104 / 186
104. アリス暴走する
しおりを挟む
静まり返る場。アリスの言葉によってではない。
「これは……」
王が呟く。室内の温度が急激に下がる。
それもそのはず野次を飛ばしていた大臣達の腰から下が氷漬けになっているのだから。
「ひっ……!」
一部の大臣たちから悲鳴が漏れる。
「なんだこんなもの!」
ボッと炎が氷を包み込む…………
「溶けない!?」
愕然とする彼らが見ている中、炎が消えていく。炎が氷に負けたのだ。
「普通の氷やしょぼい魔法の氷であれば溶けたでしょう。でもこれは私が作り上げた氷ですよ?その辺のハゲ大臣がどうにかできるレベルのものじゃないんですよ?」
アリスがハゲ大臣と呼ぶ御仁は、有力な魔法の使い手を輩出する伯爵家の当主である。彼自身も国内屈指の魔法使いである。あくまで国内での実力の話だが。
彼は伯爵でありながら家臣の中で2、3番目に勢いがある。彼はその魔法の才を利用して貴族界最大派閥の長にまで伸し上がった。自分が多少無礼なことを言ったとしても自分は派閥に守られると今までの経験上から妙な自信があるからこそのこの態度。
ちなみに不動の1番貴族は皇太子妃マリーナの父である公爵だ。公爵自身は一匹狼のように振る舞っているが、自分を慕ってくるものや付き従うものの面倒をしっかりみるので、人望が厚い。アリスが引き起こす面倒もなんやかんやいって対応してくれる便利……有り難い人物である。
「ハゲハゲと……」
「気持ちはわかりますが、今は……」
顔を真っ赤にして会議と違う点で怒り出そうとするのを隣の大臣がとめる。そうだ、今は自分の頭などどうでも良い。これはチャンスだ。
「アリス様。王子妃とあろう者がこのようなことをしても宜しいとお思いですか?これは脅迫では?」
「え?おねだりですよ?」
「は?」
「私とブランク様は夫婦ですもの。夫のやり方を真似てみました」
「ハハッ。これはこれは噂と違って仲がよろしいのですな。夫婦揃って罰を受けたいとは」
「ハハッ。これはこれは謹慎処分だって言ってるのに耳が悪いのですな。いや、頭が悪いのですな。自分の今置かれている状況が理解できないとは」
アリスが口調を真似る。
「なっ!?」
「落ち着いてください」
またまた隣の大臣に宥められる。興奮したら負けだ。彼女はこちらをおちょくってこちらのペースを崩そうとしている。フーと鼻から息を吐く。
「脅迫は罪ですぞ」
「おねだりだって言ってんだろハゲ。夫の謹慎処分に同意していただけますね?」
「貴様!この国の忠臣たる私の言葉を流すとはどういうつもりだ!?王族ならどのような振る舞いも許されると思っているのか!?ああ、小娘だからまだ世の中の仕組みを知らぬのだな?王族とは我らの協力があってこそ成り立つのだ!我らが認めぬ者はこの国にはいらぬ!残念ながらカサバイン家の娘を勝手に処刑するわけにはいかぬからな……即刻出ていけ!」
お前は何様?王様か?と思ってしまうような言葉。そもそも家臣に王族の追放権利などない。まさしく越権行為。
「はい、不敬罪」
ゴトッ
「「「!!!?」」」
「えっ?……はっ?」
眼の前の光景に言葉を失う面々。ハゲ大臣はゆっくりと自身の左足を見る。いや、正確にはあった場所を見る。床に大きな氷が転がっている。
「痛みはないでしょう?切った部分は氷漬けにしてあるので命の危険もありませんからご安心を。というより自分の権利を越えた発言はいかがなものかと。人の追放、まして王族の追放など主君たる王にしか許されぬものでしてよ。それに先程から私に口答えばかりしてウーザーイー……です」
「な……なにをする…………。口答えなどっ。意見を言っただけではないか。王子妃がこんな暴挙……許されるはずがない!」
「どう許さないのですかぁ?どんな罰を与えるのですかぁ?」
「は?」
「ここから実家に帰ることなど瞬時にできますし、母は私を引き渡すことはしないでしょう。その場合抗議しますか?相手にされないと思いますが……。では宣戦布告でもしますか?カサバイン家に?ガルベラ王国に?」
「ガルベラ王国は強国とはいえ、一つの国。周辺国の目もある。罪人をかくまうことなどしないだろう」
「オホホホホッ。他国の王からは自国で手に負えぬ魔物討伐を請け負っております。使える役に立つ者とあなたのあってもなくてもどちらでも良い足。各国がどちらを重く考えるかは言わずともわかるでしょう?」
とても見下した優越感に浸る高笑いが室内に響き渡る。実に楽しそうだ。
「………………」
