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俺の勝手だろ ※アンドリューside
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アンドリューは父であり、国王でもあるアルベルトに報告に行く事にした。
俺の勝手だろ。
なぜ生まれてまだ間もない頃から婚約者が決まっているんだ。
にもかかわらず、弟二人は許嫁がいない。
何だこの差は。
アンドリューは納得が行かなかった。
「父上。キャサリンとは婚約破棄しました」
「何だと!?」
これは確実に勘当される。
「父上。私はアトキンス男爵令嬢と結婚する事にしました」
「なぜだ?」
「アトキンス男爵令嬢はアトキンス男爵より日常的に虐待を受けています。今日もまた青あざを見つけてしまいました」
「アトキンス男爵が暴力をふるうだと?」
「そうらしいです。イザベラはアトキンス男爵に暴力を振るわれ、腕には青あざがあります。私はイザベラを保護したのです。そして、情が移り、イザベラを娶ることに決めたのです」
「それでなぜキャサリンと婚約破棄をするのだ?」
「イザベラを正妃にすると決めたからです。そして、キャサリンは側妃にすることにしたのです」
「何だと!!」
アルベルトは憤怒に満ちた顔になった。
「なぜイザベラ嬢を正妃にするのだ」
「やはり、イザベラがあまりにも不憫だったから……です」
キャサリンなんか正妃にしたくない。
俺にだって好きな人と結婚する権利はある!!
冗談じゃない!!
「で、キャサリンは側妃にされるという事で婚約を破棄にしたんだな?」
「そうです」
「お前ってやつは!! そもそもアトキンス男爵ほどの人間のできた者が暴力など振るうわけがなかろう?」
それがあるんだ!!
だから、イザベラは会うたびに傷だらけなのではないか?
「アトキンス男爵は外面がよいだけです。内面はとんでもない、悪魔のような人間です」
やはり信じてくれない。
「仮にそうだとしても、キャサリンを側妃にするなどけしからん!!」
「ですが……私にも婚約者を選ぶ権利はあります。ナターシャとアレックスとクレインには婚約者がいないではないですか!」
「お前は第一王子だ。ナターシャは女だ。それに、わが王室はフレミング家とは昔ながらの交流がある。それゆえ、キャサリンと婚約を決めていたのだ。それを破棄しただと?」
「キャサリンが自分から婚約破棄を告げたんです」
「誠か?」
「そうですよ」
勝手に婚約破棄を言い出したのはキャサリンの方だ。
これは紛れもない事実。
「では、アトキンス男爵家の後継はどうなるのだ?」
イザベラが言うにはアトキンス男爵家の財産や領地は友達に手渡すと聞いた。
どの道イザベラのものにはならない。
「父上。心配には及びません。アトキンス男爵は財産も領地も友人に渡すみたいです」
「アトキンス男爵の友人とは誰だ?」
「わかりません」
「アトキンス男爵はイザベラには財産は譲らないのか?」
「そういう事になります」
「作り話ではあるまいな」
「イザベラがそう言っていました」
「うーむ」
アルベルトは頭を抱えた。
「そういう事なんです」
「だがな……イザベラ嬢の言っている事がどこまでが嘘でどこまでが本当かわからない。暴力にせよ、財産の相続にせよ」
「なぜです? イザベラは嘘をつきませんよ。イザベラは本当に青あざを作っていたんです。それを私は見たんです。キャサリンにもその青あざを確認してもらいましたよ」
「その青あざ、自分で作っているのかもしれぬぞ?」
「どうやって青あざを自分で作るんですか。痛い思いをしてまで自作自演しませんよ、父上」
「どこかにぶつけたかもしれないだろう?」
「しかし、あざがあったのは二の腕ですよ。手首ならいざ知らず、二の腕なんかどうやってぶつけるんですか」
すると、アルベルトは絶句した。
「父上。イザベラは他にもハイヒールで叩かれたり、本の角で10発殴られたり、腕で100発殴られたり、日常的に虐待を受けているんです。このままではイザベラは殺されてしまいます。それに、イザベラは一人っ子。誰も相談する相手がいないんです。それにイザベラは父親の葬式は出さないとまで言っています」
「ううむ……アトキンス男爵たる男が人を殴るようには思えんな」
「イザベラは言っていました。アトキンス男爵夫人が亡くなった後に急変したと」
「なるほど。確かにアトキンス一家は仲の良い家族で有名だったからな」
「そうなんです。その仲が良かった事を妬んでその隣に住むオルソン子爵がアトキンス邸に忍び込み、木を切ってしまったのです」
「よくそんな事を知っているな」
「イザベラが言っていました」
「イザベラ嬢も不憫と言えば不憫だな」
「それに対し、キャサリンは家族に恵まれている。兄はいるし、姉もいる。家族仲はきわめて良いみたいですよ」
「とはいえ、土地財産を友人に譲渡するというのは通常考えられないな。なぜなら、この国では前例が無いからだよ」
「そうです。しかし、イザベラはそう言っていました」
「イザベラはどの道アトキンス家を継承できなかった……というわけか?」
「はい。アトキンス家は消滅します」
「そうだな。イザベラもどこかへ嫁ぐことになれば」
「父上。イザベラとの結婚を認めてくれますか?」
「ああ、お前はやさしい男だ。わかった。結婚を認めよう」
俺の勝手だろ。
なぜ生まれてまだ間もない頃から婚約者が決まっているんだ。
にもかかわらず、弟二人は許嫁がいない。
何だこの差は。
アンドリューは納得が行かなかった。
「父上。キャサリンとは婚約破棄しました」
「何だと!?」
これは確実に勘当される。
「父上。私はアトキンス男爵令嬢と結婚する事にしました」
「なぜだ?」
「アトキンス男爵令嬢はアトキンス男爵より日常的に虐待を受けています。今日もまた青あざを見つけてしまいました」
「アトキンス男爵が暴力をふるうだと?」
「そうらしいです。イザベラはアトキンス男爵に暴力を振るわれ、腕には青あざがあります。私はイザベラを保護したのです。そして、情が移り、イザベラを娶ることに決めたのです」
「それでなぜキャサリンと婚約破棄をするのだ?」
「イザベラを正妃にすると決めたからです。そして、キャサリンは側妃にすることにしたのです」
「何だと!!」
アルベルトは憤怒に満ちた顔になった。
「なぜイザベラ嬢を正妃にするのだ」
「やはり、イザベラがあまりにも不憫だったから……です」
キャサリンなんか正妃にしたくない。
俺にだって好きな人と結婚する権利はある!!
