完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)

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阿呆

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”逃した魚はデカ過ぎる”と落ち込むラルダス卿は強い酒を浴びて管を巻いた。見目が良く、ポラーナを夢中にさせた次男坊のベイトンに期待し過ぎたと大いに嘆くのだ。

「はっ!とんだ期待ハズレだったわ!ヒック……、取り立てて目立つ才がないというのに、この先、どんな縁談が来るか」
大方、年嵩の未亡人か変態ババァだろうと泣き笑いして酒に飲まれて潰れた。それを傍らで見ていたラルダス夫人も「そうよねぇ」と力なく呟く。
政略結婚に利用しようとした夫妻は、とんだ虚けを金をつぎ込み育ててしまったと落ち込む。




そんな会話を両親がしているとは夢にも思っていないベイトンは、若い愛人を侍らせて肉欲に溺れている。
「あぁ、素敵だよミレネ。キミは最高だ、どんなに抱いても飽きが来ない」
「うふふ、喜んで貰えて嬉しいわ」
たわわな胸元を存分に味わって欲しいと大胆に迫る、気を良くした彼は再びムクリと欲を掻き立てられ彼女を味わいつくそうと舌なめずりをする。

ところが突然に愛欲に溢れる寝室をバーンと開け放たれる。今正に彼女の身体に侵入しようとしたところだ。
「な、なんだ!?誰だ無粋なことをしでかしたのは!」
「きゃあ!」

そこには彼の兄であるフレデリクが面倒そうに「昼間からお盛んなことだ」と手巾で鼻を覆い嫌味を言ってきた。まるで猿のようだなと付け加えるのを忘れない。
「兄さん、兄弟でも触れちゃいけない領域だ。デリケートな部分だぞ」
「は?デリケートだと?そんな単語を知っているのか、盛りの付いた猿が!」

昼からギシギシアンアンやっておいて巫山戯るなよと兄は不機嫌だ。どうやら激しく睦合い過ぎて外に駄々漏れだったようだ。
「今日は大事な商談があるんだ、応接間の真上で止めろ。サルは山にでも出て腰を振っているが良い」
「なんだと!いくら兄でも許されない!」
いきり立つベイトンだったが、下半身もいきり立っていてシーツを持ち上げてしまう。流石に呆れたフレデリクは「食いぶちも稼げない癖にご立派なことだ」と嘲笑した。




裸で追い出された二人は半べそでブツブツ言い「今に見ていろ」と安っぽい台詞を吐いた。
「ねぇ、ベイトン。私のドレスがないわ」
「あ、あぁそうだな。業者でも呼ぼうか、新しい靴も買わないと」
いつもの出入り業者にツケで払おうとしたベイトンだったが「無理です」と断わられてしまう、今までこんな仕打ちは初めてだ。

「何故だ!いままで一度も」
「ぼっちゃま、今まではそれで通りましたが、ラルダス卿からご指示がありました。『次男坊とは金子でのみ取引するように』とね」
「んな!?」







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