「それで皆様方いかがです?謹慎処分でご納得頂けるでしょうか?」
すっと大臣達に向けられる視線。その目には断るわけがないよな?と狂気の色が宿って見えるのは気のせいか。
「……そうですな。被害はなかったわけですし。ですが皆へ迷惑をかけたのも事実。謹慎処分が妥当かと思います」
野次を飛ばしていた一人の大臣がしらっと言う。その言葉に従うように次から次へと謹慎という声が上がる。皆わかっていた。反対すれば自分も同じ目に合うと。
そして謹慎処分に賛成したものの下肢が自由になっていく。たった一人を除き全ての大臣が自由を取り戻した。
アリスはハゲ大臣に目を向ける。
「あらあら、皆さんやっとおわかりになってくれたのですね。あなたはどうされます?」
冷や汗が流れる。痛みでではない。得体のしれない化け物を目の前にした恐怖だ。だが、認められない。目の前にいるのは娘ほどの年齢の少女。プライドが許さない。
「暴力による行使。そんなものを許せば!そんなものがはびこればこの世は滅びてしまうぞ!皆わかっているのか!?」
気まずそうに目を逸らす意見を翻したその他大臣たち。
アリスはクスリと笑う。
「まるで貴方がた凡人が強者を制御しているかのような言い方ですね。面白いことを仰る」
「は?」
「逆でしょう?強者が、貴方がた凡人や弱者を生かしてあげているのです。慈悲によって、良心によって」
「なにを言っているんだ……?」
「私の力をもってすればこの国くらいすぐに滅ぼせますよ。この国には強力な魔法使いはいませんからね。ではなぜこの国は無事なのです?答えは簡単、私が滅ぼそうとしないからです。私の慈悲です。というわけでさっさと謹慎で納得してくださいね」
ニコリと最後に笑むアリスを呆然とした表情で見るハゲ大臣。なんという暴論。なんという傲慢。
なれどそれこそが事実。
今までの活躍からアリスの実力はわかっている。だが、意味なく理不尽に法を犯したり殺生をするようなことは普通ならしないという思い込みにより生意気な態度を取ってしまった。あとはくだらぬプライドから。
「…………………………」
だが、口から言葉が出ない。認めたくない。小娘に敗北したなど。アリスの口から再びクスリと音がした。
「頑固ですねー……」
見ている者はゾッとした。今度こそ命を奪うのではないかと。おもむろにアリスはハゲ大臣に近づくと肩に手を回し首に触れた。ビクッと跳ねる身体。恐る恐る手を首にやる。……………無事だ。
「御息女ご懐妊おめでとうございます。あなた様も王族に見合う権威をお持ちのご様子。恐らくルカ王子と婚姻することになりましょう。そうすれば私は御息女の義妹ですね。貴方様とも全くの無関係ではなくなるわけですね……」
アリスの言葉にハゲ大臣は王妃の方を見る。いや、めちゃくちゃ恐ろしい顔をしている。婚姻など許されるだろうか。
「せっかくですもの……仲良くしたいですわ。それに」
つつっと下に転がっている氷の塊に視線をやるアリス。
「お孫様と遊ぶのにもこれはあった方が良いでしょう?これ今ならもとに戻りますよ?友好の証に私が治しましょう。その代わりあなたはなにをくれます?」
いやいや、自分が斬ったくせに。そう思うがそんなことを言う度胸のあるやつはいない。ハゲ大臣はゆっくり目を瞑る。
「ブランク王子がしたことはただのイタズラだったようですな。謹慎処分が妥当かと思います」
アリスの顔に大輪の華が咲き誇る。
「陛下、大臣たちは皆謹慎処分という判断のようです!いかが致しましょうか?」
白々しい。彼女に集まるは憎悪、嫌悪の視線。だが最も彼女を突き刺すのは恐怖の視線。
だが彼女は笑むばかりだ。そんなものなんの問題もないのだから。
王の口から判決がくだされた。
「第四王子ブランクは行き過ぎた悪戯行為で皆に多大なる迷惑をかけた。よって1ヶ月の謹慎処分とする。そしてアリス。そなたも行き過ぎた行為を何もなかったことにはできない。そなたも共に謹慎処分にする」
「謹んでお受け致します。最愛の夫を守らんがために少々暴走してしまいました、申し訳ございません。ですが私に反逆の心はなく、家臣の皆様にはこれまで以上にこの国のために励んで頂きたい気持ちが本心でございます」
スッと美しいカーテシーを披露する。禍々しささえ感じさせるその様に恐怖が募る。そして、いつの間にかハゲ大臣の足は元通りに戻っている。いつの間に……。それを見た人々は尚更ゾッとした。
解散の言葉にさっさと逃げゆく大臣たちを愉快に見つめるアリスだった。
