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「そもそもこの請求書にある金額では、わたくしが今着ている服の、生地代にすら足りません。桁が違いすぎますわ。このドレスを作る為に係わって下さったすべての職人の方にも失礼ですわ」
「なによそれ! このドレスの、どこが安物なのよ。あんたの着てるのより、ずっと豪華じゃない!!」
それまで、牢の中で大人しく震えているばかりであったララが、突然吠えた。
「宝石だってたくさんついてるし。ほらほら、ちゃんと見なさいよ。そんな素っ気ないシンプルすぎるドレスが、この豪華なドレスより高い訳がないでしょう!?」
くるくると鉄薔薇の牢の中で廻ってみせる。
「あぁ。そのような真似をしては危ないですわ」
ジュスティーヌが止めるのも聴かず、見せびらかすように裾をはためかせた。
その時、ララの広がったドレスの裾に縫い付けられた宝石、いいや色石が、牢に当たってかしゃんと割れた。
「そんなっ」
「あぁ、だから御止めしましたのに。色ガラスですもの、金属にぶつけたら、割れて当然ですわ」
「色ガラスですって? そんな。宝石じゃないの?」
金属を精錬する際に出た不純物をガラスの形成時に加えることで様々な色を付けることができると分かったのはごく最近のことだ。まだ庶民の手に行き渡るほど一般的な物ではない。だがそれでも天然の宝石に比べたらずっと安価なことや、加工もしやすく、透明度も変幻自在で様々な色合いの物が作り出せるとあって、取扱う店が増えてきている。
「人工物ですもの。そもそも、そのようにすぐに壊れてしまうものは宝石とは呼びません」
天然石ですら、硬度が低いモノは半貴石と呼ばれて価値が低いとされるのだ。
脆いガラスでは、人工宝石ということすらできはしない。
「なによそんなの、知らないわ。アールドは宝石のドレスって言って私に贈ってくれたんだもの。アールドはこの国の王太子様なのよ。王太子様が、安物のガラクタドレスなんて。そんなの贈るはずがないわ!」
「ガラクタだなんて言ってませんわ。色ガラスですわ」
「うるさいうるさいうるさいうるさい! なによ、公爵令嬢なのに、婚約者に振り向いても貰えもしない。ツマンナイ女の癖に!!」
ララは顔を真っ赤にして唾を飛ばし、ジュスティーヌを罵る。その様子は、先ほどまでの可憐な令嬢とはまるで別人だった。
「……。この偽造請求書は、王太子アールド殿下よりララ・コロー子爵令嬢へ贈られたドレスの物だと、ララ・コロー本人が認め、使われた予算が王太子婚約者費であることは、リガ・イーデンが認めた! 有罪だ」
その宣言は、先ほどアールドがジュスティーヌを呼びつけた際と同じ魔法にのせて為された。
特級魔法師レイナート・ナベコルズの本気の魔法にのって広がっていくその宣言。は、会場のみならず王都全域へと広がった。
「側妃様がいくら冤罪を叫ぼうにも、王太子の国家予算横領についてこれだけ多くの証人を作れば大丈夫でしょう」
「ありがとうございます、レイナード特級魔法師さま」
ようやく、会場内での騒動が王宮に伝わったようだ。
学園へ騎馬隊が押し寄せてくる馬群の音が響き聞こえてきた。
国家予算の横領は疑惑ではなく、実際に王太子アールド殿下の主導によりリガ・イーデンが実行、ララ・コローも横領であると知りながら受け取ったと認めたというレイナードの宣言を受けての出動だったのだろう。
努めて表情を変えることなく騎士団が鉄薔薇の牢ごとアールドたちを馬車に乗せ運んでいく。
未だ蔓薔薇に拘束されたままのアールドを、ジュスティーヌ達は見送った。
「なによそれ! このドレスの、どこが安物なのよ。あんたの着てるのより、ずっと豪華じゃない!!」
それまで、牢の中で大人しく震えているばかりであったララが、突然吠えた。
「宝石だってたくさんついてるし。ほらほら、ちゃんと見なさいよ。そんな素っ気ないシンプルすぎるドレスが、この豪華なドレスより高い訳がないでしょう!?」
くるくると鉄薔薇の牢の中で廻ってみせる。
「あぁ。そのような真似をしては危ないですわ」
ジュスティーヌが止めるのも聴かず、見せびらかすように裾をはためかせた。
その時、ララの広がったドレスの裾に縫い付けられた宝石、いいや色石が、牢に当たってかしゃんと割れた。
「そんなっ」
「あぁ、だから御止めしましたのに。色ガラスですもの、金属にぶつけたら、割れて当然ですわ」
「色ガラスですって? そんな。宝石じゃないの?」
金属を精錬する際に出た不純物をガラスの形成時に加えることで様々な色を付けることができると分かったのはごく最近のことだ。まだ庶民の手に行き渡るほど一般的な物ではない。だがそれでも天然の宝石に比べたらずっと安価なことや、加工もしやすく、透明度も変幻自在で様々な色合いの物が作り出せるとあって、取扱う店が増えてきている。
「人工物ですもの。そもそも、そのようにすぐに壊れてしまうものは宝石とは呼びません」
天然石ですら、硬度が低いモノは半貴石と呼ばれて価値が低いとされるのだ。
脆いガラスでは、人工宝石ということすらできはしない。
「なによそんなの、知らないわ。アールドは宝石のドレスって言って私に贈ってくれたんだもの。アールドはこの国の王太子様なのよ。王太子様が、安物のガラクタドレスなんて。そんなの贈るはずがないわ!」
「ガラクタだなんて言ってませんわ。色ガラスですわ」
「うるさいうるさいうるさいうるさい! なによ、公爵令嬢なのに、婚約者に振り向いても貰えもしない。ツマンナイ女の癖に!!」
ララは顔を真っ赤にして唾を飛ばし、ジュスティーヌを罵る。その様子は、先ほどまでの可憐な令嬢とはまるで別人だった。
「……。この偽造請求書は、王太子アールド殿下よりララ・コロー子爵令嬢へ贈られたドレスの物だと、ララ・コロー本人が認め、使われた予算が王太子婚約者費であることは、リガ・イーデンが認めた! 有罪だ」
その宣言は、先ほどアールドがジュスティーヌを呼びつけた際と同じ魔法にのせて為された。
特級魔法師レイナート・ナベコルズの本気の魔法にのって広がっていくその宣言。は、会場のみならず王都全域へと広がった。
「側妃様がいくら冤罪を叫ぼうにも、王太子の国家予算横領についてこれだけ多くの証人を作れば大丈夫でしょう」
「ありがとうございます、レイナード特級魔法師さま」
ようやく、会場内での騒動が王宮に伝わったようだ。
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国家予算の横領は疑惑ではなく、実際に王太子アールド殿下の主導によりリガ・イーデンが実行、ララ・コローも横領であると知りながら受け取ったと認めたというレイナードの宣言を受けての出動だったのだろう。
努めて表情を変えることなく騎士団が鉄薔薇の牢ごとアールドたちを馬車に乗せ運んでいく。
未だ蔓薔薇に拘束されたままのアールドを、ジュスティーヌ達は見送った。
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