完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
25 / 32

25

しおりを挟む




「よろしゅうな、して其方がセレンジェールであるか。何故に私の息子と結婚したい?皇帝の妻になる覚悟はあるのかえ?」
「っ!皇后!私は皇帝などになりませんよ!」
ディオンズは語気荒くそう言い放った、だか皇后は表情を変えず「ふふ、戯言を申すな」とあしらうのだった。


覚悟と問われたセレンジェールは少し考えてから答える。

「私は……何もできません、覚悟をするつもりもありませんわ」
「んな!?なんですって」

「だって私は皇太子の妻になるつもりはないですもの、公爵の名を継いだディオンズ様とともに領地を盛り立てていく所存ですわ」
サラリとディオンズの言葉を肯定する物言いをする彼女は”負けない”という意思が感じられる。皇后はワナワナと震えて扇をバキリと折ってしまう。

能面が崩れて般若の顔になった、怒り狂った我妻を見たのは久しぶりだと皇帝は笑う。
「何が可笑しいのですか!息子の一大事でしょうに、これでは結婚を許すわけにいきませんわ」
「はぁ、もう良いではないか。お前が演技しているのは今日わかったわい、そうなのだろうブランシュよ」
「んまあ……なんてことを」


皇帝リオンはゆっくりと居住まいを正してこういう、「側妃コリンヌの時と同じだ」と。彼女がまだ側女をしていた頃、花瓶の水を打ち撒けて割ってしまった時の話をする。

「あの時は余も若く余りの事に激高したものよ、だが、それを上回る怒りを爆発させて怒鳴り散らしたのはお前だったな。何度も扇を叩きつけて余が”その辺で勘弁してやれ”と言うまでやっていたな」
「な、んの話を」

狼狽える皇后は立ち上がり扇で顔を隠した、そう隠したつもりだ。その頬は赤く熟れていて動揺を繕えていない。そして「フーフー」荒く息をしている。

「母上、ひょっとして皇太子に拘っていたのは偽りなのでは?クロード派閥の出方を知るためかと……違いますか?」
「くっ……貴方たちときたら、何もかも台無しだわ」
フッと能面顔に戻った皇后は「もう少し泳がせたい」と言った。老獪なカシュト伯爵の動向が気になるというのだ。

「あれの娘とクロードは出来た人物ですわ、ですが後見人を名乗るあの男は信じられない。何か企んでいるのよ」
「ふむ……お前の勘は良く当たるからな、良し余の影を使って探らせよう。それでいいな?」
「ええ、宜しいわ」





「お母様は頭ごなしに怒る方ではないのね」
「うん、まぁ何か考えあっての行動とは思っていたが、相変わらず心を表すのが苦手とみえる」
サロンで寛ぐ二人は漏洩防止の魔法をかけて話をしている、その席にはレイモンもいた。

「まぁあれで父を溺愛しているんだから吃驚だよな、つかず離れず5m圏内には必ずいるんだよ。政務の時は隣の部屋で待機していると聞く」
「あらまぁ、実は愛が溢れる方だったのね!機微を観察したら面白いかも」
ニコニコとそんな事を考えるセレンジェールは悪戯を思いついた子供のような顔をする。


「ところで、私達はいつ二人きりになれるのだい?」
「あらぁ、御冗談を婚姻前はダメですよ」
人差し指にチュッとリップ音を立てて、それを彼の唇に触れさせた。ディオンズはそれだけでフニャリと蕩けてしまう。

「あぁ、結婚したらどうなってしまうんだろう……」









しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様

恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。 不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、 伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。 感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、 ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。 「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」 足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。 「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」 一度凍りついた心は、二度と溶けない。 後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、 終わりのない贖罪の記録。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

恩知らずの婚約破棄とその顛末

みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。 それも、婚約披露宴の前日に。 さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという! 家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが…… 好奇にさらされる彼女を助けた人は。 前後編+おまけ、執筆済みです。 【続編開始しました】 執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。 矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。

振られたあとに優しくされても困ります

菜花
恋愛
男爵令嬢ミリーは親の縁で公爵家のアルフォンスと婚約を結ぶ。一目惚れしたミリーは好かれようと猛アタックしたものの、彼の氷のような心は解けず半年で婚約解消となった。それから半年後、貴族の通う学園に入学したミリーを待っていたのはアルフォンスからの溺愛だった。ええとごめんなさい。普通に迷惑なんですけど……。カクヨムにも投稿しています。

悪役令嬢として、愛し合う二人の邪魔をしてきた報いは受けましょう──ですが、少々しつこすぎやしませんか。

ふまさ
恋愛
「──いい加減、ぼくにつきまとうのはやめろ!」  ぱんっ。  愛する人にはじめて頬を打たれたマイナの心臓が、どくん、と大きく跳ねた。  甘やかされて育ってきたマイナにとって、それはとてつもない衝撃だったのだろう。そのショックからか。前世のものであろう記憶が、マイナの頭の中を一気にぐるぐると駆け巡った。  ──え?  打たれた衝撃で横を向いていた顔を、真正面に向ける。王立学園の廊下には大勢の生徒が集まり、その中心には、三つの人影があった。一人は、マイナ。目の前には、この国の第一王子──ローランドがいて、その隣では、ローランドの愛する婚約者、伯爵令嬢のリリアンが怒りで目を吊り上げていた。

断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした

カレイ
恋愛
 子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き…… 「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」     ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。

ふまさ
恋愛
 小さくて、可愛くて、庇護欲をそそられる姉。対し、身長も高くて、地味顔の妹のリネット。  ある日。愛らしい顔立ちで有名な第二王子に婚約を申し込まれ、舞い上がるリネットだったが──。 「あれ? きみ、誰?」  第二王子であるヒューゴーは、リネットを見ながら不思議そうに首を傾げるのだった。

【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪

山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」 「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」 「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」 「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」 「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」 そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。 私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。 さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪

処理中です...