ですよね?」
やはりアントワーヌはしつこさだけは相変わらず。
「しつこい! 上手ではないと何度言えばわかるの」
トリスタンが怒りだした。
「コンスタン王太子殿下ありがとう」
と言ってトリスタンは皆を見る。
「耳障りなものを聞かせてしまいましたね」
「耳障りじゃないよバカ野郎」
アントワーヌは反発する。
「アントワーヌは放っておきましょう」
流石はダメ男の典型。
バイオリンもろくすっぽに弾けないのだ。
次にコンスタン王太子殿下がトランペットの演奏を始めた。
「流石は王太子殿下だ!」
と歓声がわいた。
曲は『落雷の舞』。
アップダウンの激しい曲だ。
難関の曲に挑戦している。
王太子殿下も自信満々に演奏をしていた。
演奏を終えると、王太子殿下は投げキッスをした。
次にカミーユの番。
カミーユはホルンを吹いた。
曲名は『天まで』。
そよ風のような音色に思わずウットリ。
ホルンってこんなに良い音だったんだ、と私は思いました。
その次にガブリエルの番。
ガブリエルもバイオリンを弾き始めた。
曲はアントワーヌと同じ『炎の槍』。
流石はガブリエル。
アントワーヌとは大違い。
アントワーヌが雑音なら、ガブリエルは癒やしの音。
ダメンズとイケメンの違い。
異なり過ぎている。
私の番。
私はハープで『さざなみの音色』を演奏した。
この曲はアップテンポでかなり疲れる。
しかし、演奏した後には達成感が得られます。
「クリスティアーノ凄い!」
歓声が沸いた。
「クリスティアーノさん。素晴らしい! 皆さん、大きな拍手を!」
とトリスタン。
拍手喝采。
私は思わず照れてしまいました。
「顔が赤いぞ!」
と、クラスの男子。
「流石はクリスティアーノ。付き合っちゃおうかな」
とアントワーヌ。
アントワーヌは先程の不機嫌から急にご機嫌になった。
アントワーヌは滅多に学園を休まない。
一部では私に会うのが楽しみで来ているとの噂も聞きました。
本当に迷惑な存在です。
そして、コンスタン王太子殿下はと言うと足を組んで口をつぐんでいる。
そうよね。
私がハープ演奏者として認められていても、妹のナタリーの方が良いんだものね。
「ハープ、上手いね」
カミーユが話かけてくれた。
「ありがとう」
さて、ゲームの世界に戻りましょう。
アントワーヌはやはりダメンズで魔法も楽器演奏もダメ。
ゲームの中でも初心者張りの下手くそな演奏で周りを不快にさせる。
おまけに自信家である傍ら、ボロを出し、みんなから笑われる。そんな役柄。
これもまたゲーム通り。
悪役令嬢ではあるものの、ハープの演奏が上手いというのもまたゲーム通り。
まだこれからも、水泳や歴史など教科は残されている。
そして、王太子殿下は見事な成績を上げ、アントワーヌはマヌケ面を見せる。
そんな物語だ。
隠しキャラは学園外の人物。
いつどこでどうやって知ることやら。
アントワーヌは腕を掻いている。
そしてまた血を出している。
治療を放置しているとしか思えない。
アントワーヌはアトピーなのだろうか?
しかし、物語の中にはアトピー性皮膚炎は出て来ない。
謎の皮膚病といった感じ。
うつされなければ良いけれど。
因みにアトピー性皮膚炎はうつらない。
うつるのはヘルペス。
でも、どう見てもヘルペスには見えません。
ヘルペスなら、水疱みたいになっているからです。
どう見ても症状はアトピー性皮膚炎だ。
コンスタン王太子殿下は腕と足を組んで椅子にふんぞり返っている。
なんてデカい態度。
「僕は大のバイオリン弾き」
と言ってアントワーヌが下手くそなバイオリンを弾き始めた。
キコキコ耳障りな音が鳴る。
甲高い異音のような音。
まるで列車が車輪で線路を削るような音がする。
一言でうるさい。
周りは耳を塞いでいる。
そして……薄ら笑いを浮かべている。
アントワーヌが弾こうとしていた曲は『炎の槍』。
平音な曲でさほど難しくはない。
しかし、まずこの初心者並みの、バイオリン始めました、みたいな演奏は心地よいものではありません。
あまりに酷いので、音楽のトリスタン先生が演奏を中止するように静止するが、自信満々のアントワーヌは止めようとしない。
「アントワーヌ! 止めて下さい」
しかし、アントワーヌはやめない。
「アントワーヌ、聞こえているんですか?」
それでも演奏を止めない。
「アントワーヌ!」
それでもアントワーヌは演奏を続けようとする。
そこへコンスタン王太子殿下が現れ、演奏の妨害をした。
