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「待って!行かないで!」
ルシアナは大声を上げて天井を掴むように腕を伸ばしていた。
気が付いたそこはいつもの自分の寝室で、寝汗でびっしょりになっていて目覚めは最悪だった。とても悪い夢でリアル過ぎた内容に彼女は怖ろしくなって涙ボロボロ零す。
「あぁ……なんてことかしら。私の子が腹から消えていくような恐怖を感じたわ」
そして彼女は下腹部を撫でて置き上がろうとした。
「え!?そんな!お腹が……私の子がいない!」
手の平に感じるのはペタリと凹んだ腹だった、妊娠して大きく膨らんでいたバストも萎んでいた。彼女は悪夢の続きだろうかと驚愕して悲鳴を上げてしまう。
声を聞きつけた侍女が寝室へと駆け込んできて「お嬢様!だいじょうぶですか」と抱きしめる。
「あ、ああ……どうしようリリア、いないの私の子がいない、いなくなっちゃった」
滂沱に涙を流す主を見て「しっかりしてください」と声をかける侍女である。
「きっと悪夢をみてしまったのですね。お顔が酷い有様ですよ、ささ朝仕度を済ませてしまいましょう」
「え」
侍女はいつもと変わらぬ朝のが来たかのように振る舞うのでルシアナは驚く。
そして、水桶に映った己の顔を覗いて再び絶叫するのだった。
***
「夢見が悪くて大騒ぎしたそうね、いつまでも子供なんだから!」
「そうだぞ、もうすぐ16歳になるのだからしっかりしなさい」
食堂に集まった朝餉の席で父母から叱責の声を浴びたルシアナは「申し訳ありません」とボソボソと謝罪を口にする。あまりの覇気のなさに熱でもあるのではないかと心配された。
「だ、だいじょうぶです、混乱してただけですから」
「そう?それなら良いのだけど、そろそろ淑女らしい振る舞いをなさいね」
「……はい」
食事を済ませたルシアナは自分だけではなく両親や侍従たちまでも若返っていたことに吃驚していた。居室にもどった彼女は鏡台の前に座って再確認する、やはりどう見ても妊婦の姿ではなかった。
「私はいったいどうしてしまったの?ツヤツヤ肌はどう見ても10代……」
突然若返った自分と家人、俄かに信じがたいことだったが時を遡ったとしか言いようがない。ぼやりとする脳を叱咤して記憶を辿る。
「そうよ、王子の婚約を祝う席で私は眠くなって、意識を奪われて……眠るように死んだ」
眠ってはいけないと必死に抗い、ついには力尽きて天に召されたのだと思い出した。
「死に際に聞いた声にこの不可解な事態の理由があるのだとしたら」
改めて己の腹を撫でていると悲しみが蘇って鼻の奥がツンと痛くなった。お腹の中で鼓動していた小さな命は確かにここに宿していたのだと。
「そうか、あなたが私を助けてくれたのね……もう一度正しく生きなさいと」
白い空間の中で聞いた言葉を反芻して、目をきつく閉じて覚悟を決めた。
「私は母親だもの、きっと再びあなたを宿すわ。強い母になってこの腕に抱いてみせるからね!待っていて!」
逆行して蘇ったルシアナは16歳の誕生日を迎えるとすぐに見合いの話が持ち上がった。
やはり相手はダナトー伯爵家三男ニコラスである、その名を聞いた彼女はドクドクと激しい鼓動に襲われ震え出した。
やはり過去の記憶通りに事がすすんでいるのだと自覚した。だが、大人しく悲劇を繰り返すつもりはなかった。
「お父様!この縁談は絶対嫌です!私は死にたくないので!」
「え、ルシアナ?」
ルシアナは大声を上げて天井を掴むように腕を伸ばしていた。
気が付いたそこはいつもの自分の寝室で、寝汗でびっしょりになっていて目覚めは最悪だった。とても悪い夢でリアル過ぎた内容に彼女は怖ろしくなって涙ボロボロ零す。
「あぁ……なんてことかしら。私の子が腹から消えていくような恐怖を感じたわ」
そして彼女は下腹部を撫でて置き上がろうとした。
「え!?そんな!お腹が……私の子がいない!」
手の平に感じるのはペタリと凹んだ腹だった、妊娠して大きく膨らんでいたバストも萎んでいた。彼女は悪夢の続きだろうかと驚愕して悲鳴を上げてしまう。
声を聞きつけた侍女が寝室へと駆け込んできて「お嬢様!だいじょうぶですか」と抱きしめる。
「あ、ああ……どうしようリリア、いないの私の子がいない、いなくなっちゃった」
滂沱に涙を流す主を見て「しっかりしてください」と声をかける侍女である。
「きっと悪夢をみてしまったのですね。お顔が酷い有様ですよ、ささ朝仕度を済ませてしまいましょう」
「え」
侍女はいつもと変わらぬ朝のが来たかのように振る舞うのでルシアナは驚く。
そして、水桶に映った己の顔を覗いて再び絶叫するのだった。
***
「夢見が悪くて大騒ぎしたそうね、いつまでも子供なんだから!」
「そうだぞ、もうすぐ16歳になるのだからしっかりしなさい」
食堂に集まった朝餉の席で父母から叱責の声を浴びたルシアナは「申し訳ありません」とボソボソと謝罪を口にする。あまりの覇気のなさに熱でもあるのではないかと心配された。
「だ、だいじょうぶです、混乱してただけですから」
「そう?それなら良いのだけど、そろそろ淑女らしい振る舞いをなさいね」
「……はい」
食事を済ませたルシアナは自分だけではなく両親や侍従たちまでも若返っていたことに吃驚していた。居室にもどった彼女は鏡台の前に座って再確認する、やはりどう見ても妊婦の姿ではなかった。
「私はいったいどうしてしまったの?ツヤツヤ肌はどう見ても10代……」
突然若返った自分と家人、俄かに信じがたいことだったが時を遡ったとしか言いようがない。ぼやりとする脳を叱咤して記憶を辿る。
「そうよ、王子の婚約を祝う席で私は眠くなって、意識を奪われて……眠るように死んだ」
眠ってはいけないと必死に抗い、ついには力尽きて天に召されたのだと思い出した。
「死に際に聞いた声にこの不可解な事態の理由があるのだとしたら」
改めて己の腹を撫でていると悲しみが蘇って鼻の奥がツンと痛くなった。お腹の中で鼓動していた小さな命は確かにここに宿していたのだと。
「そうか、あなたが私を助けてくれたのね……もう一度正しく生きなさいと」
白い空間の中で聞いた言葉を反芻して、目をきつく閉じて覚悟を決めた。
「私は母親だもの、きっと再びあなたを宿すわ。強い母になってこの腕に抱いてみせるからね!待っていて!」
逆行して蘇ったルシアナは16歳の誕生日を迎えるとすぐに見合いの話が持ち上がった。
やはり相手はダナトー伯爵家三男ニコラスである、その名を聞いた彼女はドクドクと激しい鼓動に襲われ震え出した。
やはり過去の記憶通りに事がすすんでいるのだと自覚した。だが、大人しく悲劇を繰り返すつもりはなかった。
「お父様!この縁談は絶対嫌です!私は死にたくないので!」
「え、ルシアナ?」
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