「これは……」
王が呟く。室内の温度が急激に下がる。
それもそのはず野次を飛ばしていた大臣達の腰から下が氷漬けになっているのだから。
「ひっ……!」
一部の大臣たちから悲鳴が漏れる。
「なんだこんなもの!」
ボッと炎が氷を包み込む…………
「溶けない!?」
愕然とする彼らが見ている中、炎が消えていく。炎が氷に負けたのだ。
「普通の氷やしょぼい魔法の氷であれば溶けたでしょう。でもこれは私が作り上げた氷ですよ?その辺のハゲ大臣がどうにかできるレベルのものじゃないんですよ?」
アリスがハゲ大臣と呼ぶ御仁は、有力な魔法の使い手を輩出する伯爵家の当主である。彼自身も国内屈指の魔法使いである。あくまで国内での実力の話だが。
彼は伯爵でありながら家臣の中で2、3番目に勢いがある。彼はその魔法の才を利用して貴族界最大派閥の長にまで伸し上がった。自分が多少無礼なことを言ったとしても自分は派閥に守られると今までの経験上から妙な自信があるからこそのこの態度。
ちなみに不動の1番貴族は皇太子妃マリーナの父である公爵だ。公爵自身は一匹狼のように振る舞っているが、自分を慕ってくるものや付き従うものの面倒をしっかりみるので、人望が厚い。アリスが引き起こす面倒もなんやかんやいって対応してくれる便利……有り難い人物である。
「ハゲハゲと……」
「気持ちはわかりますが、今は……」
顔を真っ赤にして会議と違う点で怒り出そうとするのを隣の大臣がとめる。そうだ、今は自分の頭などどうでも良い。これはチャンスだ。
「アリス様。王子妃とあろう者がこのようなことをしても宜しいとお思いですか?これは脅迫では?」
「え?おねだりですよ?」
「は?」
「私とブランク様は夫婦ですもの。夫のやり方を真似てみました」
「ハハッ。これはこれは噂と違って仲がよろしいのですな。夫婦揃って罰を受けたいとは」
「ハハッ。これはこれは謹慎処分だって言ってるのに耳が悪いのですな。いや、頭が悪いのですな。自分の今置かれている状況が理解できないとは」
アリスが口調を真似る。
「なっ!?」
「落ち着いてください」
またまた隣の大臣に宥められる。興奮したら負けだ。彼女はこちらをおちょくってこちらのペースを崩そうとしている。フーと鼻から息を吐く。
「脅迫は罪ですぞ」
「おねだりだって言ってんだろハゲ。夫の謹慎処分に同意していただけますね?」
「貴様!この国の忠臣たる私の言葉を流すとはどういうつもりだ!?王族ならどのような振る舞いも許されると思っているのか!?ああ、小娘だからまだ世の中の仕組みを知らぬのだな?王族とは我らの協力があってこそ成り立つのだ!我らが認めぬ者はこの国にはいらぬ!残念ながらカサバイン家の娘を勝手に処刑するわけにはいかぬからな……即刻出ていけ!」
お前は何様?王様か?と思ってしまうような言葉。そもそも家臣に王族の追放権利などない。まさしく越権行為。
「はい、不敬罪」
ゴトッ
「「「!!!?」」」
「えっ?……はっ?」
眼の前の光景に言葉を失う面々。ハゲ大臣はゆっくりと自身の左足を見る。いや、正確にはあった場所を見る。床に大きな氷が転がっている。
「痛みはないでしょう?切った部分は氷漬けにしてあるので命の危険もありませんからご安心を。というより自分の権利を越えた発言はいかがなものかと。人の追放、まして王族の追放など主君たる王にしか許されぬものでしてよ。それに先程から私に口答えばかりしてウーザーイー……です」
「な……なにをする…………。口答えなどっ。意見を言っただけではないか。王子妃がこんな暴挙……許されるはずがない!」
「どう許さないのですかぁ?どんな罰を与えるのですかぁ?」
「は?」
「ここから実家に帰ることなど瞬時にできますし、母は私を引き渡すことはしないでしょう。その場合抗議しますか?相手にされないと思いますが……。では宣戦布告でもしますか?カサバイン家に?ガルベラ王国に?」
「ガルベラ王国は強国とはいえ、一つの国。周辺国の目もある。罪人をかくまうことなどしないだろう」
「オホホホホッ。他国の王からは自国で手に負えぬ魔物討伐を請け負っております。使える役に立つ者とあなたのあってもなくてもどちらでも良い足。各国がどちらを重く考えるかは言わずともわかるでしょう?」
とても見下した優越感に浸る高笑いが室内に響き渡る。実に楽しそうだ。
「………………」
「それで皆様方いかがです?謹慎処分でご納得頂けるでしょうか?」