冗談じゃない!!
「で、キャサリンは側妃にされるという事で婚約を破棄にしたんだな?」
「そうです」
「お前ってやつは!! そもそもアトキンス男爵ほどの人間のできた者が暴力など振るうわけがなかろう?」
それがあるんだ!!
だから、イザベラは会うたびに傷だらけなのではないか?
「アトキンス男爵は外面がよいだけです。内面はとんでもない、悪魔のような人間です」
やはり信じてくれない。
「仮にそうだとしても、キャサリンを側妃にするなどけしからん!!」
「ですが……私にも婚約者を選ぶ権利はあります。ナターシャとアレックスとクレインには婚約者がいないではないですか!」
「お前は第一王子だ。ナターシャは女だ。それに、わが王室はフレミング家とは昔ながらの交流がある。それゆえ、キャサリンと婚約を決めていたのだ。それを破棄しただと?」
「キャサリンが自分から婚約破棄を告げたんです」
「誠か?」
「そうですよ」
勝手に婚約破棄を言い出したのはキャサリンの方だ。
これは紛れもない事実。
「では、アトキンス男爵家の後継はどうなるのだ?」
イザベラが言うにはアトキンス男爵家の財産や領地は友達に手渡すと聞いた。
どの道イザベラのものにはならない。
「父上。心配には及びません。アトキンス男爵は財産も領地も友人に渡すみたいです」
「アトキンス男爵の友人とは誰だ?」
「わかりません」
「アトキンス男爵はイザベラには財産は譲らないのか?」
「そういう事になります」
「作り話ではあるまいな」
「イザベラがそう言っていました」
「うーむ」
アルベルトは頭を抱えた。
「そういう事なんです」
「だがな……イザベラ嬢の言っている事がどこまでが嘘でどこまでが本当かわからない。暴力にせよ、財産の相続にせよ」
「なぜです? イザベラは嘘をつきませんよ。イザベラは本当に青あざを作っていたんです。それを私は見たんです。キャサリンにもその青あざを確認してもらいましたよ」
「その青あざ、自分で作っているのかもしれぬぞ?」
「どうやって青あざを自分で作るんですか。痛い思いをしてまで自作自演しませんよ、父上」
「どこかにぶつけたかもしれないだろう?」
「しかし、あざがあったのは二の腕ですよ。手首ならいざ知らず、二の腕なんかどうやってぶつけるんですか」
すると、アルベルトは絶句した。
「父上。イザベラは他にもハイヒールで叩かれたり、本の角で10発殴られたり、腕で100発殴られたり、日常的に虐待を受けているんです。このままではイザベラは殺されてしまいます。それに、イザベラは一人っ子。誰も相談する相手がいないんです。それにイザベラは父親の葬式は出さないとまで言っています」
「ううむ……アトキンス男爵たる男が人を殴るようには思えんな」
「イザベラは言っていました。アトキンス男爵夫人が亡くなった後に急変したと」
「なるほど。確かにアトキンス一家は仲の良い家族で有名だったからな」
「そうなんです。その仲が良かった事を妬んでその隣に住むオルソン子爵がアトキンス邸に忍び込み、木を切ってしまったのです」
「よくそんな事を知っているな」
「イザベラが言っていました」
「イザベラ嬢も不憫と言えば不憫だな」
「それに対し、キャサリンは家族に恵まれている。兄はいるし、姉もいる。家族仲はきわめて良いみたいですよ」
「とはいえ、土地財産を友人に譲渡するというのは通常考えられないな。なぜなら、この国では前例が無いからだよ」
「そうです。しかし、イザベラはそう言っていました」
「イザベラはどの道アトキンス家を継承できなかった……というわけか?」
「はい。アトキンス家は消滅します」
「そうだな。イザベラもどこかへ嫁ぐことになれば」
「父上。イザベラとの結婚を認めてくれますか?」
「ああ、お前はやさしい男だ。わかった。結婚を認めよう」
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