7 / 11
エドワードの告白
しおりを挟む
「キャサリン様。エドワード様が大変なんです」
エスターが廊下を走って部屋にやってきた。
エスターの息は上がっていた。
「どうしたの? エスター」
「エドワード様が告白したんです。エドワード様はモナール帝国のスパイだったんです!!」
「えーーーーーーーー!?」
キャサリンは驚きを隠せなかった。
まさか、まさかモナール帝国のスパイだったなんて!!
「しかも、モナール帝国がレガローグ王国に侵攻するみたいです」
またしても驚愕した。
「もしや、せ……戦争」
「そうなります」
戦争の二文字が頭の中を巡る。
ついに、レガローグが!!
「戦争になると、どうなるの?」
「レガローグは亡びますわ」
すると……王室に仕えていた兵士たちは皆戦争に駆り出される事になる。
ああ……ハンス。
騎士団長のハンスは温厚な人柄であった。
間違いなく戦争に行く羽目になる。
しかし、モナールと全面戦争になれば、ハンスは生きては戻れないかもしれない。
「しかし、どうしてモナールはレガローグを」
「それは国民の意見にあります」
「国民の……意見!?」
「税金が余りにも高いとかで。そして、王族が贅沢をするために、湯水のように税金を使い尽くしているようです」
確かにレガローグは税金が高いで有名。
確かに王族は贅沢をしている。
キャサリンがアンドリューからもらった婚約指輪は希少な石だった。
それに、王妃は宝飾品に多額のお金をかけていた。
国王の王冠も希少な宝石があしらわれ、庶民には到底考えられないような税金が使われている。
「国民の声が隣国モナール帝国に届いたようです」
確かに国民の不満は募るだろう。
それを隣国のモナール帝国が聞きつけて、侵攻しようとしている……。
モナール帝国は弱者にやさしいで有名。
障がい者や高齢者には積極的に手を差し伸べている。
それに対し、レガローグは障がい者や高齢者には風当たりの強い国。
そう言えば、アンドリューが国王に即位したら、弱者は一切切り捨てると口にした事を思い出した。
このままでは本当に弱者は報われない。
そんなモナール帝国は数々の国を統合している。
それも、弱者救済のため……。
近辺諸国は確かに弱者には冷たい。
しかし、モナール帝国は弱者を護り続けている。
弱者のために尽力し、弱者のために立ち上がった。
それこそが皇帝のフリードリヒ7世だ。
第一皇子のヴァレンティンもまた弱者救済に積極的に活動している。
浮浪者のために炊き出しや、また、職業斡旋をしている。
障がい者雇用にも力を入れている。
本当に進んだ国だ、とキャサリン自身も思っている。
モナール帝国の皇族は少欲知足で生活をしている。
確かに、モナール帝国の人と交流すると質素そのものだ。
と、そこへエドワードがやってきた。
「キャサリン様。実は黙っていて申し訳なく思っています」
「事情は聞いたわ、エドワード」
「その通りでございます」
黙っていたことはどうでも良かった。
なぜなら、レガローグの王太子アンドリューから酷い仕打ちを受けたから。
アンドリューには何かしらの天罰が下って欲しいと思ったから。
「むしろ、婚約破棄になって良かったのです。キャサリン様」
「そうね。そうなるわね」
「実はレガローグ王室の人間には全員賞金首にかけられています」
「え!?」
キャサリンははたと思った。
「キャサリン様がこのままお亡くなりになるのか……と心が痛かったです」
「……」
「私はレガローグ王室の様子を伺うために、何とか騎士団員として忍び込む事ができました。試験に無事にパスできました」
「でも、髪の色からモナール帝国の人間だとわかるはず」
「しかし、まさかスパイが来ているなんて想像にも及ばないでしょう。事実、レガローグは平和ですからね」
「逆に平和ボケしているわね」
「そんなわけで私は王室に忍び込み、王室の情報を盗み出すよう、皇帝陛下から命令を受けました」
「そうだったの」
「申し遅れました。私はモナール帝国出身でレスター公爵の者です。そして、モナールの近衛兵の一人です」
「そうだったのね」
「キャサリン様。私はモナールへ帰らなければなりません。そして、これからモナールがレガローグを侵攻します。この近辺は間もなく戦場となるでしょう。どうか、モナールへお逃げ下さい。私が手配します」
そこに再びエスターがやってきた。
「えー!? エドワード様はモナールの公爵ご子息だったんですね」
「そうだよ。エスター」
「でも、驚きましたわ。エドワード様がモナールの近衛兵だったなんて」
「エスター。お前も逃げるんだ」
「逃げるは良いけれど、その後どうするのです? 行く宛がないです」
「大丈夫。心配には及ばない。私は全力でキャサリン様とご家族をお護りいたします。これまでも雇用契約を結んでいるのですから」
何とも頼もしい。
もし、エドワードがキャサリンの護衛につかなかったら、そのまま戦争に巻き込まれていたかもしれない。
いや、それ以前にアンドリューと結婚していたら、賞金首にかけられていたかもしれない。
キャサリンはぞっとした。
むしろ、アンドリューとイザベラが結婚したからこそ賞金首から逃れられた。
「エドワード。ありがとう。とても大切な話よ」
「公爵様と奥様、そして執事のトーマス様には私から話をしました。あとはお逃げ下さい。それだけです」
キャサリンはモナールへの逃亡を決めた。
エスターが廊下を走って部屋にやってきた。
エスターの息は上がっていた。
「どうしたの? エスター」
「エドワード様が告白したんです。エドワード様はモナール帝国のスパイだったんです!!」
「えーーーーーーーー!?」
キャサリンは驚きを隠せなかった。
まさか、まさかモナール帝国のスパイだったなんて!!