すっと大臣達に向けられる視線。その目には断るわけがないよな?と狂気の色が宿って見えるのは気のせいか。
「……そうですな。被害はなかったわけですし。ですが皆へ迷惑をかけたのも事実。謹慎処分が妥当かと思います」
野次を飛ばしていた一人の大臣がしらっと言う。その言葉に従うように次から次へと謹慎という声が上がる。皆わかっていた。反対すれば自分も同じ目に合うと。
そして謹慎処分に賛成したものの下肢が自由になっていく。たった一人を除き全ての大臣が自由を取り戻した。
アリスはハゲ大臣に目を向ける。
「あらあら、皆さんやっとおわかりになってくれたのですね。あなたはどうされます?」
冷や汗が流れる。痛みでではない。得体のしれない化け物を目の前にした恐怖だ。だが、認められない。目の前にいるのは娘ほどの年齢の少女。プライドが許さない。
「暴力による行使。そんなものを許せば!そんなものがはびこればこの世は滅びてしまうぞ!皆わかっているのか!?」
気まずそうに目を逸らす意見を翻したその他大臣たち。
アリスはクスリと笑う。
「まるで貴方がた凡人が強者を制御しているかのような言い方ですね。面白いことを仰る」
「は?」
「逆でしょう?強者が、貴方がた凡人や弱者を生かしてあげているのです。慈悲によって、良心によって」
「なにを言っているんだ……?」
「私の力をもってすればこの国くらいすぐに滅ぼせますよ。この国には強力な魔法使いはいませんからね。ではなぜこの国は無事なのです?答えは簡単、私が滅ぼそうとしないからです。私の慈悲です。というわけでさっさと謹慎で納得してくださいね」
ニコリと最後に笑むアリスを呆然とした表情で見るハゲ大臣。なんという暴論。なんという傲慢。
なれどそれこそが事実。
今までの活躍からアリスの実力はわかっている。だが、意味なく理不尽に法を犯したり殺生をするようなことは普通ならしないという思い込みにより生意気な態度を取ってしまった。あとはくだらぬプライドから。
「…………………………」
だが、口から言葉が出ない。認めたくない。小娘に敗北したなど。アリスの口から再びクスリと音がした。
「頑固ですねー……」
見ている者はゾッとした。今度こそ命を奪うのではないかと。おもむろにアリスはハゲ大臣に近づくと肩に手を回し首に触れた。ビクッと跳ねる身体。恐る恐る手を首にやる。……………無事だ。
「御息女ご懐妊おめでとうございます。あなた様も王族に見合う権威をお持ちのご様子。恐らくルカ王子と婚姻することになりましょう。そうすれば私は御息女の義妹ですね。貴方様とも全くの無関係ではなくなるわけですね……」
アリスの言葉にハゲ大臣は王妃の方を見る。いや、めちゃくちゃ恐ろしい顔をしている。婚姻など許されるだろうか。
「せっかくですもの……仲良くしたいですわ。それに」
つつっと下に転がっている氷の塊に視線をやるアリス。
「お孫様と遊ぶのにもこれはあった方が良いでしょう?これ今ならもとに戻りますよ?友好の証に私が治しましょう。その代わりあなたはなにをくれます?」
いやいや、自分が斬ったくせに。そう思うがそんなことを言う度胸のあるやつはいない。ハゲ大臣はゆっくり目を瞑る。
「ブランク王子がしたことはただのイタズラだったようですな。謹慎処分が妥当かと思います」
アリスの顔に大輪の華が咲き誇る。
「陛下、大臣たちは皆謹慎処分という判断のようです!いかが致しましょうか?」
白々しい。彼女に集まるは憎悪、嫌悪の視線。だが最も彼女を突き刺すのは恐怖の視線。
だが彼女は笑むばかりだ。そんなものなんの問題もないのだから。
王の口から判決がくだされた。
「第四王子ブランクは行き過ぎた悪戯行為で皆に多大なる迷惑をかけた。よって1ヶ月の謹慎処分とする。そしてアリス。そなたも行き過ぎた行為を何もなかったことにはできない。そなたも共に謹慎処分にする」
「謹んでお受け致します。最愛の夫を守らんがために少々暴走してしまいました、申し訳ございません。ですが私に反逆の心はなく、家臣の皆様にはこれまで以上にこの国のために励んで頂きたい気持ちが本心でございます」
スッと美しいカーテシーを披露する。禍々しささえ感じさせるその様に恐怖が募る。そして、いつの間にかハゲ大臣の足は元通りに戻っている。いつの間に……。それを見た人々は尚更ゾッとした。
解散の言葉にさっさと逃げゆく大臣たちを愉快に見つめるアリスだった。
618
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる