完結 私は何を見せられているのでしょう?

音爽(ネソウ)

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未公開株を進められ、言われるがまま買ってしまったブレンドン・バイパーは投資した先を確認していた。彼は彼女テルミナ・バルドラッドのことを信用しきっていたが、やはり確かめたほうが良かろうと父親に進められたからだ。

「やれやれ、父上は慎重過ぎるのだ、そんなだから資産が増えないんだよ」
鼻で笑いながら株の入ったカバンをパンパンと叩く、そして車窓を流れていく景色をみながらニヤけている。そうしているうちに証券会社に馬車がついた。

ブレンドンは偉そうにふんぞり返り我が物顔で玄関ホールを通る、社員らしきが会釈してきて「いらっしゃいませ」と声を掛けて来た。
「今日はこれの確認にきただけだ、もし換金するとしたいくらだろうか」
「はい、確認いたしますのでお待ちください」
従業員が腰を折りながら証券を持って行く、分厚いそれを見送る彼は思わず「ふふ」と笑ってしまう。工面できるギリギリまで買ったのだ、期待に胸が膨らむというもの。

ところが、待てど暮らせど従業員が戻ってこない、不審に思ったブレンドンはイライラしだした。終いには椅子から立ち上がり従業員が消えていった方向を何度も見る、前のめりに見たものだからコケそうになった。はずみで近くにいた婦人にぶつかってしまう。
「ううん!ゲホン!」
あ、いや失礼した」

不安になったのもあってブレンドンは縮こまって椅子に戻る、特に悪い事をしていないのにバツが悪い。そのうち周囲から視線が刺さっている気がした。衝立があるにも拘わらず何故か衆目を集めている気がしてならないのだ。
「お待たせしました」
やっときた従業員に「遅いぞ」と声を荒げて文句を言う、しかし、待たせた割に悪びれる様子がない。益々と苛立ちを感じたブレンドンである。

「……お返しします、はぁ、全くどういうつもりなんです?こちらは遊びではないのですよ」
「な!客に対してなんだその態度は!」
苦言を呈してきた従業員にムカついた彼は勢いよく立ち上がり怒鳴り散らす。顔を赤らめて机を叩く当然と言えば当然である。だがしかし……

「はっ?こんな子供騙しの証券もどきを持ってきておいて失礼する!」
今度は従業員の方が怒って窓口奥へと引っ込んでしまう。ポカンとするブレンドンは自分の置かれた状況に追い付いていない。
「ど……どういうことだ……子供騙し?え……証券もどき?……え、え……」
サァっと顔が蒼くなって足がガクガクしだした、そして今しがた突き返された証券を慌てて解く、株券は確かにそこにあって間違いなく”ミカルディオ商会百株券”と記されていた、枚数は150枚で発行者はミガルディオ・ノーマンとある。

「あ、なんだちゃんと株券じゃないか……焦らせやがって、え……ちょっと待て、この印は!?」
そこに押してある判はミガルディオ・ノーマン社の物ではなく”エカルディオ・ソートン社”と記されていた。いくら読み返してもそう書かれている。

「うわぁぁああ!やられた!そんなぁ!チクショー!テルミナ!テルミナはどこだーーー!」







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