「しかも、モナール帝国がレガローグ王国に侵攻するみたいです」
またしても驚愕した。
「もしや、せ……戦争」
「そうなります」
戦争の二文字が頭の中を巡る。
ついに、レガローグが!!
「戦争になると、どうなるの?」
「レガローグは亡びますわ」
すると……王室に仕えていた兵士たちは皆戦争に駆り出される事になる。
ああ……ハンス。
騎士団長のハンスは温厚な人柄であった。
間違いなく戦争に行く羽目になる。
しかし、モナールと全面戦争になれば、ハンスは生きては戻れないかもしれない。
「しかし、どうしてモナールはレガローグを」
「それは国民の意見にあります」
「国民の……意見!?」
「税金が余りにも高いとかで。そして、王族が贅沢をするために、湯水のように税金を使い尽くしているようです」
確かにレガローグは税金が高いで有名。
確かに王族は贅沢をしている。
キャサリンがアンドリューからもらった婚約指輪は希少な石だった。
それに、王妃は宝飾品に多額のお金をかけていた。
国王の王冠も希少な宝石があしらわれ、庶民には到底考えられないような税金が使われている。
「国民の声が隣国モナール帝国に届いたようです」
確かに国民の不満は募るだろう。
それを隣国のモナール帝国が聞きつけて、侵攻しようとしている……。
モナール帝国は弱者にやさしいで有名。
障がい者や高齢者には積極的に手を差し伸べている。
それに対し、レガローグは障がい者や高齢者には風当たりの強い国。
そう言えば、アンドリューが国王に即位したら、弱者は一切切り捨てると口にした事を思い出した。
このままでは本当に弱者は報われない。
そんなモナール帝国は数々の国を統合している。
それも、弱者救済のため……。
近辺諸国は確かに弱者には冷たい。
しかし、モナール帝国は弱者を護り続けている。
弱者のために尽力し、弱者のために立ち上がった。
それこそが皇帝のフリードリヒ7世だ。
第一皇子のヴァレンティンもまた弱者救済に積極的に活動している。
浮浪者のために炊き出しや、また、職業斡旋をしている。
障がい者雇用にも力を入れている。
本当に進んだ国だ、とキャサリン自身も思っている。
モナール帝国の皇族は少欲知足で生活をしている。
確かに、モナール帝国の人と交流すると質素そのものだ。
と、そこへエドワードがやってきた。
「キャサリン様。実は黙っていて申し訳なく思っています」
「事情は聞いたわ、エドワード」
「その通りでございます」
黙っていたことはどうでも良かった。
なぜなら、レガローグの王太子アンドリューから酷い仕打ちを受けたから。
アンドリューには何かしらの天罰が下って欲しいと思ったから。
「むしろ、婚約破棄になって良かったのです。キャサリン様」
「そうね。そうなるわね」
「実はレガローグ王室の人間には全員賞金首にかけられています」
「え!?」
キャサリンははたと思った。
「キャサリン様がこのままお亡くなりになるのか……と心が痛かったです」
「……」
「私はレガローグ王室の様子を伺うために、何とか騎士団員として忍び込む事ができました。試験に無事にパスできました」
「でも、髪の色からモナール帝国の人間だとわかるはず」
「しかし、まさかスパイが来ているなんて想像にも及ばないでしょう。事実、レガローグは平和ですからね」
「逆に平和ボケしているわね」
「そんなわけで私は王室に忍び込み、王室の情報を盗み出すよう、皇帝陛下から命令を受けました」
「そうだったの」
「申し遅れました。私はモナール帝国出身でレスター公爵の者です。そして、モナールの近衛兵の一人です」
「そうだったのね」
「キャサリン様。私はモナールへ帰らなければなりません。そして、これからモナールがレガローグを侵攻します。この近辺は間もなく戦場となるでしょう。どうか、モナールへお逃げ下さい。私が手配します」
そこに再びエスターがやってきた。
「えー!? エドワード様はモナールの公爵ご子息だったんですね」
「そうだよ。エスター」
「でも、驚きましたわ。エドワード様がモナールの近衛兵だったなんて」
「エスター。お前も逃げるんだ」
「逃げるは良いけれど、その後どうするのです? 行く宛がないです」
「大丈夫。心配には及ばない。私は全力でキャサリン様とご家族をお護りいたします。これまでも雇用契約を結んでいるのですから」
