完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)

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有能な兄

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あれから二週間あまり家を空けていた兄ライネルがひょっこり帰ってきた。それは満面の笑みを浮かべて「今日ほど清々しい日はない」と言ったのだ。

「兄様、どうしたというの?家を突然空けるからみんな心配したのですよ、特に母様は夜も眠れずに」
「はははっ、済まなかったな!だが事情は父上に話してある」
「もう!そういう事ではないでしょう!バカバカ!」
ポカポカと細腕で叩くポラーナだが、全く効いていない。「悪かった」と言って宥めても彼女の気持ちはそう簡単には許せそうにない。

「許しません――!」
「はは、そうだな私が悪かった」
ひとしきり暴れたポラーナは安心したのかカウチに寝そべってそのまま寝息を立ててしまう。そんなお転婆な妹の姿を久しぶりに見たライネルは相好を崩す。



「それで先方とは話が付いたのか?」父アーリエント卿は先ほど供されたエクレアをガブガブとやっている。ライネルの土産である。
「もちろんです父上。まぁ事情が事情だけに慰謝料は雀の涙ですが、晴れてポリアーナは自由の身です」
「ふうむ、ご苦労だった、この度の縁談はラルダス伯爵が請願したものだったからゴネると思ったのだが」
一呼吸おいてからライネルは言う。
「そりぁゴネられましたよ、やっとの想いで結ばれたのですから。ですがベイトンがポラーナを拒否しましてね。愛した覚えのない娘とは嫌だとはっきり断られたのです」

そして、ポラーナに傷が残らないように後見人に掛け合って、婚約自体が無かったことにしたのである。かなり骨が折れる作業だったが、ライネルはたった二週間で成してみせたのだ。
「いやはや疲れました、この労いは高くつきますよ父上?」
「あ、ああ。ワシに出来る事ならば何でも」
「ほんとうに!言質をとりましたからね、逃げないでくださいよ!」
「え……なんか怖いな」


***


「え?今何とおっしゃったの?」
鳩が豆鉄砲を食ったよう顔をするポラーナは「冗談ですよね」と引き攣り笑いをした。

「冗談ではないよポラーナ、私のこの手を取り人生の伴侶となって欲しい」
真剣な眼差しで言うのはなんと兄のライネルだった、どうしてこうなったのか。狼狽える彼女はすでにパニックだった。
「そんなの可笑しいわ!だって兄妹なんですもの!」
「うん、正確にはが正しいよ。良く聞いてポラーナ、私達には血縁関係はないのだよ。まぁ、色々とあってね」

公には出来ない秘密とあって彼はポラーナにそっと耳打ちして聞かせた。
「はあああ!?待って!それじゃあ兄様はいいえ、貴方様は!」






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