そうすると、アントワーヌはキレてバイオリンの弓を床に勢いよく叩きつけた。
「何だよ。王太子だからって偉ぶりやがってよ」
「先生がやめなさいって言ったのに、なぜやめないんだ」
「それは僕が一生懸命演奏しているのに、中断を迫るからだ」
「お前、下手なんだよ。どう考えても騒音なんだよ」
「騒音? ふざけんな!」
と言ってアントワーヌはコンスタン王太子殿下に掴みかかった。
そこにトリスタン先生が中に入った。
「やめなさい、二人共」
しかし、アントワーヌは手を緩めない。
そして言い出した。
「トリスタン先生、僕上手ですよね?」
トリスタンは「いいえ」とハッキリ言った。
しかし、アントワーヌも負けない。
「上手ですよね?」
トリスタンは首を左右に振った。
「上手ですよね?」
やはりアントワーヌはしつこさだけは相変わらず。
「しつこい! 上手ではないと何度言えばわかるの」
トリスタンが怒りだした。
「コンスタン王太子殿下ありがとう」
と言ってトリスタンは皆を見る。
「耳障りなものを聞かせてしまいましたね」
「耳障りじゃないよバカ野郎」
アントワーヌは反発する。
「アントワーヌは放っておきましょう」
流石はダメ男の典型。
バイオリンもろくすっぽに弾けないのだ。
次にコンスタン王太子殿下がトランペットの演奏を始めた。
「流石は王太子殿下だ!」
と歓声がわいた。
曲は『落雷の舞』。
アップダウンの激しい曲だ。
難関の曲に挑戦している。
王太子殿下も自信満々に演奏をしていた。
演奏を終えると、王太子殿下は投げキッスをした。
次にカミーユの番。
カミーユはホルンを吹いた。
曲名は『天まで』。
そよ風のような音色に思わずウットリ。
ホルンってこんなに良い音だったんだ、と私は思いました。
その次にガブリエルの番。
ガブリエルもバイオリンを弾き始めた。
曲はアントワーヌと同じ『炎の槍』。
流石はガブリエル。
アントワーヌとは大違い。
アントワーヌが雑音なら、ガブリエルは癒やしの音。
ダメンズとイケメンの違い。
異なり過ぎている。
私の番。
私はハープで『さざなみの音色』を演奏した。
この曲はアップテンポでかなり疲れる。
しかし、演奏した後には達成感が得られます。
「クリスティアーノ凄い!」
歓声が沸いた。
「クリスティアーノさん。素晴らしい! 皆さん、大きな拍手を!」
とトリスタン。
拍手喝采。
私は思わず照れてしまいました。
「顔が赤いぞ!」
と、クラスの男子。
「流石はクリスティアーノ。付き合っちゃおうかな」
とアントワーヌ。
アントワーヌは先程の不機嫌から急にご機嫌になった。
アントワーヌは滅多に学園を休まない。
一部では私に会うのが楽しみで来ているとの噂も聞きました。
本当に迷惑な存在です。
そして、コンスタン王太子殿下はと言うと足を組んで口をつぐんでいる。
そうよね。
私がハープ演奏者として認められていても、妹のナタリーの方が良いんだものね。
「ハープ、上手いね」
カミーユが話かけてくれた。
「ありがとう」
さて、ゲームの世界に戻りましょう。
アントワーヌはやはりダメンズで魔法も楽器演奏もダメ。
ゲームの中でも初心者張りの下手くそな演奏で周りを不快にさせる。
おまけに自信家である傍ら、ボロを出し、みんなから笑われる。そんな役柄。
これもまたゲーム通り。
悪役令嬢ではあるものの、ハープの演奏が上手いというのもまたゲーム通り。
まだこれからも、水泳や歴史など教科は残されている。
そして、王太子殿下は見事な成績を上げ、アントワーヌはマヌケ面を見せる。
そんな物語だ。
隠しキャラは学園外の人物。
いつどこでどうやって知ることやら。
アントワーヌは腕を掻いている。
そしてまた血を出している。
治療を放置しているとしか思えない。
アントワーヌはアトピーなのだろうか?
しかし、物語の中にはアトピー性皮膚炎は出て来ない。
謎の皮膚病といった感じ。
うつされなければ良いけれど。
因みにアトピー性皮膚炎はうつらない。
うつるのはヘルペス。
でも、どう見てもヘルペスには見えません。
ヘルペスなら、水疱みたいになっているからです。
どう見ても症状はアトピー性皮膚炎だ。
コンスタン王太子殿下は腕と足を組んで椅子にふんぞり返っている。
なんてデカい態度。
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