何とも頼もしい。
もし、エドワードがキャサリンの護衛につかなかったら、そのまま戦争に巻き込まれていたかもしれない。
いや、それ以前にアンドリューと結婚していたら、賞金首にかけられていたかもしれない。
キャサリンはぞっとした。
むしろ、アンドリューとイザベラが結婚したからこそ賞金首から逃れられた。
「エドワード。ありがとう。とても大切な話よ」
「公爵様と奥様、そして執事のトーマス様には私から話をしました。あとはお逃げ下さい。それだけです」
キャサリンはモナールへの逃亡を決めた。
452
あなたにおすすめの小説
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】婚約破棄したのに殿下が何かと絡んでくる
冬月光輝
恋愛
「お前とは婚約破棄したけど友達でいたい」
第三王子のカールと五歳の頃から婚約していた公爵令嬢のシーラ。
しかし、カールは妖艶で美しいと評判の子爵家の次女マリーナに夢中になり強引に婚約破棄して、彼女を新たな婚約者にした。
カールとシーラは幼いときより交流があるので気心の知れた関係でカールは彼女に何でも相談していた。
カールは婚約破棄した後も当然のようにシーラを相談があると毎日のように訪ねる。
【完結】王女と駆け落ちした元旦那が二年後に帰ってきた〜謝罪すると思いきや、聖女になったお前と僕らの赤ん坊を育てたい?こんなに馬鹿だったかしら
冬月光輝
恋愛
侯爵家の令嬢、エリスの夫であるロバートは伯爵家の長男にして、デルバニア王国の第二王女アイリーンの幼馴染だった。
アイリーンは隣国の王子であるアルフォンスと婚約しているが、婚姻の儀式の当日にロバートと共に行方を眩ませてしまう。
国際規模の婚約破棄事件の裏で失意に沈むエリスだったが、同じ境遇のアルフォンスとお互いに励まし合い、元々魔法の素養があったので環境を変えようと修行をして聖女となり、王国でも重宝される存在となった。
ロバートたちが蒸発して二年後のある日、突然エリスの前に元夫が現れる。
エリスは激怒して謝罪を求めたが、彼は「アイリーンと自分の赤子を三人で育てよう」と斜め上のことを言い出した。
側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。
gacchi(がっち)
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。
(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。
なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと?
婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。
※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。
※元サヤはありません。
【完結】妹が私から何でも奪おうとするので、敢えて傲慢な悪徳王子と婚約してみた〜お姉様の選んだ人が欲しい?分かりました、後悔しても遅いですよ
冬月光輝
恋愛
ファウスト侯爵家の長女であるイリアには、姉のものを何でも欲しがり、奪っていく妹のローザがいた。
それでも両親は妹のローザの方を可愛がり、イリアには「姉なのだから我慢しなさい」と反論を許さない。
妹の欲しがりは増長して、遂にはイリアの婚約者を奪おうとした上で破談に追いやってしまう。
「だって、お姉様の選んだ人なら間違いないでしょう? 譲ってくれても良いじゃないですか」
大事な縁談が壊れたにも関わらず、悪びれない妹に頭を抱えていた頃、傲慢でモラハラ気質が原因で何人もの婚約者を精神的に追い詰めて破談に導いたという、この国の第二王子ダミアンがイリアに見惚れて求婚をする。
「ローザが私のモノを何でも欲しがるのならいっそのこと――」
イリアは、あることを思いついてダミアンと婚約することを決意した。
「毒を以て毒を制す」――この物語はそんなお話。
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる